2016年07月01日

連載小説「龍の道」 第180回




第180回  SURVIVAL (12)



「イエス・キリストを磔刑(たくけい)にしたのは、ユダヤの律法学者たちだったのか!、ポンシオ・ピラトが十字架に架けた、と単純に考えていたよ」

「そのあたりは聖書をじっくり読まないと分からないわね。イエスはユダヤ教の律法学者であるパリサイ人(びと)を ”忌まわしいもの” とし、パリサイ人はイエスを ”律法を破る者” であると断じて敵対していた。
 イエスはこう言っている。 ”お前たちに災いあれ、律法学者たち、パリサイの人たちよ、お前たちは不幸だ、人々に天の国を閉ざしてしまうからだ、自分たちがそこに入ろうとしないばかりか、入ろうとする者の邪魔をして入らせないからだ” 」

「なるほど────────」

「パリサイ人(Pharisee)というのは古代ユダヤ教の一派で、ユダヤ戦争によるエルサレム神殿の崩壊後にはユダヤ教の主流派となって、律法の解釈こそが絶対とされる教義を創っていった。
 パリサイとは ”分離した者” という意味で、ユダヤ律法を守らぬ人たちから自分を分離するという思想から来ているのよ。現代のユダヤ教は殆どこのパリサイ派に由来しているので、パリサイは即ちユダヤの考え方そのものだと言えるわ。今ではそのパリサイ派という呼称は消えて、”ユダヤ教正統派” と呼ばれているけどね。
 そして、イエスとパリサイ人のそんな関係が嵩じて、ユダヤのシオン長老団や律法学者に巧みに煽動された群衆の声に負けてしまった総督のピラトが、イエスを磔(はりつけ)にする判決を下すに到ったのよ」

「ポンシオ・ピラトは、ローマ帝国がユダヤ州を統治していたときの総督だったね。かつてのカナンの地であるユダヤ州はすでにローマの属州だったから、ユダヤ教徒が勝手にイエスを逮捕したり刑罰を与えることが出来ず、総督のピラトに訴える口実を見つけて裁判へと仕向けた、というわけだね?」

「そうだと思えるわ。でもルカによる福音書によると、ピラト(Pontius Pilatus=ポンティウス・ピィラトゥス)は ”私はこの男に何の罪も見出せない” と語り、他の福音書にも、ピラトが群衆の要求に応えてやむを得ずイエスの処刑に踏み切ったという記述がある。ピラトは過越(すぎこし)の祭りにイエスに恩赦を与えて解放するつもりだったというのよ」

「ユダヤ教とイエスが説くものとの違いは大きいね。イエスの逸話の中には、姦通の罪を犯した女性を赦し、もう罪を犯さないようにしなさいと助言をしたばかりか、パリサイの処刑人の手から逃してやったというのがあった。ユダヤ律法で雁字搦めのパリサイ人は、罪を犯せばモーセの律法に従って石打ちの死刑だけれど、イエスは犯した罪よりも、その罪を悔い改めることの方が大切であるとした・・」

「よく知ってるわね。そのとおり、ユダヤ律法は『〜せねばならない』という項目が248、『〜してはならない』というのが365個もあって、その法を守らなければ天国には行けず、自分がそれを守るためなら他人を見捨てることも厭わないという考え方なのよ」

「他人を見捨てる、って?」

「例えばモーセの十戒には、『安息日を心に留めて聖く別けなさい。主の安息日には如何なる仕事もしてはならない』とあるけど、ユダヤ教では安息日に料理をするのも灯りを灯すことも労働とされてしまうので、これを守ると食事もできなくなってしまう。だから金持ちは貧乏人を雇って労働や料理をさせ、自分たちは何もせずに安息日を守った」

「・・な、なんという浅ましい屁理屈なんだ!」

「そんな具合に金持ちは財力で律法を守り、神殿に多くの供物を捧げることで正しい行いをする人、天国に行ける人とされ、貧乏人は生活のために律法に背かざるを得ないので、正しくない人、天国に行けない人とされた。反対にイエスは罪人でも家に招き、安息日であっても病人を癒やし続けた」

「そんなイエスを、パリサイ人が放っておくわけはないね───────」

「そういうこと。心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、隣人を自分のように愛することは、どのような捧げ物や生贄(いけにえ)よりも尊いと言って憚らず、人々の心を捉えていったイエス・キリストは、パリサイ人の律法をことごとく否定し、律法を破ったために、人々を惑わし神を冒涜したとして総督のピラトに訴えられ、終には処刑された、というワケね」

「しかし、元々イエスはユダヤ人だったと主張する人が居たり、”ユダヤ・キリスト教文化” という言葉まであるけれど・・?」

「イエス・キリストは金髪で碧眼のガリラヤの住人として、ヨセフとマリアから産まれた。イエスの言語はヘブライ語ではなく、ガリラヤ訛りのアラム語だった。ガリラヤに住んでいたユダヤ人は極くわずかな人数だったし、ガリラヤの人々はヘレニズム(ギリシャ文化)に好意的で、野蛮で粗野なユダヤ人に反発していたという事実があるわ。
 つまりイエスがユダヤ人であるなど、とんでもないでっち上げでしょうし、本来キリスト教の学者たちは誰よりもその事実をよく知っているはずよ」

「それじゃ、ことさらそう主張したがる人間というのは・・」

「もちろんユダヤ人たちでしょ。キリスト教と敵対を続けるよりは、イエスをユダヤ人にしてしまった方が手っ取り早いということよ。ところが、イエスはユダヤの神殿に行って、彼らが黄金の仔牛像の前で、今で言う証券取引のようなことをやっているのを見て、その祭壇をひっくり返したでしょ。さらには律法学者とパリサイ人に対して説教まで行った。同じユダヤ人なら決してそんな事をするワケがないわ。
 彼らはそんなイエスの勇気と度胸に心底驚いたけれど、シオンの長老団はもはやイエスの存在に耐えられず、最重要危険人物として、密かに計略を巡らし、ピラト総督に訴え出て、群集心理を利用してイエスを処刑させようと企んだ、と言うのが真相よ」

「そのやり方は、リンカーンの暗殺とオーバーラップするね。自分の手は汚さないが、相手はきちんと抹殺し、その後には自分たちの都合の良い世界が残る」

「同じ手口ね。ヒトラーを世界一の極悪人に仕立て上げたのも、ケネディを暗殺したのも、すべて同じやり方、同じ考え方よ」

「ケネディ暗殺────────?」

「ああ、まだ話ををしていなかったわね。ケネディ大統領は、リンカーン暗殺から約百年後の、1963年11月22日の金曜日、現地時間(CST)12時30分に、テキサス州ダラスでオープンカーでパレード中に暗殺されている」

「事件を特集した報道フィルムを観たけれど、発射された銃弾の数、飛んで来た方向、犯人と言われるオズワルドが逮捕されて2日後に射殺され、その射殺犯も不自然死を遂げた。
 政府の公式見解の報告書も矛盾だらけで、事件後から三年の間に真相を追うジャーナリストや目撃者、証言者など20人もの人たちが死亡したという。六人が射殺、三人が交通事故、二人が自殺、一人は喉を搔ききられ、もう一人は首を折られて死亡している。あまりにも疑惑が多すぎるね」

「よく知ってるわね。ついでに言うと、暗殺後1967年2月までにこれらの目撃者が死亡する確率は1兆の10万倍分の1であると、英国のロンドンサンデータイムス紙が結論づけた。
 また、ジム・マース著のクロスファイアーという本には、ケネディ暗殺以後に死亡した、明らかに事件に関係のある人々のリストがあり、それによると、1963年11月の事件直後から1976年7月までの間に、計77人の関係者が死亡しているというわ。
 1977年に米国下院がこの事件を調査したけど、その年にも15人の関係者が他殺や自殺、事故死などで死亡しているのよ」

「そのケネディ暗殺も、リンカーンと関係があるのかい?」

「大いに関係があるわ。それを解けば病めるアメリカの根元が理解できるかも」

「ユダヤの話ばかりで食傷気味だから、ちょっとケネディの話をしてよ」

「ケネディ暗殺の真相ね──────それについては本当に様々なことが言われているけれど、誰もそれを ”金融の視点” から観ていないのが特徴よね」

「と言うと、ケネディもリンカーンと同じことをやった、ってコト?」

「ちょっと前に話した、リンカーンが政府の通貨を発給したことに対して、イギリスのタイムズが書いたことを覚えているかしら?」

「覚えてるよ─────新しい紙幣を発行することで、アメリカ政府はコストを掛けずに通貨を供給でき、その結果アメリカは債務を完済して債務の無い政府となる。アメリカは商業活動に必要なすべての通貨を持つことになり、史上類の無い繁栄をし、すべての国の人材や富がアメリカに移動する。アメリカは打倒されるべきだ。そうしなければやがてアメリカは地上のすべての国家を破壊するだろう・・・そんな事だったかな」

「先ずはその辺りから説明するわ。タイムズが『アメリカ政府は打倒されるべきだ』と書いたことはとても重要なポイント。リンカーンが政府の紙幣を発行したことによって、国際金融資本家が作り上げてきたマネーシステムが崩壊してしまうわけだから、これは彼らにとっては一大事だった」

「ふむ。通貨発給権を握っていさえすれば、いくらでも市場を操作できるワケだど、政府が紙幣を発給するシステムになると、所詮は彼らは民間銀行なので、政府の紙幣を預金して貰って、それを元に貸し出して利子を取ることしかできない。それでは通常の銀行業務と何も変わりがないので、自分たちが国家の ”中央銀行” を手中にしている場合とは儲けのケタが幾つも違ってくる、というワケだな」

「そのとおりよ。そしてリンカーンに限らず、アメリカの歴代大統領で暗殺の対象となった人たちの多くは、中央銀行設立に反対をした人や、中央銀行の機能を無力化する政策を採った人たちだった。第16代エイブラハム・リンカーン、第20代ジェームス・ガーフィールド、第25代ウィリアム・マッキンリー、第35代ジョン・ケネディの四人は暗殺されたし、第7代アンドリュー・ジャクソン、第40代ロナルド・レーガンの二人は暗殺未遂が起こった」

「ケネディは、いったい何をしたんだろう。当時はすでに連邦準備銀行制度があったはずだけれど」

「そうそう、FRB連邦準備銀行の話も、まだ中途だったわね。モルガンが所有するジキル島クラブでの秘密会議が開かれ、FRB設立が討議されて・・・」

「そこまでは聞いたよ。国家の中央銀行を作るのに、なぜ秘密会議が必要なのか、という疑問が残るよね」

「それは国家のための中央銀行ではなかったということよね。リンカーンを暗殺して法定通貨を粉砕し、何度も大恐慌を起こしてアメリカの経済支配を強めていった国際金融資本家たちは、彼らの最終目的である ”通貨発給権” を手中に収めるための最後の仕上げとして、いよいよ中央銀行設立を目前としていたのよ」

「たしか、ドイツ系ユダヤ人でクーン・ローブ商会の経営者、ポール・ウォーバーグがその秘密会議の中心的存在だったと・・」

「そう、そしてウォーバーグの背後にはロスチャイルドが居る。つまりこの会議は、揃いも揃って、ロスチャイルド、モルガン、ロックフェラーのユダヤ国際金融家によって為されたというわけね」

「それで、この秘密会合で決定されたことは?」

「それが FRS(Federal Reserve System=連邦準備制度)という、誰が耳にしても何のことだかピンと来ない、不思議な名前のシステムについてよ」

「確かに、何のことだかサッパリ分からないな─────どうしてそんな名前を?」

「それが彼らの狙いね。”通貨発給権を奪う” という自分たちの真の目的を隠すために、一見ワケの分からない暗号のような名前を付け、中央銀行を連想させるような呼び方を避けた。そして彼らがまとめた ”連邦準備法案” は、いよいよ議会に提出されることになった」

「如何わしいものなら、議会が承知しなければ良いだけの話じゃないの?、アメリカは民主主義国家なんだから」

「ところが、その法案を議会で可決させるために様々な裏工作が行われた挙げ句、1913年のクリスマスイブの前日である12月23日に、ほとんどの議員たちがクリスマス休暇で不在というドサクサを狙って、ロクに審議されることもなく可決され、時の大統領ウィルソンが署名をして、あっけなく連邦準備法案が成立してしまった。こうして、アメリカ政府がただの一株も所有できない仕組みの、民間の中央銀行が出来上がったというワケ」

「それはちょっと、ほとんど詐欺みたいなものだな」

「合衆国憲法では、通貨発行は議会の専権事項とされているのに、それを民間が保有する中央銀行が行うのは問題よね。しかも株主は民間銀行のみで、政府は一株も所有できないの」

「それは完全に憲法違反だな」

「それに、FRB議長の選任は、大統領が上院の同意を得て任命する事になっているけれど、大統領も議会も、事実上FRBの理事会が推薦した人物を承認するだけ。実質的な人事権は政府にも議会にも無い、という不思議なシステムになっている」

「邪魔をされないように、システムが工夫されているんだね」

「米ドルを発行したFRBはそれを財務省に貸し付ける。そしてFRBは貸し付けた額と同じ米国債を財務省から受け取る。すると黙っていても国債の利子が自動的にFRBの株主に支払われる。その額はアメリカ国民から得た税収の20%にも相当するのよ。さらに、FRBは民間の企業でありながら法人税は免除されており、国債の利子は100%彼らのものになる。
 国債の金利が上がれば彼らは笑いが止まらず、アメリカ政府と国民は何も知らないまま涙を流すことになる」


 実際に、1913年に連邦準備制度が創設された時、それを ”信用詐欺” だと指摘したロンドンの有名な銀行家がいる。彼はこのように語っている。
 『連邦準備制度を理解する少数の人間たちは、利益を得ようとするか、その恩恵に依存しているため、彼らから反対の声は上がらないだろう。しかし大衆のはとんどは、この制度自体を理解する能力がないので、この制度が自分たちの利益に反するとは疑いもせず、誰も文句も言わずに、いつの間にか重荷を背負うことになる』

 また、アメリカ人の発明家であるトーマス・エジソンも、こう語っている。
 『わが国が、債券は発行できるが通貨は発行できないというのは馬鹿げている。債券も通貨も、支払いをするという約束なので、この点では同じだろう。しかし、一方は高利貸しに有利なもので、もう一方は人々を支えるものなのだ』─────

 大西洋単独無着陸飛行で名高いチャールズ・リンドバーグ下院議員も、連邦準備法が可決された際に次のように述べている。
 『連邦準備法は世界で最も巨大な信用を規定するものだ。ウィルソン大統領がこの法案にサインすれば金融権力という見えない政府が合法化されることになる。この銀行制度と通貨に関する法案によって、世紀の重大犯罪が準備されることになるのだ』

 そして、そのウィルソン大統領は後年、彼がその人生を終える間際になったときに、
 『私は一番不幸な人間だ。知らず知らずのうちに自分の国を破壊してしまった』
 と、その法案にサインをしたことを後悔する言葉を残している。



「ちょっと具体的にそのシステムを説明してくれないかな?」

「いいわよ。例えば、アメリカ政府に1億ドルが必要になったとするわね」

「ふむふむ・・・」

「すると先ず始めに、政府はそれをFRBに伝える。FRBはそれを受けて証明書類を作り、政府の口座に1億ドルの数字を打ち込む」

「それで?」

「That's all. それでオシマイ!、これで1億ドルの通貨が発行されたことになる。実際的に紙幣が必要になったら、財務省が印刷して紙幣を流通させるワケ」

「うーん、なんだかキツネに抓まれたような・・・」

「これは形式的には政府が1億ドルの債券を発行して、FRBがそれを引き受けたというカタチになっている。さっきも言ったようにこれは借金なので、政府がFRBにその利子を払う必要があるワケ」

「─────ってコトは、政府がドルを発行するたびにFRBの株主、国際金融家にその利子が転がり込むってことじゃないか」

「そのとおりね」

「でも、そこで支払われる利子は、アメリカ国民の税金から出ている・・」

「そういうこと。米ドルを発行しているのは無国籍の国際銀行家、インターナショナル・バンカーと呼ばれる人間たち。彼らの胸三寸でアメリカ経済をインフレにする事も出来れば、ドルの供給を減らして大恐慌にすることも出来るのよ」

「そんなバカな話が・・・たかが一介の民間企業に、国家経済を牛耳る権限があるなんて、全くもっておかしな話じゃないか、アメリカ国民は無国籍の国際銀行家に、自分たちの生殺与奪の権限を与えてしまったと言うことだ!!」

「しかもそれは、1913年から何も変わらず、未だにずっと続いている」

「これはある意味、現代の ”錬金術” だな」

「ウマいことを言うわね。そう、彼らが知恵を出し合って考えに考えた上、現代版の完全な錬金術を作り上げたのよ。書類を作って数字をコンピュータに打ち込むだけで巨万の富が転がり込んでくる。まさに濡れ手に粟、こんなボロい商売はないわね。そして最もその被害を受けているのはアメリカの一般国民であるという哀しい事実が・・」

「ちょ、ちょっと待てよ・・そうだ、他人事じゃないぞ、日本はどうなっているんだ?」

「日本は政府がニチギン(日本銀行)に55%を出資しているので、アメリカのような100%民間出資の中央銀行とは、少しシステムが違っているわね」

「ああ、よかった────────」

「でも、あまりホッとしても居られないわよ」

「な、なんだ、脅かすなよ・・」

「彼ら国際銀行家たちは、すでに日本に対しても強力にグローバル化を求め始めているし、その為にありとあらゆる方法で様々な圧力を掛けようとしているわ。アメリカ人よりも勤勉で繊細な日本人に、その錬金術を適用しない手はない、というのはユダヤじゃなくても思いつくコトよね」

「具体的には、どんなことを始めているんだろうか・・何かその兆候は?」

「すでに日本では、日銀の独立性や完全自立を主張する人たちが存在している。二度と戦争を起こさないようにする為だとか何とか、尤もらしい理由を付けて、政府と完全に分離した日銀の独立性を確保するべきだ、と言っているのよ」

「それは逆だろう、無国籍の、グローバリズムを推進するような国際銀行家が日銀を牛耳るようになったら、イザ敵国が侵略を始めたら、その途端に戦費を自国で調達できない、ってことになってしまう!、リンカーンも政府自身が紙幣を刷ることで南北戦争を乗り切ることができたんだから」

「日本が侵略国にさえ立ち向かえなくなること、それが狙いでしょうね。日本人はもう少しそういう事に敏感になるべきね。中央銀行の独立性を確保するには日銀を完全に ”民営化” するしかない、というような意見が出てきたら要注意・・・そもそも、日銀を独立させるのに民営化する必要などなく、政府が100%出資して財務省から独立した国営の中央銀行を作れば良いだけのことでしょ。ナンでもカンでも民営化にしましょう、と言う人たちは怪しいと思わないとイケないわね!!」


 ここでヘレンが語るアメリカ連邦準備銀行設立の経緯は全て事実に基づいているが、日本にも深く関係するアメリカ中央銀行カルテルの欺瞞については、ユースタス・マリンズ著の『民間が所有する中央銀行(秀麗社/1995年刊)』に詳しい。アメリカ最大のタブーで、今なお秘密にされ続けている「連邦準備制度」の内幕に挑んだ労作で、日本語で読める貴重な本である。
 因みに、本書の出版に際しては米国内の19の出版社が何かを怖れるように嫌がって断り、ドイツでは訳本が駐留米軍によって焚書にされた。焚書を命じたのはハーバード大学の総長にもなった科学者で、敗戦国ドイツの高等弁務官であったジェームス・コナントであるが、彼はトルーマンが日本への原爆使用を決めかねていた際にそれを執拗に勧め、遂にはそれを説得し得た人間としてもよく知られている。
 著者のマリンズは国際金融資本家の研究に40年の歳月を費やし、多方面からの迫害と非難中傷を浴びつつ、32年間にわたってFBIの監視下に置かれ続けた。連邦議会図書館を解雇された唯一の職員であり、1945年以降の西欧で著書が焚書処分にされた唯一の研究者としても知られている。



「話を戻すけど、ケネディは、なぜ暗殺されたんだろうか─────?」

「ケネディは、”財務省証券” という、政府の紙幣を新たに発行したのよ」

「リンカーンのグリーンバックスみたいに?」

「そうね。ケネディは、FRB連邦準備銀行が民間の企業でありながらアメリカ経済を手中にしていることを違法行為であると懸念し、恐らくはそれを修正するために財務省証券という紙幣の発行に踏み切ったのだと思われるわ」

「実際にケネディは、彼らを名指しで、何かを言ったことがあるのかい?」

「名指しではないけれど、秘密結社(Secret societies)がマスコミや政治をコントロールしている脅威について演説をしたことがあるわ。
 ”秘密主義” というものが自由で開かれた社会にとって非常に不快なもので、アメリカは歴史的にも、秘密結社の ”秘密の誓い” や ”秘密の議事録” に反対してきた民族だと言って、そのようなものに対して断固として立ち向かう姿勢を示したの。
 ケネディは、FRBを私有する国際銀行家たちが、ユダヤの秘密結社にも深く係わる人間たちだということをよく知っていたはずだから、それを排除するために政府紙幣を発行したことは間違いないでしょうね」

「財務省証券、というのは?」

「1963年6月4日付、大統領行政命令/第11110号。『財務省に影響のある一定の機能の履行に関する修正』というのがそれに当たるわね。政府紙幣はFRB発行の銀行券とほぼ同じデザインで、FRBのマークがなく、その代わりに United States Note(政府発行券)と記されていた」

「政府紙幣の発行がFRBを無視した行為だという事は分かるけど、それがケネディ大統領の暗殺につながる根拠というのは?」

「簡単なことよ。ケネディ暗殺後の動きを見れば分かるわ。ケネディの暗殺後、次の大統領に就任したジョンソンが真っ先に手を付けた事は、ケネディが発行した総額42億ドルの紙幣の回収だった。アメリカの流通をすべて止めて、全てに優先してその紙幣の回収を急いだ。ジョンソンはケネディの遺志を受け継ぐどころか、何の躊躇もなくそれを行ったの」

「なるほどなぁ・・どんな事件にも因果関係がある。そこで誰が得をするか、損をするか、それを追って行けば、バックに誰が居たか、何の目的でそれが行われたかが自ずと明らかになってくる、というわけか─────」

「そして政府紙幣を発行したその同じ年、わずか半年後に、ケネディは暗殺された」



                    ( Stay tuned, to the next episode !! )






  *次回、連載小説「龍の道」 第181回の掲載は、7月15日(金)の予定です


taka_kasuga at 20:30コメント(17)連載小説:龍の道 | *第171回 〜 第180回 

コメント一覧

1. Posted by まっつ   2016年07月04日 23:40
お金の話は闇が深すぎて、
ちょっと調べたくらいでは真実は見えてきません・・・
明らかに情報の偏りはある印象なので、
操作はされているのだと思います。

最近では行き過ぎたグローバリゼーションへの反動から、
世界はローカリゼーションに回帰する兆候もあり、
彼らの情報の統制にも隙が見えてこないかと期待しています。

これからの時代は、個人も含めたローカルが、
もっと自立的に活動していくべきだと感じています。
その為にも通貨発給権を取り戻す運動は意義深く、
もっと議論を広げていく必要があると思います。
 
2. Posted by たそがれの単身赴任者   2016年07月05日 07:53
いつもおどろきの情報ありがとうございます。
自国の紙幣の印刷に対してまで課金してしまうシステム、おそるべしです。リンカーンの不換紙幣印刷の手法に対する倍返しのような反撃でありますね。
今、世界は個へ、ローカルへ向かうのでありましょうか。英国のかってのブロック経済、アメリカの第二次世界大戦前の孤立主義になるのでありましょうか。その時グローバル化に乗じて世界経済を牛耳ってきた「彼ら」はどのように進化していくのでありましょう。
ケネディ暗殺の真相にはいりましたね。当時自分は「2039年の真実」落合信彦、「JFK」ジム・ギャリソン等暗殺究明ものを読みふけり、その「ケネディがおさえこもうとしたFBIとくに不仲なフーバー長官、CIA、マフィア、軍産複合体」に消されたという主張に慄然としたものでした。「財務省証券」がその原因とは!マネーの闇の深さには驚くばかりです。
 
3. Posted by 円山玄花   2016年07月06日 13:59
ケネディの暗殺後に死亡した関係者の人数の多さに驚きました。
事件の底の深さが垣間見られる思いです。

それにしても、他人を煽動して人を悪者に仕立て上げ、自分は手を汚さずにそ知らぬ顔で居るなどという行為は、まるで性格の悪い女学生のような行いですね。
それでも実際に人を葬る力があり、そのための意志が半端ではないことも分かります。

ユダヤの謎解きが進むにつれて、このブログで事件の解き方を教えられているようにも感じますし、戦い方を見せられているようにも思います。
全ての勉強の鍵は、やはり「ものの見方と考え方」なのですね。

次回も楽しみにしています。
 
4. Posted by マルコビッチ   2016年07月06日 23:39
ケネディ大統領の名前が出てくると、まだ子供だったけれどニュースの映像も記憶にあり(年がバレますわ・・)、より現実的に捉えられます。
しかし、ケネディ暗殺後に次から次へとこれほど多くの人が亡くなっているなんて、どう考えても不自然なことだと誰が考えてもわかると思いますが、それを誰もどうする事も出来ないなんて、この世に正義は消えてしまうのでしょうか!?
中学生の頃、同級生の男子がケネディ暗殺に関する本(「JFK」だったかな・・)を持っていて、なぜかすごい気になって(男子じゃなくて本にですよ)借りたのですが、結局読めずに返却!なんとも情けないのですが、あの時の私にはハードルが高かったようです。
ぜひ、リベンジということでいろいろと読んでみようと思います。
 
5. Posted by とび猿   2016年07月06日 23:47
自分達の利益の為に知恵を尽くし、自分達の世界を守る為ならばどのようなことでもやる、それで良心の呵責はないのだろうかと悩みましたが、そのような考えを持てるのも人間なのだと思えたら、世の中が以前と変わって見えるようになりました。

世の中には、隠されていることは多くあると思いますが、隠しきれない矛盾も少なからず出てくると思います。
それを、単なる気のせいや違和感で済ませてしまえるか、真実を分かろうとしていけるかは、各自の裁量でしょうが、少なくとも自分は、真実を分かっていけるよう能力を高めていきたいと思います。
 
6. Posted by 太郎冠者   2016年07月06日 23:57
>ユースタス・マリンズ著の『民間が所有する中央銀行(秀麗社/1995年刊)』
ちょうど金融関係で面白い本はないかなと思っていたので、チェックしてみようかと思います。

>「これはある意味、現代の ”錬金術” だな」
不景気になる→金融対策→お金の供給量を増やす→貨幣を刷る、でさらに利子が増えてウハウハ…。
とんでもない仕組みを作ったものです。

おまけに中央銀行に関しては、マスメディアを通じてお金に関するタブー、思想の操作も徹底していて、それらのことにまったく疑問を抱くことなく、景気が悪くなればすべて政府を身代わりにして自分たちに利益が入るようにうまく誘導していく始末です。

ケネディなどの暗殺に関しても、彼らが利用している最大のシステムだからこそ、それが世間に知られたときの反動が怖いので、これほどまでに徹底して封じ込めようとしているともとれます。
やはり、正しい知識を得ることは、それが力になるのだと感じますね。
 
7. Posted by ユーカリ   2016年07月07日 00:00
ある一部の輩の利益のために、これ程まで軽々しく、世の中の為に労力を注いでいる人々、一般の人々の命や生活を、操っているとは、恐ろしくてたまりません。今まで平和だと思って疑わなかった世の中は、知らないところで実は大昔から、闇の世界が存在し、繰り返されているのだという事実から、目をそらし、耳を塞ぎたい気分でもあります。
しかし、これからの世の中を生きてゆくに当たっては、そのような歴史も踏まえたうえで、正しきを見つめ、豊かさを実感できるようでありたいと思います。
 
8. Posted by ランフォリンクスの尾   2016年07月09日 10:09
今回も楽しく読ませていただきました。

ここまで来るとリチャード・コシミズの主張と概ね一致しているような印象を受けます。
そろそろ郵政民営化のときの話題になるのでしょうか。
今月の参院選も誰かの不正選挙なのですかね。

次回も期待しています。
 
9. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:34
☆まっつさん

>ちょっと調べたくらいでは

一般の人の情報源はネットか本屋、精々図書館くらいに限られています。
その中で操作されていない正しい情報を取るのはたいへん困難ですね。
また、その環境で真実を提示されると、ウソに見えてきます。
すげー館はインチキ、カスガは陰謀論者、と。(^_^;)

>ローカリゼーションに回帰する兆候

その兆候さえ、次のステップに移行するための
シナリオであるとしたら、どうでしょうか。

問題は、彼らの目的が「お金」ではない、ということです。
 
10. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:35
☆たそがれの単身赴任者さん

>世界は個へ、ローカルへ向かうのでありましょうか

残念ながら、テキはそれほど甘くありません。
一度書いたシナリオを書き直す様な根性無しでもないので、
意地でもNWOを通すでしょうね。
order には「秩序_以外にも、
「指示・命令・整頓」という意味があるのはご存じのとおりです。
 
11. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:35
☆玄花さん

>事件の解き方、戦い方

先ずは情報を収集すること、
というのが、第一番目に私が教わったことです
上にも書いたように、情報にはガセネタもありますが、
虚偽を含めて多くを収集すれば、却って真実が見えてくるものです。

「ものの見方と考え方」を養う以外に、勉強の方法はありません。
それを「好きな見方と偏った考え方」に置き換えてみれば、
どれほど時間と労力の無駄になるかが分かりますね。
 
12. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:35
☆マルコビッチさん

所詮はこれも目くらましに作られたものですが、
映画としてはケビンコスナーの「JFK」も中々面白いですよ。
少々長いですが、ぜひ観てみて下さい。
ある程度、ケネディ暗殺事件の概要を知った上でなら、
たぶん途中で眠くなりません。(*^_^*)
 
13. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:36
☆とび猿さん

真実を知ること、分かっていこうとすることは、本当に大変なことです。
故に人は、真実以外のところで、自由気儘に生き、
それが社会や家庭の秩序に抵触しない程度に羽目を外しながら
自分勝手に生きることを選んでいるのでしょうね。

真実が見えた人は、人生が変わります。
何がどう変わるのかというと、
世界はあまりにも真実が見えない人ばかりなので、
ただひたすら孤独になる、というワケです。
 
14. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:37
☆太郎冠者さん

>ユースタス・マリンズ

この人は書き方はかなり過激ですが、
命懸けで反ユダヤをやってきただけあって、
情報の質と量はなかなか素晴らしいものがあります。
見方によっては、ユダヤを毛嫌いするただの偏屈と思えるかも知れません。

>ケネディ大統領の暗殺

ジツは、それにはもっと深い真相が・・・
 
15. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 18:37
☆ユーカリさん

何にでも裏と表、陰と陽があるようです。
人の営みにも同じことが言えますが、
せめて愛する者同士、愛する家族の中では裏表の無いように、
分かち合い、労り合い、赦し合って生きて行きたいものです。
 
16. Posted by 春日敬之   2016年07月11日 20:50
☆ランフォリンクスの尾さん

>リチャードコシミズ

ははは、ぼくの大嫌いな人の名前が出てきましたね。
自称ジャーナリストで陰謀論者だというコシミズ=輿水正さんは、
もう少し突っ込んだ事が言えると良いのですが、軽薄さを否めません。
ポーランド系ユダヤ人であるベンジャミン古歩道もそうですが、
尤もそうな事を言うけれど、情報源が大したことないのが自明で、
私たちの処では相手にしていません。
それどころか、テキのマワシモノだという噂まで、アリソデナサソデ〜♫・・

>郵政民営化

それが何の為に行われたかを知る日本人は少ないですね。
反対を通して罷免された島村農水大臣よりも、
何とか政治生命を保った麻生さんの方が一時の感情に流されぬ頭の良い人かと。
TPP関連で郵政問題を書きたい処ですが、
米政府の圧力開始は90年代で、物語の時代にはそぐわないものです。

>参院選

小泉進次郎・・
またしてもコイズミ家のDNAがニッポンの政治を掻き回すか?!

ヒイ爺さんは鰹節工場から朝鮮銀行のお茶くみまでやった、
港湾ヤクザ沖仲仕組合の組長で「入れ墨大臣」である又次郎。
その小泉又次郎の娘婿である爺さんの小泉純也は、
東京大空襲・原爆投下のカーチス・ルメイに勲一等瑞宝章をムリヤリ叙勲させた国賊。
叙勲の日は真珠湾攻撃や米軍がビラを撒いて予告した東南海地震と同じ日付でした。
福田赳夫の草履取りをしながら政界に入った父の小泉純一郎は、
親米路線で日本の富をアメリカに献上、一年間にドルを35兆円も買ったり、
銀行経営を追い込んでアメリカ資本に売却する政策を推し進めました。
もちろん郵政民営化もその一環に決まってます。
その純一郎が早々に離婚した妻の息子というのが進次郎くん。
母が家から追い出され、小泉一族の手で育てられそうですが、
ウリの美面(イケメン)より、まずは真面(マトモ)な人であってほしいものです。
 
17. Posted by タイ爺   2016年07月12日 09:24
映画のネタになるくらいオズワルド=犯人説は否定されていますが「何故?」というところに光を当てた説はあまり見たことがありません。ケネディまでも金融がらみであったとは・・・・。
そして日本のお金を外国に流すために努力する議員。
そのお金を最終的に吸い上げるのはやはり彼の人達ということになるわけですか。
日本頑張れ。モンローノーリターン。

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