2017年03月01日

連載小説「龍の道」 第194回




第194回  P L O T (14)



 護衛が窓ぎわに飛んできて、ガラリと窓を開き、銃を向けて下を覗いたが、

「うわぁあっっっ・・!!」

 途端に、叫びながら窓の外へ放り出された。

 宏隆によって、まずは強力なフラッシュライトの光で視力を奪われ、タクティカルバトンで強く手首を打たれて拳銃を弾き飛ばされ、さらに痛みで反射的に押さえた手首を取られて外に放り投げられ、とどめの蹴りを喰らって悶絶したのである。
 時間にして十秒も経っていない、迅速な対応であった。

「ちいっ・・護衛のくせに、役立たずめ!!」

 男は、もうそこには居ない護衛を罵ると、ソファの裏へ隠れた大佐に、

「キャンベルが来るまで、どうかそのまま動かず───────」

 そう念を押しながら、素早くポケットから覆面を出して被った。

 覆面は人相を隠すものだが、特殊部隊では暗闇で目立つ顔の白さを隠すのに使われ、加えてスモークの掛かった戦闘用のゴーグルやサングラスを着用すれば、夜間は非常に認識し難くなる。また、眉毛を隠すように深々とニット帽を目深(まぶか)に被るだけでも、人相は容易に認識できなくなる。


 だが、そのとき────────

「動くなっ・・ 両手を上に挙げろ!!」

 窓枠をひらりと飛び越えて、宏隆が室内に躍り込んだ。
 ピタリと、拳銃を男に向けている。

「聞こえないのか、両手を上に挙げるんだ!」

 仕方なさそうに、男は言われるまま手を上に挙げた。だが、その仕草には、間近から銃を向けられているような緊迫感がなく、どこかまだ余裕が見られる。

「そのままこっちを向け・・そう、ゆっくりと、だ・・」

 宏隆は、その余裕を察知して、用心をした。振り返った男は、背の高い堂々とした偉丈夫で、フィルソン製の、ゆったりとした赤いウールのジャケットを羽織っている。

「左手でジャケットのボタンを外せ、右手は挙げたままだ・・」

 男は言うとおりにしている。左手を使わせるのは勿論、銃を抜かせないためだ。

「ゆっくりとジャケットの前を開いて、腋の下を見せろ」

 ふっ、と少し鼻で笑い、苦笑するような仕草をして、言われたとおりにする。

「OK、次はジャケットを片方ずつ持ち上げて、腰の後ろを見せろ」

「・・・・・・」

「銃は持っていないようだな。だが、暖炉の火を囲んでコニャックを楽しむのに覆面姿とは随分ミスマッチなことだ。それを外してもらおうか」

「・・・・・・」

「覆面は顔を隠すためだろうが、何も喋らないのは、声を聞かれたくないからか?」

「・・・・・・」

「お前は何者だ? 覆面を外して顔を見せろ、この銃は脅しじゃないぞ!」

「フ・・オマエニ、ヒトヲ撃ツ度胸ガアルノカ?」

 初めて口を開いた男は、巧みな声色(こわいろ)を使った。

「ヒトを撃てるのかと、以前にも敵からそんな事を聞かれた事がある。無益な殺生はしないが、生死を懸けた闘いなら容赦はしない。大切な人を守るためなら尚のこと、その覚悟は出来ている・・・だが、そんな声色を使うとは、よほど声を聞かれたくないらしいな」

「・・・・・・」

「では、その覆面を外してやろう。その床に俯(うつぶ)せになれ!」

「・・・・・・」

「早くしろっ!」

 男はゆっくりと、暖炉の前の床に俯せになる。

「両手を後ろに回すんだ」

 このスタイルは逮捕や拘束をする際の手段として知られているが、俯せにさせられて両腕を後ろに回されると、人は全く身動きが取れなくなってしまう。

 宏隆は素早く、床に伏せた男の腿の裏を片膝で拘束し、さらに片膝で片方の腕を拘束しながら、ポケットからハンドカフ(ナイロンベルト型の手錠)を取り出し、男の手に掛けようとしたが、そのとき、

「バンッ──────────!!」

「うわっ・・・」

 小さな銃弾がすぐ後ろの暖炉に弾け、その機を逃さず、間髪を入れずに、

「ターンッッ!!」

 男が宏隆を跳ね飛ばし、宏隆の手首を蹴って銃を弾き落とした。

「くっ、もう一人隠れて居たのか、不覚・・・」

 急いで部屋の隅に飛ばされた銃を拾いに行こうとしたが、男がさらにジャケットの後ろに手を回そうとしたので、

「ええい・・喰らええっっ・・!!」

 体当たりをするように素早く組み付き、瞬時に崩して投げ、蹴りで決めようとしたが、

「ダァーン・・!!」

 その片足を挙げた途端に、反対に軸足を払われて転がされ、相手が起ち上がった。

「くっ・・・」

「ソコマデダ!・・ソノママ、動クナ────────」

 どこから出したか、男はすでに、小さな銃を手にして宏隆に向けている。

「ううむ・・その身の熟(こな)しは一般兵士のレベルではない。様々なところで、かなりの場数を踏んでいるな?」

「大佐、ココハ危険デス、部屋ノ外へ・・」

「・・よ、よし、分かった。すぐにセキュリティを呼ぶ」

 男は、まだ銃を構えている大佐にそう言った。相変わらず無味乾燥な声色を使っている。

「後ろのポケットに銃を隠していたな。SIG SAUER(シグ・ザウエル)P230、あのワルサーPPKより軽い、わずか500グラムの小型拳銃か・・確かに、フィルソンの分厚いウールジャケットなら、入っているか入っていないか分からない程度の大きさだ」

 仰向けに床に転がった姿のまま、男に向かって言う。

「・・・・・・・」

「そろそろセキュリティが来る頃だな・・だが、僕を捕らえてどうする? ヘレンもここに捕らわれて居るのか?」

「・・・・・・・」

「相変わらず無口だな。それほど顔を見られたくない、声も聞かれたくないのは────────実はボクをよく知っている、ごく身近な人間だからか?!」

「フフ・・ソウトハ限ラナイサ」

「お前たちの目的は何だ? ボクをつけ狙い、ヘレンを誘拐して、いったい何の目的で、何をやろうというのだ?」

 ドカドカと、木の廊下を軍靴(ぐんか)で荒々しく走ってくる足音が聞こえる。

「急げ、まだリビングに居るぞ!」

「キャンベル曹長の声だな。少なくとも、彼は僕の敵だという事がハッキリした」

「・・・・・・・」

「コンフェラ、お待たせしました!」

 キャンベル曹長がセキュリティを数名連れて部屋に入って来た。男と同じように覆面をつけて、夜でも見える軍用のサングラスをしている。

「あはは・・キャンベル曹長、頭隠して尻隠さずだ。その男みたいに声色でも使わなきゃ、正体が丸分かりですよ!」

「う・・くっ・・・」

 宏隆にそんな口を利かれ、キャンベル曹長は動揺した。

「それに、”コンフェラ” ってのは暗号名だな。お前を知る手掛かりになりそうだ、後でじっくり解読してやろう」

「ム・・・・」

 男は、暗号名を解読すると宏隆に言われ、少し焦ったように呻った。

「口ノ減ラナイヤツ・・マアイイ、起キ上ガッテ、後ロヲ向クンダ」

 ちらりと、蹴って飛ばされた自分の銃が部屋の隅に見える。こうして話している間にも、宏隆は頭の中で細かく計算をしていた────────

(ベレッタまでの距離は約4メートル。身を躍らせてそれを手にできたとして、構えて撃つまでに7秒、いや6秒。そして・・)

「オイ・・妙ナ考エヲ起コスナヨ、マダオ前ヲ撃チタクハナイカラナ」

 強かな相手は、その考えを見抜いている。
 宏隆は囚われの身となった際の対処法も、さらには脱出する方法も詳しく学んできているが、やはり捕らわれてしまっては、無事に脱出できるかどうかは分からない。

(よし、イチかバチか・・)

「サア、起チアガッテ、言ウトオリニスルンダ」

(これしかない・・)

 しぶしぶ起ち上がりながら、パタパタと、ズボンの埃を払うと見せかけた、

 その瞬間─────────

 暖炉のそばのティーテーブルに向かって、まるで目眩(めまい)でもしたようにフゥーッと柔らかく倒れ込みつつ・・左手でテーブルの上の銀のシガーケースを掴んで覆面の男の顔に投げつけながら、右手でコニャックの瓶を取り、暖炉の中へ勢いよく投げ込んだ。

「うっ・・」

「バァーン────────!!」

「うわああっっ・・!!」

 絶妙のタイミングである。ズシリと重い銀のシガーケースが男の顔に飛び、ほとんど同時にコニャックの瓶が暖炉で割れて中身が飛び散り、濃度の高いアルコールが火に引火し、まるで即席の爆弾のように、意外なほど大きな炎が部屋の中ほどまで上がり、暖炉の灰が部屋中にたちこめて舞った。

 宏隆はもう既に、部屋の隅で自分の銃を手にしている。
 敵はこの予想もしない出来事にうろたえ、舞う灰で一瞬、宏隆の所在もわからない。

「ふっ・・忍法火炎の術、&忍法灰神楽(はいかぐら)、ってヤツだな!」

「つ、捕まえろ─────いや、銃だ、きっと銃を取ったぞ、気をつけろ!!」

「へん、遅いやいっ・・・バン、バン、バン、バンッッ!!」

「ぐわぁっ・・! 、うぐっっ・・!!」

 ドアから入ったばかりの護衛が二人、その場に蹲(うずくま)った。
 拳銃を取った宏隆が、奧のソファの陰に隠れて、そのまま起き上がらず、床スレスレに相手の脚を撃ったのだ。

「ダン、ダン、ダァーン!!」

「馬鹿者ッ!無暗ニ撃ツナッ、撃ツンジャナイ!、殺シタラ何モナラナイ!!」

 思わず護衛が撃ったのを、男がそう窘(たしな)めて射撃が止んだが、

 そのとき──────────

「ビビイィーッッ!!・・ヒロタカ、伏せてっ!」

 宏隆の胸の小型無線器から、呼び出し音に次いで日本語の声がし、同時に、

「ヒュゥーウ・・・ボムッ!!」

 何かが遠くから発射されるような音が聞こえ、その直後に煙が部屋の中で弾けた。

「うわああっ───────!!」

「さ、催涙ガスだ、部屋を出てドアを閉めろ、大佐を守れ!!」

「お、もっけの幸い・・宗少尉!」

 もともと自分がそこから入って来た、開いたままの窓である。宏隆は素早く身を翻して外へ飛び出し、そのままガレージへと走った。

「ヒロタカ、大丈夫?・・状況は?」

 無線から宗少尉の声がする。

「無事です。ガレージでアシを確保、すぐ脱出の予定!」

「Roger、途中で私を拾って」

「Copy that ・・!」

 ガレージの、表の大きな出入り口を軽々と蹴破って扉を開ける。
 さっきここに侵入した際に、そっと内側のカンヌキを外し、代わりに細い木切れを嵌めておいたので、蹴破るのはわけもない。

 扉から最も近い所に置いてあるランクルのパーキングヒーターを外し、素早く運転席に乗り込んでエンジンを掛ける。さっきガレージに侵入したときから、宏隆はこのような状況を想定してたのだろう、手回し良く、すでにキーまで挿し込んである。

「おお、流石はFJ40、すごいエグゾーストノート(排気音)だ。よっしゃ、行くぞ!!」

「ダンッ、ダンッ、ダァーン──────!!」

「おっとぉ・・・!」

 ガレージから飛び出したランドクルーザーに、すぐ追っ手が迫り、タイヤを撃とうとして狙うが、

「グォーッッッッ!!」

「うわぁっっ・・・」

 宏隆の容赦ない運転に、簡単に蹴散らされてしまう。

「に、逃がすなっ、生け捕りにしろ!」

「はははは、鬼サンこちら、ってか・・・ニッポンが誇るランドクルーザーに付いて来られるかな?」

「手分けして追うぞっ、全員、クルマに乗り込めぇっ!!」

「イエッサー!」

 セキュリティたちが2台のクルマに素早く分乗したが、

「カチッ・・カチ、カチッ・・・」

「あ・・あれっ・・?」

「なんだ、モタモタするな、早く行け!」

「お、おかしいな・・・」

「何をやっている? 逃げられてしまうぞ、エンジンを掛けるんだ!」

「それが、ウンともスンとも・・ちっとも掛かりません」

「ええい、なぜだっ? 原因は分からんのかっ!」

「はっ・・すぐボンネットを開けてみます」

「ええい、バカめっ!・・な、何だ、そっちのクルマも動かんのかっ?」

 降りてきて、もう一台の車の方に行くが、

「動きません、ヘンだな・・・」

「キャンベル曹長、エンジンルームの中も、特に異常ありませんが」

「そんなバカな事があるか、動かないのは何か原因があるからだっ!」

「燃料もあるし、バッテリー容量も充分だが・・」

「そうだな、コードも切られていないし・・」

「く、くそぉ・・まんまと、あの小僧にしてやられたな!」

 悔し紛れに、キャンベル曹長は傍のドラム缶を思い切り蹴っ飛ばした。

「ええい、原因が分かる者はいないのか、大至急メカを呼べ、メカニックだ!!」


 密かにガレージに侵入した宏隆がボンネットを開けて細工をしたのは、ディストリビューター(配電分配器)という装置である。
 ディストリビューター(distributor)は自動車の点火装置で、エンジンの各気筒の点火プラグに電流を分配する役割を持つ。装置のキャップを開けるのは容易で、中にはローターと呼ばれる、イグニッションコイルで発生した電圧パルスを、エンジンの回転と連動して分配する回転子が入っている。

 宏隆はガレージの作業で、ランクル以外の車のディストリビューターのキャップを外し、中のローターを取り払ってしまったので、どうやってもエンジンは掛からない。
 そしてそれを外されても、ただ単にエンジンルームを見渡しても、わざわざディストリビューターのキャップを外して見なければローターの不在には気付かないし、そもそも、そんな細工をされているとは、想像すらつかないのが普通であろう。
 そして言うまでもなく、ランクルFJ40にだけ細工をしなかったのは、それを自分の脱出用に使うつもりであった故である。

 宏隆は玄洋會の訓練で、そのような知識を得ていた。至って簡単なその作業は、驚くほど短時間で出来てしまうので、敵地から脱出の際には大変有効であることは、この場合の敵の狼狽ぶりを見てもよく分かる。このテクニックは、異国で予めクルマを盗まれないようにする事にも使えて便利である。


「はははは!・・追ってこないところを見ると、誰もあのマジックが見破れないらしいな。銃だけじゃなく、もっとよくクルマの構造を識らないとダメだよね、ほんと・・」

「ヒロタカ、ここよ!」

「宗少尉────────!!」

 しばらく走った処で、雪の中から白いカムフラージュを着た宗少尉が手を振る。

「ありがとう、おかげで脱出できました」

「お礼はあとよ、無鉄砲さん。何となく胸騒ぎがしたから来たけど、来なかったらどうするつもりヨ、もう!・・・まあ小言は後にして、先ずはクルマに行って乗り替えましょう」

「アシがつかないように?」

「そういうコト」

「勿体ないなぁ、やっと憧れのランクルに乗れたのに」

「ダァーン、ダァーン・・・・!!」

「うぉっとっと、やばい、やばいぞ・・・」

 フロントガラスのすぐ前に被弾し、慌ててステアリングを切ったので、クルマは少し横滑りをした。

 館を出て外の広い通りに出るには、森をグルリと迂回して行く一本道しかない。
 そのためには一度だけ、まるで逆戻りをするように、館にほど近い辺りを通過することになる。敵はそれを見越して、宏隆たちが来るのを待って、撃ってきたのだ。

「こりゃあ、怒り狂ってるな。車に細工されたことへの腹癒せもアルな」

 館の二階の窓からライフルで撃ってくるが、宏隆たちを殺さずに威嚇して捕らえる、という気持ちがあるのか、狙っているのはタイヤの辺りで、なかなか中らない。

「すぐに追っ手が来るわ、急いで!」

「大丈夫、クルマはそう簡単に動かせませんよ」

「ローターを外したのね」

「ご名答。しかしまあ、何度もこの辺りを逃げるコトばかりだね・・」

「バカ言ってないで急ぎなさい、追いかけてくるのは車とは限らないわよ!」

「ダンッ、ダァーン、ダァーン!!」

「うわっ、こんなに離れてるのに!・・良い腕だな、誰だろう?」

 正確に、タイヤを狙って、すぐそばに弾丸がはじける。宏隆は凍て付いた雪の路でステアリングの切り方や速度を一定にしないよう、巧みに運転をしている。

「ダンッ、ダンッ、ダンッ・・!!」

 宗少尉が負けずに右側の窓からライフルで撃ち返し、館の窓ガラスが割れる音がするが、すでに敵の姿はない。

「ああっ・・・?」

 何を思ったか、突然宏隆がスピードを緩めた。

「どうしたの? 止まらずに急ぎなさいっ!」

「ヘレンが・・・」

「ヘレン?」

「ヘレンが、あそこの・・キャンベルの居た隣の窓に、見えたような・・」

「ダンッ、ダンッ、ダァーン──────!!」

「わわっ・・また撃ってきた」

「今度はライフルじゃないわ、4時の方向、スノーモビルの新手(あらて)よ!、ヘレンを確認しているヒマなんかないわよ!」

「よ、よっしゃ・・」

「ダメ、少しスピードを落として!」

「え・・急げって言ったばかりでしょ」

「いいから、あのスノーモビルに追い付かせるのよ」

「OK、このくらいかな・・・お、だんだん追い付けてきた」

「こっちの思うツボよ・・それっ!」

 宗少尉は胸に提げた黒い塊を外し、ピンを抜いて窓から後ろにポイと投げ捨てた。

「ドオォーンッッ────────!!」

「うわあああっっ・・・!!」

 ルームミラーに大きな雪煙が見える。

「はい、片付いたわよ」

 手榴弾は、昔も今も、軍隊に於いては最も基本的な歩兵の武器であり、どのような国の歩兵もライフルと投擲弾の訓練は念入りに学ぶことになる。

「え・・死んだワケじゃないよね?」

「やれやれ、相変わらず敵を心配してあげるのね。大丈夫よ、スタングレネードだから爆音と閃光で運転不能になってひっくり返っただけ」

「だって、僕らを殺そうとしているワケじゃないし」

「今のところはね・・だけど、捕らえられて、何処かへ連れて行かれてからは、どうなるか分かったモンじゃないわ。お優しい心だけだと、いつか敵に酷い目に遭わされるワよ」

「・・・・・・・」

「ストーップ!・・ここよ、すぐクルマを乗り換えて」

「ここって・・クルマなんか何処にもないけど?」

「よく見て。ほら、すぐそこ。ヒロタカの目の前にあるわ」

「あっ・・」

 宗少尉が乗ってきたフォード・ブロンコ・レンジャーには、真っ白なカムフラージュのシートが掛けられ、さらにその辺りの草木を所々に被せて擬装している。
 タイヤの跡は、再び降ってきた雪に消され、そこに駐めた事が容易には分からない。




                    ( Stay tuned, to the next episode !! )





  *次回、連載小説「龍の道」 第195回の掲載は、3月15日(水)の予定です

taka_kasuga at 00:00コメント(19)連載小説:龍の道 | *第191回〜第200回 

コメント一覧

1. Posted by たそがれの単身赴任者   2017年03月03日 12:40
大男のくせになかなかこまめに隠し拳銃もってますね。
私のマニア本によればSIG P220、 226ならば800グラムそこそこしかなく、全長20センチ未満とのこと。こんな隠し武器どこでも隠せるし、もっていそうな人のいる外国へは怖くてとてもいけそうにありません。
平和で銃器のない日本でよかったです。宏隆さんがんばれ。しかし宗少尉は本当に頼もしいパートナーですね。わたしの施設にもこんな人がいたら危機管理安心です。
 
2. Posted by まっつ   2017年03月03日 23:47
覆面のオジ様・・・実に怪しいですね。
諜報の世界では直接対人で情報を得るヒューミントが、
最終的には重要なのだと聞きますが、その類を疑ってしまいます。
しかしながら、このタイミングでヘレン嬢の救出に至らずでは、
敵に体制を整える機会を与える事でもあり、痛いとの印象です。
この状況が仕事であるなら、小生なら流れが来ていないと判断して、
仕切り直しを判断する所です。
そして状況に置いていかれる気もしますな・・・(ぽつん)。
 
3. Posted by ユーカリ   2017年03月05日 23:55
ものすごく面白いです!
映画をみているように、読ませていただきました。

宏隆君の、基本に忠実で、手順を省かない流れるように滑らかな動きに、魅了されます。
自分の思い込みを一切挟まず、日頃から基本の動きや精神活動に、どっぷり浸かるように生活する大切さを今日の稽古でも感じました。頭で考えたり、こうかな?ああかな?と迷ってばかりいると、一つで動けなくなってしまうからです。

宋少尉の登場に、ほっと胸をなでおろしました。覆面の男の正体もいつあばかれるのか楽しみですし、ヘレンの安否も早く知りたいです!
次回も楽しみにしております。
 
4. Posted by マルコビッチ   2017年03月06日 19:50
さすが宏隆くん、やりますですね〜!!
こんなふうにピンチを回避していくということが、私には想像もつかないことなので、とても面白いです。
特に、まるで目眩のように倒れ込みながら、左手でシガーケースを覆面の男に、右手でコニャックの瓶を暖炉の中へ投げたシーンは凄いですね。
瓶を正確に目標に投げれるって、難しそうですよね。
シガーケースなんて左手ですからね。
やはり両手が使えるように訓練するのでしょうね。
武術ではないですが、野球のイチロー選手は身体のバランスを均一にする為に、左手も使えるようにしたそうです。
覆面男の声色も不気味です。
声色もやはり訓練しないと咄嗟に出来ることではないでしょうね。

ガレージでゴソゴソの謎も解けて、この先どうなるのか。
ヘレンを助けることは出来るのか。
また次回を待っております。
 
5. Posted by 太郎冠者   2017年03月06日 23:26
屋敷への侵入から、流れるようなアクション、
巧者による二転三転する展開に自分の頭もパーンとはじけていくようでした!

敵のボスも強かながら、最後には逃げおおせた宏隆くんの仕掛け、こちらのほうが強かだったということでしょうか。

>誰もあのマジックが見破れない
うーん、教えられれば仕組みとしては簡単なのに誰も見破れない。
あれ、どこかで聞いたことがある気がしますね。

銃もクルマも太極拳も、正しく構造を教えられて、正しく訓練をつまないと危機は避けられない、という教訓として受け取らせていただきます。

幸運なことに、いまのところ銃で撃たれる心配はなさそうですが、いつ何が起こってもおかしくない世の中ですからね。
 
6. Posted by とび猿   2017年03月06日 23:55
相手の男の正体は、まだ御預けですか。
あのキャンベル曹長よりもさらに手強い人物のようですね。
宏隆君も、宗少尉の助けがあったとはいえ、この状況から、よく無事で逃げられました。
宏隆君の受けている訓練の質の高さと、それをものにする宏隆君の意識の高さは、凄いと思います。
何はともあれ、宏隆君が無事でほっとしました。
 
7. Posted by タイ爺   2017年03月07日 15:37
宏隆君を組み伏せ、しかも用心深くスキを見せないあたりタダものではないですね。
そこそこ大物だと思っていたキャンベルとは格の違う感じです。
せっかくのランクル惜しいです。

>フゥーッと柔らかく倒れ込みなつつ

うむ、受け身の稽古をしなくては。
 
8. Posted by 円山玄花   2017年03月09日 19:00
特別訓練のため、コメントが遅くなり申し訳ありません。

『龍の道』でも時々出てくる問いかけのひとつ、「敵を撃つ」ということについて、
今回の特別訓練でも様々な形で問われました。
相手が戦闘服に身を包んだ敵兵ならば否応なしに撃てたとしても、
相手が女性、子ども、または老人であっても、同じように撃てるのでしょうか。

自分が撃てなければ殺されるし、自分がやられたら後がないと、
頭では分かっていても、まだまだ即答出来ない自分が居ました。
>「お優しい心だけだと、いつか敵に酷い目に遭わされるワよ」
・・宗少尉の言葉が、染み込みます。

さて、宏隆くんの脱出術には、得るものがたくさんあります。
いやぁ、面白いですね。
自分も負けないように勉強しなければ!

次回も楽しみにしています!!
 
9. Posted by ハイネケン   2017年03月11日 09:06
形勢逆転にハラハラしっ放し、「スパ◯大作戦」や「特攻野郎A◯ーム」みたいにワクワクしてますが

〉「だって、僕らを殺そうとしているワケじゃないし」
銃を向かい合わした状況下でそんな見極めをするとは…「冷静」が欲しいです。
Am◯zonで販売しないかな…

ガレージのごそごそがスッキリしましたが、少ない手間で大きな打撃。パンクさせるとかより復旧も自在で、ネジ数本での凄い効果に驚きました。
 
10. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:03
☆みなさまへ

またまたコメントバックがすごく遅くなりました。

 ぐぉらっ Σ┗|゚д゚* | なんしてんねん

深く反省して、ゴメンなちゃぁい〜っっっ!!

 ʎɹɹoS ʎɹɹos’ɥO ¨
 
11. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:03
☆たそがれの単身赴任者さん

今回、謎の男が使った「SIG SAUER P230」はシングルカラムで本体500gの軽さです。
P220や226が800gと、300gも重いワケはパラペラム弾仕様だからで、ダブルカラムで装弾数も倍の15+1発になっているので、長くて重いのも当然ですね。

P230の .32ACP弾は 7.65mmのブローニング弾ですから、9mmパラペラムよりも小さく軽く、銃を隠したい刑事や情報部員にはウケたはずです。日本の刑事もコレを持ってます。
日本のライセンス生産ではなくSIG本社から送られてきます。

しかしドンパチをやるのが普通の、銃を隠す必要のない仕事の人は、
9mmパラペラム弾の威力がなくては、やはり危ないと思われます。
因みに、陸海空の自衛隊ではP9と名を変えたSIGのP220をミネベアがライセンス生産して使っています。日本の門人にもミネベアの社員が居られるようですが・・
また、自衛隊初の特殊部隊・特殊作戦群は、強力なフラッシュライトを銃身の下に装着でき、部品交換で使用弾薬を変更できる H&K-USP を装備しています。
 
12. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:04
☆まっつさん

>・・・ぽつん

「判断するコト」は、とても難しいスね。
太極武藝館ですっかりお馴染みになった「危機(crisis)」という言葉も、
その語源はこの 判断する(krinein)に由来しています。
危機は emergency(緊急事態)と同義語で、
早急に手を打たないと取り返しがつかなくなるコト、の意ですね。
「基準(criterion)」の語源も、この「判断(krites)」に由来します。
何かの判断を必要とする際には一定の基準が必要、ということなのでしょう。

どのような場合でも「判断」に「正解」はなく、
その時々の状況に応じて対処できる柔軟なアタマが必要です。
予め自分で一定の基準を持ってしまうと、判断の対応範囲が非常に狭くなります。
原則に囚われず、思い込みを夾まず、常にケースバイケースで、
状況に応じた処理ができることこそ、実戦の場では求められるわけです。

私は、その時々の「直感」こそが、結局は最高の判断基準であると教わりました。
勿論、思考を捨てて直感で対処できるようになるまでには、
散々イヤになるほど基礎/基本訓練をやり込む必要が有るわけですが、
基礎/基本とは、それを正しく叩き込んで心身に染み込ませ、
正しく分析・改善を行ったうえで、さらにそれ自体に囚われず、
新たな創造性で独自に発展させる必要がある、ということ─────
つまり、守・破・離ですね。
それを訓練していった人間だけが「正しい判断」の質を上げるわけです。

小説「日本沈没」の田所博士の名セリフに、
『科学者に大切なのは直感とイマジネーションだ』というのがありましたが、
戦場で生き抜いてきた人たちには、例外なくそのようなエナジーを感じます。
 
13. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:04
☆ユーカリさん

 >思い込みを一切挟まず、日頃から基本の動きや精神活動に、
 >どっぷり浸かるように生活する大切さ

誰にとっても、たとえそれに習熟している人でも、なかなか難しいことですが、
それを意識できるようになったことは素晴らしいと思います。
普通の人は、それを意識できずに過ごしている故に、
普通の人のままで生きているのでしょうから。

一人の意識への目覚めは、やがて廻りの人へも広がって行きます。
これからも頑張ってくださいね。
 
14. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:05
☆マルコビッチさん

>倒れ込みながら・・左手でシガーケース、右手でコニャック瓶を暖炉へ

漫画や物語の世界だから、こんなことが出来るのだと思う読者も居るかも知れませんが、
マルコさんは知っているでしょうけれど、師父などはもっとトンでもないコトを
実際の危機に際してやってのけています。
いつか小説の中でもご披露しようかな、と。

>声色もやはり・・

そのとおり、これにも訓練があります。( ̄ー ̄)ニヤリ
 
15. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:10
☆太郎冠者さん

>マジック

色んなことを知っていると、便利なことも多々ありますね。
度胸がないと、知ってるだけでは、その場でアイディアが出てきませんが (^0^;)
だから「訓練」するんですね、プロは。

というか、訓練はmuch more hardcoreで、
言わば訓練するのがプロで、練習するのがアマチュアです。

 (๑-ω-๑ ;)ワタシニホンゴワカリマセン
 
16. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:14
☆とび猿さん

>訓練の質の高さと、意識の高さ

そうそう、ただ何でも良いから訓練してもダメだし、
意識を高める訓練だけをやっていてもダメ。
それを総合的に教えられ、総合的に使える訓練をしていかないと、
モノにはなりません。

すげー館のレベルは、やっぱりスゲー・・?!
ああ〜キミ知るや〜、スゲーぇレ〜ベぇルぅ〜♫

  彡(´∀`;●)彡 ヒューヒュー
   
17. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:15
☆タイ爺さん

>受身の稽古

本部道場では、研究会の特別訓練で
岩(石ではなく)がゴロゴロした荒れた河原で対練をするそうです。
ごく普通の、柔道式の受け身では通用しませんよね。
ひぇ〜〜っっ!!

(゚д゚=;゚Д゚)ど、ど、どないしたらええねん
 
18. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:16
☆玄花さん

>特別訓練のため

あ、玄花さんも特別訓練でコメントが遅くなったんですね。
自分と同じで、なんだかホッとします。

あほかすがぁ ━━ヽ(#`Д´#)ノ━━っっっっ


>お優しい心

そこで撃たなければ、愛する人を守れなかったり、
愛する人が自分を失って悲しむのなら、私は撃てます。

その絶対的な強い心を養うこともまた、兵士の訓練(修行)ですね。
 
19. Posted by taka_kasga   2017年03月22日 21:19
☆ハイネケンさん

>ネジ数本での凄い効果

こういうコト、知ってると知って無いじゃ、ホントに違ってきますね。
今時のクルマは、いじって細工するのは大変ですが。

 [壁]ω´・)チラッ。。。。。。。゙(ノ・`ω・)ノスタタタッ。。。。。。チラッ(・`ω[壁]

 

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