2010年05月06日

Gallery Tai-ji「螺旋の構造 その2・さざえ堂 訪問記」

                        by Tetsu (外門研修会所属)

  
 前回のギャラリー・タイジィで紹介された「さざえ堂」に行ってきました。
 記事そのものにも大いに興味を持ったのですが、私の郷里である群馬県にもそのようなものがあると師父よりお話を伺い、俄(にわか)リポーターとして訪問してみたのです。

 群馬県太田市にある曹源寺は、市のシンボルである金山という山の東方に位置します。
 この金山には文明元年(1469)の築城になる金山城がありますが、天正十八年(1590)の廃城後は、赤松の植生が卓越する松茸の産地としても知られた山でもありました。
 松茸は、寛永六年(1629)、館林藩主榊原忠次が最初に献上したと伝えられ、献上は江戸幕府が瓦解する慶應三年(1867)まで、一年も休むことなく続けられました。今は採取できなくなりましたが、松茸の出生数は多い年には三千本ほどあったそうです。

 現在、金山城跡には新田義貞公が祭られている新田神社があり、ハイキングコースも整備され観光客も多く賑わっていますが、今回の目的地である「曹源寺」は訪れる人も少なく、とてもひっそりとしています。
 ところが、驚くなかれ、実はこの太田市にある曹源寺は現存する「栄螺堂」の建物としては日本最大規模を誇るものなのです。
 正式名称は「曹洞宗 祥寿山曹源寺(しょうじゅさんそうげんじ)」と言い、文治三年(1187)、新田義重公が京都からの養姫である祥寿姫の菩提を弔うために建立された六角堂が起源であります。過去2回の火災により本堂は1852年に消失、仏殿であった「さざえ堂」のみが現存し、現在はこれを本堂としています。
  寛政五年(1792)四月に、関東の大工の祖といわれた町田兵部栄清により建てられたお堂は、間口・奥行きともに16.3m、高さ16.8m、外見からは2階建てに見えますが内部は3階建て。堂内は「回廊式」といって、同じところを2度通らずに元のところに戻れる構造をとっています。

 門を潜るとすぐ右手側に仏足石の石碑がありました。仏足石とはお釈迦様が入滅した時に残した足裏に様々な歌や図を描き、お釈迦様があたかも其処におわす御姿として古代仏教の時代より礼拝の対象とされてきたものだそうです。
  
 太極武藝館では脚(ジャオ)の使い方も細かく指導されており、門人としては仏足石を目にしただけでジャオの使い方を連想してしまいます。
 仏足石の碑といい、これから入る「さざえ堂」の螺旋構造の建物と太極拳における纏絲勁との関係性といい、何かここを訪問することに対しては不思議なご縁を感じざるを得ません。

 正面にみえる建物は、確かに見かけ上は2階建ての普通のお寺に見えます。
 建物内に入りますと非常にひっそりとしていましたが、その天井にある梁の大きさや板張りの廊下の色艶や傷に歴史の重みを感じます。

 さて、いよいよ建物内を歩いてみます。
 内部は平面状に造られてはいますが、2階、3階と拝仏しながら右回りに上がって行き、同じところを通らずにまた1階に戻ってくると、何とも不思議な感覚になります。

「あれ?、ここは通ったような・・・でも歩いているところが違うぞ?」

「どうやって降りてきたのだ・・?」

 ・・と、少しばかり立ち止まって考えてみないと分らなくなりそうでした。
 ここの建物の造りは平面的な回廊式ではありますが、二重螺旋構造の造りの中に身を投じてみますと我々の日常の空間感覚とは別の次元の中に居るようです。

 この不思議な感覚は、師父に挑みかかっていった感覚と同じようなものかもしれません。
 こちらが殴りかかっていく、掴みかかっていくのに、

「あれ?今ここにいたはずの師父がいない、自分の拳が空をきる・・・」

「掴みかかっていったのに、逆に自分が転ばされる、ガンジガラメにされている・・・」

 と、いったような・・・。

 本来ならばこの「さざえ堂」を一回りすることにより百箇所の礼所を巡った功徳を得られるというありがたい場なのですが、私はすっかりこの不思議な空間にしばし酔いしれてしまいました。

 螺旋構造と太極拳の関係性・・・私にはまだまだ理解し難いものではありますが、この体験が自分の太極拳を学ぶ上での一助となれば誠に幸いであると思います。

 この境内には紫陽花が数多く植えられ、「群馬のあじさい寺」などとも呼ばれています。紫陽花の咲き乱れる頃に、ぜひもう一度、ここを訪問してみたいものだと思いました。

 最後に、このような場所をご紹介くださり、実際に訪問させていただく貴重な機会を与えて下さった師父に感謝して筆を置きます。


                                   (了)




   【 参考資料: "さざえ堂” 曹源寺 】

      
     

      
    

      
    

      
    

      
   

tai_ji_office at 20:49コメント(6)Gallery Tai-ji(ギャラリー・タイジィ)  

コメント一覧

1. Posted by トヨ   2010年05月08日 01:02
群馬県太田市の曹源寺ですか。
母の実家が群馬なので、機会があればぜひ一度行ってみたいものです。

>二重螺旋構造の造りの中に身を投じてみますと我々の
>日常の空間感覚とは別の次元の中に居るよう

うーん、実に興味深いですね。
我々の遺伝子構造にも刻み込まれているような、不可思議なチカラが働いている・・・のかもしれませんね。
 
2. Posted by のら   2010年05月08日 14:18
同じルートを通っていないのに、何度も元のところに戻ってきてしまう・・・

以前、自分が運転するクルマで見知らぬ土地に迷った時に、そのようなことがありました。
それは、実際に起こっていることなのに、その時の自分には決して理解できず、
現実として受け容れることがとても難しいものです。

そのような経験は、日々の平凡な生活には全く存在しない非日常的なハプニングですが、
わざわざ仏教寺院にそれが用意されているのは、単に多数の観音を巡礼できるという
利便だけではなく、私たちが自ら進んでそのような非日常を体験することによって、
日常の中には決して有り得ない何か・・・・
例えば「祈りの本質」といったものを万人に体験させようと巧みに工夫された、
迷える凡夫に差し伸べられた救済の手を、ひとつの形にしたものなのかもしれません。

tetsu さんは素晴らしい体験をされましたね。
 
3. Posted by マルコビッチ   2010年05月08日 22:52
Tetsuさん、よい所に行かれましたね!
想像するのと、実際その場に身を置くのでは大きな違いがあると思います。

その別の次元の不思議な空間での感覚と、師父に向かっていった時の感じが
同じというのも興味深いですね!!

そして、のらさんも仰っていましたが、なぜこのような構造の建物を
寺院として築いたのか?
この二重螺旋の構造は、お釈迦様が悟られた世界の一端のように・・
私たちの想像を遥かに超えた奥の深さであるのかもしれません。
そう、まるで”祈り”の内に深く入っていくかのように・・・
 
4. Posted by tetsu   2010年05月09日 15:08
☆トヨさん

こちらに御越しの際は是非声をかけてください。ご案内いたします。

>我々の遺伝子構造にも刻み込まれているような、不可思議なチカラが働いている

遺伝子構造と太極拳で教えられている構造、このさざえ堂の構造といい、
自分も本当に不可思議な繋がり、チカラを感じます。
 
5. Posted by tetsu   2010年05月09日 15:19
☆のらさん

非日常的なハプニングを経験すると本当にパニック状態に陥りますね。
私が武藝館に入門した時は将にこの状態でした。

太極武藝館は「さざえ堂」と同じですね(笑)。
武藝館で非日常を体験することによって、日常の中では在り得ないものを感じ取り、
学ばせていただいています。

さざえ堂が「祈りの本質」を万人に体験させようと巧みに工夫されたものであれば、
武藝館の教えは「武藝の本質」を巧みに工夫され教授している場ですね。

このような場に実際に足を運ぶ機会を与えてくださった師父には本当に感謝しております。
 
6. Posted by tetsu   2010年05月09日 15:38
☆マルコビッチさん

>想像するのと、実際その場に身を置くのでは大きな違いがあると思います

これこそ将に武藝館に入門した時と同じ感覚でした。
ホームページ上の写真や説明だけではわからない・・・
その場に行って体験して初めてわかるものってありますね。

太極拳も凡人の私にとって想像を遥かに超えた奥深さを日々感じています。
 

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