2014年03月30日

Weekend Dinner その8「 かーにばる/蟹(頬)張る」

                   by そむりえ・まっつ (拳学研究会所属)


 2013年の武藝館Newsのヘッドラインは何と言っても札幌稽古会の設立でしょうか。
 新会員の皆さんの、道を追及する清新な姿勢からは、学ぶ事への本質的な喜びが溢れており、「本物」を味わうことは人生を豊かにする事なのだと、改めて確信しました。

 そんな情熱漲る新メンバーを迎えた年の瀬に、本部道場に一つの荷物が届けられました。
 中にはなんと、北海道名産の「毛蟹」がぎっしり・・・
 札幌稽古会・佐藤 剛 会長の心尽くしでした。

 そして新年を迎えた1月某日、
 本部道場の新年会の席でいよいよ毛蟹達の封印が解かれます(解凍のコトです・・)。

 今回は蟹にまつわる、ある一夜のエピソードです。


  * * * * * *


 今宵は古参門人池田夫妻のお宅で肩肘張らないホームパーティースタイルで新年を祝います。池田夫妻の手により、すっきりとセンス良くまとめられた空間・・・寛ぎます。

 メインの毛蟹は冷蔵庫に移して半日を経るも、未だしっかと凍ったままです。
 でもそこは美味求真に妥協のない食いしん坊メンバーです。

  師父:「カニを袋に密閉して氷水で解凍しなさい・・・」

 水の有する高い熱伝導率を利用して、
 鮮度を最大限に保ちつつ、解凍スピードも速い、目から鱗な解凍法です。

 蟹を待ちつつ宴の開宴です。
 2014年はどんな年になるのでしょうか、武藝館開門から20周年の節目の年です。
 寛いだ中でも、皆の表情には鋭さが垣間見えたのでした・・・


  

 今夜のキックオフはこちら「アヤラ・ブラン・ド・ブラン・ミレジメ2005」です。

 シャンパーニュの真珠と称される、好立地な村の葡萄からなる銘醸品です。
 白い花、シトラスの香り、丸みのあるミネラル、きめ細かい泡立ちと、
 食欲を掻き立てる要素に充ちています。少し儚げなアフターの後ろ姿も魅力的です。

 前菜には各種のサラダ、生ハムとチーズ、自家製のピクルス等々が並びます。

 「ツナソースのサラダ」に使われたイエロートマトは健康クラスの門人が育てた品です。
 ヒデコ・シェフの丁寧な仕事とも相まって、食感と甘味のバランスが絶妙!
 頂く食事に「心」が感じられると、何故か五割増しで美味しく感じられるものです。


  

 個人的には「ひよこ豆のフムス」がお気に入りです。
 粗く挽き潰した力強い豆の風味が、エクストラバージンオリーブオイルの香りと絶妙に合います。実に明日への活力が充ちてくる、元気になる一品です。


  

 こちらは内山事務局長の手作り、「タラの白ワイン蒸し セロリ添え」です。
 火の通し方が絶妙なので身は瑞々しく、ホロリほぐれて甘い、シャンパンとの相性も抜群です。本当のタラの旨味を堪能させて頂きました。


 さて、蟹の解凍の具合は如何でしょうか?
 2時間程が経過して、そろそろ良いのではとの期待が高まります・・・が、残念!
 氷を抱いた毛蟹達の沈黙は解かれず・・・とあらば、
 食いしん坊達には更なる決断が迫られます。

  師父:「やりたくはないのだが・・・ ”風呂” で解凍しよう」

 背に腹は代えられません、涙(?)を呑んで常温の水で解凍の加速を試みます。
 ふと、過去にも似たようなエピソードがあった事を思い起こします。
 かつて師父がある門人から活きた伊勢海老を大量に贈られた際も、
 風呂桶に海老を放って、活きたままの大海老を存分に堪能した(!)との事でした・・・


  

 中継ぎには「大七 純米 生酛」と「奈良漬の大根巻」です。
 国内外の評価も高く、世界的にも銘酒の地位を確立した「大七」のスタンダードです。

 旨味が濃いのに飲み口は軽く爽やか、沁み沁みとした味わいの奥行きがあり、
 どんな料理とも合う懐の深さがあります。

 奈良漬も大根と共に頂く事で、風味の角が和らげられ、丁度良く舌を休ませてくれます。
 更にそこで炊き立てご飯の塩むすびにかぶりつくと・・・もう完璧です。

 素性の良い日本酒を開けたてで飲む、漬物と米の相性を堪能する・・・
 本当に美味いな・・・!
 と日本人に生まれた幸せを実感する瞬間です。

 BGMにはサラ・マクラクランの「Angel」です・・・

  師父:「シティ・オブ・エンジェルか、久しぶりに聴くな。また観てみようかな・・」

 本日のBGMには、こちら、
 「Bugeikan MAX 2007(Edited by Shifu Yohgen)」が大活躍です。


  

 本邦初公開の、武藝館レアアイテムの一つです。
 「ちょっと」懐かしい洋楽の名曲達がCD2枚組に織り込まれています。
 世界広しと言えども、ベスト・リミックス・アルバムを編集している武術道場が他にあるでしょうか?

 さらに驚きの裏ジャケットがこちらです。


  

 ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた「いっかくじゅう座 特異変光星V838」です。
 武藝館の象徴たる「Tai-ji symbol」そっくりの自然の神秘・・・心憎い演出ですね。

 さてさて、さらに1時間程を経て、三度目となる解凍の確認ですが・・・
 未だ毛蟹達は氷の微笑をまとったまま、その身を委ねようとはしません。
 流石に食いしん坊達も喉から手が出てくる非常事態です。

 そして毛蟹達を目覚めさせる為、
 クシャナ殿下の「薙ぎ払え!!」に匹敵する覚悟で、師父の最終指令が発令されます。

 ファンヒーターの前にアルミ箔を敷いて毛蟹達を並べます。
 更にヒーターと正対する位置に熱の反射板を仮設して解凍の効率を高めます。


  

 うーむ、もはや異次元の光景です・・・どうしてこうなった・・・?


  

 当初の予定とは異なりますが、メインディッシュに進みます。
 メインには「ラムチョップの香草パン粉焼き」を、
 そして合わせる赤ワインは「シャトー・ラグランジュ 2005」です。

 2005年はボルドーワインの大当り年です。そろそろ飲み頃に掛かってきました。
 黒スグリ、チョコレート、すみれ、ハーブの香りが混然として、
 舌に沁みこみ、歯茎で感じる滑らかなタンニンの刺激が魅惑的です。
 端正で折り目正しいボルドーの特徴が良く表現されたワインです。

 仔羊も肉質がキメ細かく繊細な味わいで、
 ハーブの香りがワインとも協奏して絶妙な取り合わせです。
 付け合せの蕪もキメの細かい食感が、仔羊のそれと相まっていて良い取り合わせです。

 開宴から5時間・・・24時を回り、宴も終盤に突入です。
 毛蟹の様子は・・・ようやくの「OK!」です。
 すったもんだがありましたが、どうやら凍った時間も動き始めるようです。


  

  

 待ちに待った毛蟹です。
 毛蟹にしては大振りな身は、
 佐藤会長が逸品を選りすぐってくれたからに違いありません。
 何かとても長い旅路を経て辿り着いたような感慨を覚えます。

 師父自ら率先して毛蟹をテキパキと解体し、手際良くパーツに切り分けられていきます。

 その味はというと・・・

 「旨っ!」

 「ミソの味が濃いー!」

 「待った甲斐があった・・・!」

 つややかなで弾力のある身、噛みしめると芳醇な海の味が広がります。
 ミソは濃厚なのに生臭みがなく、日本酒にもご飯にも最高に合います。




 と、ひとしきり盛り上がった後は、皆、黙々と蟹の身を解しにかかります。
 人間、カニを食べる時には無口になるものです。

 存分に蟹を頬張る・・・かーにばる。
 北の大地に蒔かれた種の芽吹きに思いを馳せながら、夜は更けるのでした。


                              (了)


s_mattsu at 21:57コメント(7)ウィークエンド・ディナー  

コメント一覧

1. Posted by マガサス   2014年03月31日 21:44
久しぶりの「ウィークエンド・ディナー」楽しく読ませて頂きました。

いやぁ、美味しかったですね。
カニを頬張るのがあんなに快楽だとは知らなかったです。

その語源が「carne vale、カルネ・ヴァレ=肉よ、お別れだ!」というカーニバルに相応しい、
この冬の海の幸とお別れする、荘厳な儀式となりましたね。
「カルネ・ヴァレ、カニネ・ホホヴァレ、カニよ、お別れだ、いっぱい食べてやるカルネ!!」
・・みたいな。(^_^;)

カニって美味しいけど、食べるのが面倒くさいと思っていたのですが、
今回は師父が見本を見せて下さり、みんなもそれに倣ってトライしましたね。
そのあと、全員で身をホジホジして、あっという間に殻が山のように積まれて・・・
私(・・とS先輩!)はもっぱら「食べる人」でしたが。

まっつさんが持ってきてくれた、ボルドーの赤ワインが美味しかったです。
「カニの殻」だけじゃなくて、パルマの生ハムも山のように積まれましたね。
それに、事務局長作の「タラの白ワイン蒸し」は絶品!!
あと、久々に聴いた BUGEIKAN MAX の名曲の数々も・・・グッときました。

本当にスゴイ武術を求める人は、本当に美味いモノを求める。
これぞ、太極武藝館だと思います。
また是非やりたいですね。
「創立二十周年記念ウィークエンドディナー」なんて、如何ですか?

札幌稽古会の佐藤会長、ご馳走様でした!!
つぎの冬も、楽しみにしてまぁ〜す! (*^_^*)
 
2. Posted by 円山玄花   2014年04月02日 21:59
この記事を読むと、カニと真剣に向き合ったあの日を、昨日のことのように思い出します。
本当に、カニにお酒に料理にと、存分に堪能させて頂いたひとときでした。

あの日に感じたことは、何かひとつのことを追求するのは、確かに厳しくてたいへんなことなのだけれど、そこにキッチリと向かい合うことで、自分の周りがとても豊かになるものだということです。
武術を追求していて、美味しいお酒や料理、そして空間に広がる音楽のハーモニーを味わうことが出来る。それは、追求する対象の問題ではなく、追求する自分自身の姿勢こそが問題であることを教えてくれていると思います。
しかも、「追求する」ということはギスギス、トゲトゲしたものではなく、ハーモニーが広がるように、豊かさが層になって周りに広がっていきます。
これは本当に素晴らしいことだと思います。

ご馳走様でした。
 
3. Posted by とび猿   2014年04月03日 07:47
どの料理もお酒も、まるでお店で頂いているようでした。
毎日食べている食事も、向かい方一つでこうも変わるものかと驚きます。
そして毛蟹の濃厚な味と香り。
初体験でした。
今、またあの興奮が蘇ってきます。
ご馳走様でした。
まるで2014年を暗示するかのような、密度の濃い新年会でした。
 
4. Posted by 太郎冠者   2014年04月03日 21:15
おいしい料理とお酒、そして・・・カニづくしの新年会でしたね。
札幌稽古会の太極拳に対する強い志が宿っていたのでしょうか(笑)

解凍するためにずいぶんと悪戦苦闘しましたね。
ストーブの前に寝かされた姿は、さながらSF映画のワンシーンのようでした(笑)
毛蟹は食べるところが少ないと思っていましたが、ぎっしりと詰まった味の濃い身をたくさんいただきました。

「痛んでしまうから」と、全員であまったカニの身をほじほじしてお皿に取っている中、師父にどやされながらもひとり食べ続けていたS先輩・・・。

執念を持って物事に向かう姿勢を勉強させていただきました(笑)
 
5. Posted by マルコビッチ   2014年04月05日 12:09
カニ、ご馳走様でした!!
美味しかったですぅ (^o^)
さんざん食べたうえ、私は後からカニ雑炊まで頂き、これまた美味しかったです。
こんなにカニを食べたのは生まれて初めてでした。
あのバスタオルに並べられたカニたちの事は、一生忘れないと思います (^_^)

しかし、毎回このような宴に参加させて頂き思うことは、皆さんの食に対する向かい方が真剣で誠実で、それでいて楽しく、寛げるということです。
太極武藝館のブログに食の記事が存在する意味がわかります。

まっつさん、美味しいお酒と、あの時の味と雰囲気が蘇るような記事をありがとうございました。
 
6. Posted by ユーカリ   2014年04月06日 05:27
何とも贅沢な宴にご一緒させて頂き、ありがとうございました。ご馳走様でした。
まっつさんの文章と写真のおかげで、再びじんわりと蟹とお料理の味と香りが、口いっぱいに広がるようです。

お料理をはじめとし、空間、会話、音楽、そして皆さんの動きが調和して、何とも心地よい、豊かな時間の流れを感じました。
一つひとつの物事と、丁寧に積極的に最後まで関わる事で得られる豊かさや喜びを、生活の中でもより多く感じたいと思いました。

7. Posted by タイ爺   2014年04月06日 12:29
皆様によろこんでいただき札幌稽古会一同大変に喜んでいます。
今シーズンは蟹のコンデションも良かったらしく美味しいとの事です。
ん?なんでしょう見慣れないCDが・・なになに「Bugeikan MAX 2007(Edited by Shifu Yohgen)」・・おお!こんなものが存在していたんですね。
美味しいお酒、料理、音楽、門人の方、これらが渾然と一体化することで素晴らしい場が出来上がったことと存じます。
画像と文を見ているだけで幸福感が・・・。
ワタシトテモハラヘリマシタノコトヨ。
 

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