2013年07月01日

連載小説「龍の道」 第113回




第113回  T A C T I C S (1)



 宏隆が驚くのも無理はなかった。

 そんな王老師の姿など見たこともないし、想像することだって絶対に出来はしない。
 こうして実際に目の前で見ていても、まだとても信じられない気持ちなのだ。

「ん・・そんなにこの恰好が珍しいかね?」

「ヒロタカ、何ボーッとしてるの、ご挨拶は?、ご挨拶!──────────────」

 呆然としたまま師の姿に見入っている宏隆の耳元に、宗少尉が小声でそう促した。

「あ・・し、失礼しました!」

 そう言われて、まだ師に礼をしていないことに気づき、大慌てて跪(ひざまず)き、両の手を押し戴くように額の前に捧げる。拝師正式弟子の取る、厳粛な礼法である。

「師父、ご無沙汰をしております。台湾で祖母の緊急入院を報らされ、そのまま帰国させて頂いて以来ですが────────あまりにも見慣れないお姿に、ついご挨拶することさえ忘れていました。たいへん失礼を致しました」

 跪いて胸元で包拳礼式を取ったまま、頭を下げたままの恰好で、宏隆がそう言った。

「うむ、久しぶりだね、元気そうで何よりだ。まあ、そう慇懃になることもない・・
さあ、立ちなさい────────で、私のこの恰好が、そんなに不思議なのかね?」

「はい、その・・何と申しましょうか・・・」

「ボクの王老師へのイメージとは、あまりにも懸け離れてオリまして、ってコトよね?」

 代わりに横から、宏隆の口真似をして宗少尉が言う。

「はい、そのとおりです。師父が入ってこられた時には、ここの教官をしている軍人がやって来たのかと思いました」

「ははは・・まあ、玄洋會での私の立場は、そんなようなものだがね」

 笑ってそう答える王老師の姿とは─────────────

 上から下まで黒ずくめの出で立ちで、頭には黒いベレー帽、黒いシャツに黒いタクティカルパンツを履き、肘にはエルボーキャップ、膝にはニーキャップを付け、足元には良く磨かれた半長靴(はんちょうか)、黒い長袖シャツの胸には宏隆たちと同じ徽章と認識票があり、ベレー帽と肩には別のデザインのワッペンが付けられている。
 そして、宏隆がもっと驚くのは Thigh Rig(サイ・リグ)と呼ばれる、腰から吊られたベルトを太腿で固定する装具を着けていて、そこに拳銃とナイフが装着されているのと、ベルトの前にはマガジンが2本ずつ入るマグ・ポーチが腰の左右に着けられていることである。

「その・・師父が身に着けておられる装備にも、ちょっと驚かされましたが・・・」

 少し遠慮がちに、宏隆が言った。

「ああ、これかね────────────?」

 太腿に装着したそれらの武器を見下ろしながら、王老師が答える。

「ちょうどいま、若い者たちに銃の撃ち方やナイフの使い方を教えていたところなのだよ。近頃の若者は武器の使い方が下手で困る。・・だが、ここは秘密結社の訓練場なのだから、私がこんな恰好をしていても別に驚くことはないと思うが」

「師父が?・・銃やナイフまで教えて居られるのですか?!」

「うむ、それがどうかしたかね?」

「あ、いえ・・自分にとって師父は太極拳の師ですので、その服装も装備も、なんだか不思議な感じがするのです」

 そう言いながら、つい宏隆は王老師の姿に見入ってしまう。
 サマになる、という言葉があるが、この出で立ちの王老師は現役の特殊部隊そのものの迫力なのである。それもただサマになっているだけではなく、その人の実力が滲み出ていて、もしこんな人と向かい合うことになったら、決して闘いたくないと思える。
 いつか張大人から、王老師が未だに大陸の共産党政府に追われる身であると聞いたことがあるが、仮に誰がどこまで追ってこようとも、敵が返り討ちに遭うのは明らかではないだろうか。

「ははは・・・君はいつも我々を楽しませてくれるね。そんなに驚いてくれるのだったら、今度いつか野外訓練にでも招待しようか?」

「野外──────────師父は野外訓練まで指導をされるのですか?」

「うむ、時にはそのような事もある。それも私の仕事のひとつだからね」

「野外でも、そのような装備で訓練をされるのですか?」

「装備はそのつど色々と変わるが、野外訓練は山岳地帯やジャングルが多いので、ウッドランド・カモフラージュの野戦服を着用して行うことが多い。この黒ずくめの服は市街地用のものだからね」

「はあ・・・・」

 王老師の迷彩服姿など、宏隆にとってはますます想像もつかない。

「ヒロタカ、王老師はジャングルの上空からパラシュートで降下して、降下後に敵地に潜入してミッションを果たす訓練を自ら指導されているのよ!」

「パ、パラシュートで?・・・僕が抱いていた師父のイメージとはまるで違います!!」

「あら、どんなイメージだったの?」

「師父と初めてお目にかかった時・・・K先生に連れられて南京町の祥龍菜館の地下へ行った時にお会いした王老師は、長袍(チャンパオ)という、裾の長い中国服に身を包んで居られて、スラリと細身の長身で、とても穏和そうな、神戸でよく見かける中国人の紳士という感じでした」

「でも、初対面から三十分もしないうちに ”掛かってきなさい” と言われて、勁力で天井までこっぴどく吹っ飛ばされるコトになるんだったわよね!!」

「はい、あれは本当にショックでした。師父のイメージはその時の印象が余りにも強くて、弟子入りしてからも、お会いする度にほとんど中国服を着ておられたので・・・」

「こんな無骨な恰好をされるなんて、夢にも思わなかった、ってこと?」

「そのとおりです」

「ははは、そう言う君だって、いつもとは違う精悍な恰好をしているじゃないか」

 カーキ色のシャツとズボンに、半長靴のコンバットブーツを履いた宏隆をしげしげと眺めて、王老師が言った。

「そう、馬子にも衣装・・ちっとはプロに見えなくもないわね!」

「うむ、まるでウチの戦闘要員のようにも、見えるな────────────」

「あ、師父まで宗少尉に口を合わせて・・ひどいなぁ、もぅ!!」

「はははは・・・・」

「わはははは・・・・」

「さて、応接室でこんな話をしていても仕方がない。せっかくこんな所まで来てもらったのだから、さっそく訓練場に案内しようか?」

「はい、お願いします─────────────────!」

 
 何度も思うが、神戸のこんな埋め立て地の倉庫街に、これほどの秘密訓練基地があるなどとは、この辺りに勤める人たちも、誰も思いも寄らないことだろう。何しろ倉庫ばかりではなく、製薬会社としての工場や研究室まで備わっているのだから、たとえ誰かが地下に来ることがあったとしても、何も疑う余地がないはずである。

 しかし、実際には研究室のボイラールームがそのまま秘密基地への出入口となっていて、基地の中には何艘かの船が停泊できるワーフ(船着き場)まで備えられているのだ。
 これらの船はどのようにここに出入りするのだろうか。海上保安庁には、その出入りの現場が知られていないのだろうか─────────────────
 宏隆の興味は尽きないが、停泊する船を横目で眺めながらその部屋を後にした。

 長い廊下をぐるりと巡って、また違うエレベーターに乗って、違う廊下に出る。
 宗少尉が先に立って突き当たりのドアを開けると、巨大な地下倉庫のような訓練場の全体が俯瞰できるデッキに出た。

「うわぁ・・・!!」

 初めて見る人が思わず唸ってしまうほど、眼下の訓練場は広く大きい。
 このデッキ自体、地下倉庫の天井近くにあって、ずっと向こうの、反対側の壁まで続いている。高さは、倉庫の床から20メートルほどはあるだろうか。
 長いデッキの向こうの端まで歩いて行けば、此処でどのような訓練が行われているのか、その全貌が一目で分かるようになっている。恐らくここを訪れる結社の関係者なども、こうしてデッキに立って訓練の様子を眺めるのかも知れないと思えた。

 それにしても、工場や倉庫を誘致した埋め立て地とは言え、神戸市内にこれほどの規模の訓練場を秘密裏に設けられるということ自体、秘密結社・玄洋會という組織が、宏隆が想像するほど小さなものでは無いのだと、あらためて思えた。

「どうかね、なかなか面白そうな景色だろう?」
 
 目を輝かせて訓練場を眺めている宏隆に、王老師が訊ねてくる。

「はい、大きな所で驚きました。あれは市街戦を訓練するためのスペースですか?」

 手摺りから身を乗り出すように指差しながら宏隆が王老師に訊ねる。
 そこには、屋根のない、壁だけでつくられた家の枠組みのセットや、三階まである、工事現場の事務所のようなプレハブの家、様々な植え込み、ドラム缶、積み上げられた木箱やダンボール箱、それに本物の自動車までが一見無造作に置かれている。
 そして、実弾こそ撃ってはいないが、戦闘服を着た数人の隊員が、それらの障害物を利用しながら前方の建物に進んで行く訓練をしているのが、このデッキからありありと観える。

「そのとおりだ。敵がどこに潜んでいるか分からないし、反対に自分がそこに潜んでいる際に敵が探しに来る時もある。そんな時の行動を訓練するために造られたものだよ」

「その隣のスペースは、何をする所ですか?」

「ふむ、何だと思うかね?」

 市街戦を訓練する区域と分けるように、訓練場の中ほどに天井まで聳える鉄塔が立っていて、そこから向こうは土手や窪み、草の茂みや水溜まりなどが、まるでどこかの野原のように造られている。

「おそらく・・野戦訓練と降下訓練のセットのように思えますが───────────」

「そのとおりだ。このデッキの端から向こうの鉄塔の上部までロープが掛けられているだろう?、そのロープを伝って密かに鉄塔まで渡って行き、塔の最上部から降下して二階の窓から建物の窓を破って侵入する、そこに居る敵を瞬時に制圧して、三階で人質になっている味方を救出する・・例えばそういった状況を想定した訓練をする。そして別のチームは外からそれを援護して、救出作戦を成功させるのだ」

「うわぁ・・スゴイですね、まるで映画のロケみたいですね」

「もう、暢気なこと言って・・映画じゃなくって、現実にそのような状況が起こり得るから訓練するのよ。他人事みたいに言ってるけど、ヒロタカがそういう訓練で腕を上げて、実際にそのような状況が起こった場合に正しく対処できるようにしていくのよ!!」

 ちょっと怖い顔をして、宗少尉が宏隆をたしなめる。

「やっぱりボクも・・この中で、そんな訓練をするんですか?」

「当たり前でしょ!、そのような状況の中で射撃も出来るような訓練をするのよ。他に何をすると思ってるの?、何のためにそんな立派な戦闘服を着てるのよ!?」

「これは・・宗少尉が着なさいって言うから・・・」

「ははは、君たちは顔を合わせれば兄弟げんかのようになるね。宗少尉は、君がどのような状況に遭遇しても無事で居て欲しいからそう言っているのだ。君が拉致された時のような、あの不安や苦しみを、私たちは二度と味わいたくないからね・・・まあ、もうケンカは良いから、下に降りて訓練の予定でも組むことにしようか。ここのメンバーにも紹介したいし」

「はい、申し訳ありません─────────────────」

「さあ、ヒロタカ、行くわよ!」

「ふん、すぐにそうやって ”あねご面(づら)” するんだから・・・」

「・・ン、なんか言った?」

「いいえ、何でもございません」


 エレベーターで階下に降りて訓練場に入って行くと、すぐに王老師と同じ黒い軍服の上下に身を包んだ男が駆けつけて来て、王老師と宗少尉に向かって丁寧に敬礼をした。
 細身ながら、キビキビと動く、張りのある良い体をしていて、黒い丸天帽(上部が円形になったツバのある帽子)を被っている。
 
「王老師、ご指示の通り、二人ひと組で建物に潜入する訓練を続けております!」

「ご苦労さん・・紹介しよう、彼がいつも話している私の拝師弟子、カトウ・ヒロタカくんだ。こちらは雷(らい)二等士官長。この訓練場の教官のひとりだ」
(註:二等士官長は、軍曹の上の曹長に当たる階級。少尉の下)

「初めまして、雷と申します!」

 宏隆に向かって背筋を伸ばし、敬礼をして言う。
 軍人らしく、よく腹に響く、引き締まった声である。

「加藤です、よろしくお願いします!」

 宏隆は軍人ではないので軍隊式の敬礼はせず、いつもの包拳礼で敬礼をした。

「大武號(たいぶごう)でのご活躍から、北朝鮮特殊部隊の拉致監禁から自力で脱出されたというお話は、多くの人から伺っております。本日は神戸湾岸訓練場にようこそいらっしゃいました!」

「ありがとうございます。ですが、活躍もなにも・・・ただ夢中で何とか生き延びて来ただけで、そのために多くの方々に迷惑を掛けてしまいました。軍事訓練はこれまでに陳中尉、宗少尉から少々教えて頂きましたが、もっと自分の実力をつけなくては話にならないと思って銃の訓練を望んでいたのですが────────────」

「 ”生田(いくた)さん” の夜店の射的のような狭い射撃場ではどうしようもないから、私に連れられてココまで来たってワケよね!・・ま、ヒロタカはもっと気楽な射撃場だと思っていたみたいだけれど!!」

 口ごもった宏隆に代わって、宗少尉が続きを説明する。

(註:生田さん、と親しみを込めて市民に呼ばれる生田神社は、神戸の中心部にある神社。祭礼には数多くの夜店が出る。古の時代には神戸中央区一帯が生田神社の社領であり、これが神戸という地名の語源となった。創建は今から約1800年前の西暦201年。)

「なるほど、確かに南京町の射撃場は、新しい銃の試し撃ちや、日常の腕が鈍らないようにしておく程度の施設ですからね。きっとカトウさんには物足りないことでしょう」

「雷くん、この加藤くんにいろいろ教えてやってくれ給え。もちろん私が居る時は直接指導をするが、雷くんのような経験豊富な人に就いて訓練すれば、彼ももっと戦闘というものに対して豊かなイメージが湧いてくるに違いないからね」

「恐れ入ります。私に出来ることでしたら、何なりとご指導させていただきます」

「ありがとうございます・・・しかし、この施設はすごく立派ですね。こんな所が神戸にあるなんて、いまだに信じられません」

「お父君のお力添えで、このような施設が維持できるのですよ。隊員一同、特別顧問である加藤光興(みつおき)先生には、心より感謝申し上げております」

「父が────────────?」

「そうよ。この基地なんか、ほとんどお父様の出資で出来ているんじゃないかしら?」

「ええっ・・・?」

「やれやれ、知らぬは息子ばかりなりけり、ね!」

「はは、そういうものかも知れませんね。さて、皆さまはそろそろ夕食になさいますか?、食堂ではすでに準備が整っているということですが・・・」

 腕のハミルトン(軍用時計)を見ながら、雷士官長が皆を気遣って言った。

「僕は先に訓練場の中を見せてもらいます!」

「ははは、そう言われると思いました。それでは私がご案内しましょう。王老師と宗少尉のお二人は先に夕食を取られていては如何ですか?」

「いや、久しぶりに弟子と会えたのだ、私も付き合おう。食事はその後でゆっくりと、皆で共に楽しもうと思うが」

「そうですね。口の肥えたヒロタカも、ここの中華料理にはウナるかも知れません」

「はははは・・・」

「あはははは・・・・」

「皆さん、ありがとうございます」



                                (つづく)



  *次回、連載小説「龍の道」 第114回の掲載は、7月15日(月)の予定です

taka_kasuga at 23:18コメント(17)連載小説:龍の道 | *第111回 〜 第120回 

コメント一覧

1. Posted by 春日 敬之   2013年07月02日 17:20
☆みなさま

PCやら何やらのトラブル続きで、前回の「龍の道」を掲載することが出来ず、
誠に申し訳ありませんでした。m(_ _)m
今後はもっと充分な注意をして行きたいと思います。

今回より、サブタイトルが「TACTICS=タクティクス」となりました。
実戦における個々の戦略、戦術、用兵学、戦法、兵法、といった意味です。
台湾では散々な目に遭った宏隆クンも、いよいよプロとしてそのようなことを学んで行きます。
今後の展開にご期待いただき、どうぞ変わらぬご愛読をお願い申し上げます。
 
2. Posted by 太郎冠者   2013年07月04日 20:34
太極拳の先生といえば、一般的には例のカンフー着を着てる、あるいは動画などではジャージでやってる先生もいるというイメージでしょうか。

武藝館の稽古では、師父はもっぱら軍もののタクティカルパンツを履かれていて、その姿は小説にも書かれているように、太極拳の先生というよりは軍の教官のようにも見えます。

ミリタリーものの服は、日本ではどうしてもファッションであったり、サバイバルゲームのコスチューム程度の扱いでしかないですが、実際に着用してみると動きやすく出来ているし、機能性も高くて快適に感じます。
最近の、海外のミリタリーウェアメーカーは、もともとアウトドア系のアパレルメーカーがミリタリーウェアを作り始めたというものも多いので、丈夫かつ機能的で動きやすいのは当たり前といえば当たり前なんですけどね。

・・・しかし、若者がカーゴパンツをお尻まで下げて履いているのを見るたびに、何かあったらどうするんだろうなと思いますし、それでいいのかと悲しくなったりもします。
まったく、服ぐらいきちんと着用できないものでしょうか。
 
3. Posted by マルコビッチ   2013年07月04日 21:31
王老師のイメージが・・・(@_@;)
イメージとは、実に自分勝手なものだとつくづく思います。
小説の場合でしたら、それもまた楽しみなものだと思いますが・・・勝手に、王老師は小柄で、髭を生やした、少々年老いた方を想像していました (^_^;
どこにもそんなこと書いてないのに・・それどころか、第8回の出会いの場面では、50絡みのスーツも似合いそうな紳士・・と書いてあるではありませんか!
なんといい加減な根拠のない思い込みで捉えているのかと恐ろしくなります。
考えると、日常生活の中でも、この思考回路の結果だと思い当たることがあります。
こんな調子で稽古しているのかと思うと・・・ィャィャィャィャ・・もっともっと注意深くならなくてはなりません!!

武藝館の稽古では、太極拳の身体の使い方がどのように実戦と結びつくか、師父に説明していただきながら拝見することが出来、そのなかで銃やナイフについても語られ、研究会では実際にダミーのナイフを使った対練も行うことがありますので、今回の王老師の登場は、初めこそ驚きましたが読んでいくうちに納得できました。
しかし、太極拳教室などで歩法や套路だけをやっておられる方々には、たぶん衝撃であり、不思議であるのではないかと思います。

今後の宏隆くんの訓練が楽しみです。
 
4. Posted by 円山玄花   2013年07月04日 21:56
毎回細かく、活き活きとした描写ですね!
今後の展開が、とても楽しみです。

考えてみれば、人に刺激を与えて成長させるものは、みな”思いも寄らない”ことかもしれません。
それなのに、なぜ人は一つのイメージに固執したり、安心・安全・安住を求めるのでしょうね。

宏隆くんが王老師のイメージの違いに驚いたように、私も太極拳のイメージや戦闘方法の考え方の違いに驚きの連続です。知らないことなので、自分のイメージが壊されて当然だとは思っているのですが、学べば学ぶほど、これは完全に自分の頭を換えなければならない!・・と思います。
 
5. Posted by とび猿   2013年07月04日 23:19
王老師のお姿、いきなり拝見するとさぞかし衝撃的であると思います。
私は以前、武術、特に伝統武術などと聞くと、日がな昔から伝わる基本や型、対人練習、武器等を練習していくものという考えが頭の中にありました。
素人考え甚だしいですね。
王老師のお姿も、この施設での訓練も、そのころの自分では只々唖然とするしかありませんが、きっと、太極拳と少しもずれてはいないものなのでしょう。

TACTICSの続きを楽しみにしています。
 
6. Posted by まっつ   2013年07月04日 23:19
サマになっている・・・
本物の軍人の雰囲気といえば、
映画「Navy SEALs」で垣間見たくらいなのですが、
一見には極めて普通の人に見えるのに、
動き出せば軸がブレず、
重装備でも身体が滑らかに動く事に驚きました。
身体が違うのですが、それはただ身体を鍛えたのではなく、
身体の「使い方」を鍛えて、身に付いた「質」の怖さを感じました。
太極拳の訓練が軍隊の鍛え方と同じと言われる事も、
分かるような気がします・・・
 
7. Posted by ユーカリ   2013年07月05日 05:34
前回に引き続き、王老師のお姿に、心底驚いている宏隆君の冒頭の様子から、いろいろな想像をめぐらせましたが、まさか、黒一色の戦闘服に身を包まれていらっしゃるとは…。
しかも、武器の扱いから野戦訓練・降下訓練に至るまで、ご自身が指導されているなんて、想像外の事でした。
>仮に誰がどこまで追ってこようとも、敵が返り討ちに遭うのは明らかではないだろうか
物凄く、納得してしまいます。

戦闘時の服装や装備も、状況によって違う事にも驚きました。実際を想定した、あらゆる訓練を積んで日夜鍛えている方々が、絶対に勝つ為に、幾重にも注意深く「その時」に備えている状態に、日頃の自分の在り方や考え方が、根本的に違う事を痛感します。
 
8. Posted by bamboo   2013年07月05日 22:49
文から滲み出る王老師や宗少尉の格に、彼等が置かれてきた状況や高い必要性を感じます。それに…ここまで見てしまった宏隆君^^;
なんだかこれは…ボヤボヤしていられませんね。
 
9. Posted by MIB(▼_▼¬   2013年07月09日 16:09
自分は入門してまだ日が浅いので、師父の中国服姿を拝見したことがありません。長袍など着てらっしゃったらむしろそちらの方がびっくりしてしまうと思います。^^;
しかし、巷の太極拳の多くはタクティカルパンツが似合わないような気がしますね。
 
10. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:13
☆太郎冠者さん

私はかねがね、どうして太極拳の練習にあんなシルクのパジャマみたいなモノを着てやる必要があるのか、非っ常ぉ〜に疑問でした。事実、オーストラリアでもヨーロッパでも、どこでも皆アレをシルク・パジャーマーズ、タイジィ・パジャーマーズなどと(悪意なく)呼んでおり、功夫ウエアとか太極拳ウエアなどと呼ぶのを聞いたことがありません。
ウチだと師父は一般クラスではジャージ、研究会以上ではタクパンでしたが、最近は面倒だと言われてタクパンばかりだということですね。
師父とご一緒している時に、当世の若者がジーパンから尻を半分出して歩いているのを見て、あれじゃ襲われてパンツを少し下げられただけで戦闘不能になるな、と仰いました。
尻出しルックの本人に聞かせてやりたいものですが、きっとキョトンとするだけでしょね。
なんだか、イヤな時代だねぇ・・・
 
11. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:13
☆マルコビッチさん

そう、自分のイメージなんていうものは、とても手前勝手なモノです。
掌の向きや、手の位置の高さひとつをとっても、ただそのとおりにヤル、
言われた通りに、見たとおりにヤルというのが、ヒトはとにかく大っ嫌いみたいですね。

では何をやりたいのかというと、やはり、
自分が思うように見て、自分が思うように考え、自分がしたいようにやりたい、
ということになるでしょうか。

しかし、それではホンモノは修得できない。
当たり前のコトなんですけれど、本人にはそれが当たり前だと思えない。
自分の思いどおりにやるから、自分がやりたいことがデキルのダと信じてしまっている。
そんな人が、この社会にはごく普通に増えてしまいました。

結局、♪コレでイイのダ〜・・の「コレ」の中身が、すごく低次元で貧弱なんですね。
そんなヒトは、アルコールの入っていないビールみたいに、ちょっと抜けている味がします。
 
12. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:14
☆玄花さん

他人がそれを「思いも寄らないこと」だと思えるように自分を演出するのが巧い人はずいぶん増えたように思いますが、そんな人は、本当に思いも寄らないことに遭遇した時に戸惑うようです。
「願わくば吾に七難八苦を与え給え」と三日月に祈るような武将の魂は、今日ではむわぁ〜ったく見かけるコトができません。
自分を成長させるモノは、常に自分の知らない、思いも寄らないことなのだと思います。
自分のスタイルを決めて、そのイメージどおりに自分を演出している人は、成長を放棄しているのと同じコトなのでしょう。
せめて鬆藝館では、そのようなことに気づき、本当の成長をして言って欲しいと願うばかりですが、高度な拳理を目前にしながら、必死で手にしようともしない人の何と多いことでしょうか。
嗚呼、やっぱし、時代が違うのかなぁ・・・(^_^;)
 
13. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:14
☆とび猿さん

いつも中国服を着ていた人が、いきなり軍服で、それも兵士のスタイルで、
オマケに装備付きで現れると、そりゃもうメッチャクチャに驚きます。
上で太郎冠者さんにも書きましたが、なんで太極拳ってのは、あんなパジャマみたいなモノでやりたがるんですかね。今どきシナでも、あんな恰好で歩いている人は居ませんし。

そんなコト言ったら、日本人だって合気道や古武術で、いまだに袴を履いてやってるじゃないか、と思う人も居るかも知れませんが、因みに、あれが漢民族の伝統衣装だと言うのは全くのデタラメで、「龍の道・第60回」にも書いたとおり、中国武術の象徴のように思われている、あの詰め襟の中国服は、実は彼らが夷狄と呼んで蔑み怖れた満洲族(旗人)の衣服=「旗袍(チィパオ)」から来ているものです。
北京オリンピックで何百人もの人がアレを着て太極拳らしきものをやっていましたが、満洲族の誇りを持つ人は、「ヤツら、いまだに俺たちの服を着ているゼ・・」って思ったかもしれません。
 
14. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:15
☆まっつさん

>一見には極めて普通の人に見えるのに

以前もどこかに書きましたが、彼らが普通の人に見えるのは普通の人だけです。
普通の人じゃない人は普通じゃない人がわかる。
普通じゃない人が普通の人の振りをしていても普通の人には見えない人が居るのです。
ま、普通はそんなこと分かりませんけどね。

武術家や軍人じゃなくても、
普通の人が普通以上に見せたい時には、色々と工夫しますね。
身長を高く見せるために高い帽子をかぶったり、ヒールの高い靴を履いたり、
美貌に自信がない人は高級化粧品を使いたがり、強さに憧れる人は武器を持ちたがり、
知性に憧れる人は大量の本を所有したり、高尚な言葉遣いを覚えようとします。

普通の太極拳を普通にやっている人は普通の人にしか見えませんが、
普通じゃない太極拳を普通にやっている人は普通の太極拳をやっている人とは違って見えます。
普通の太極拳しか知らない大先生でも、自分が普通じゃないように見せるには、
衣装や動作、表情、言葉遣いまで普通じゃないように工夫しなくてはならないので大変です。

普通じゃない経験や訓練をしてきた人は、
ジーパンとポロシャツで町を歩いていても、すぐに公安や刑事に目を付けられます。
相手も普通じゃないので、普通じゃないヤツのコトはお互い普通に分かるのです。

特殊訓練を積んだ人は、普通の人には決して見破られません。
普通の人は普通のことしか知らない故に、
普通じゃない人の普通じゃないところが普通に分からないのです。

・・何だかゴチャゴチャしてしまいました。
フツーに書いたつもりなんですが(汗)
 
15. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:23
☆ユーカリさん

>自分の在り方や考え方が、根本的に違うことを痛感します

上でも書きましたが、それが「普通の人」の特徴です。
けれども、普通の人のままでは決して高度な物事は極められない。
どんな藝術でも武藝でも、それはまったく同じことで、
それを極めようとする人は真っ先に「普通」を捨てます。
普通とは平凡であり、藝を極める事とは非凡に他ならないからです。

普通の人が普通の人生を希求するのは、「普通」が限りなく「安全」だからです。
安全は安心であり、安気に安堵できる保障のようなものですから、
普通であることを宝物のように、誰もが普通にそれを欲しがります。

なぜそれを欲しがるのかと言えば、
それを望んで居さえすれば、自分で考えなくとも済むからです。
自分で疑問を持ち、自分で選択をし、自分で考え、自分で答えを出す。
安全や保障は、自分でそれをしなくても済む、とても良い方法です。

しかし現実は決してそれだけでは済みません。
どのようなことも自分で考え、自分で判断し、自分で結論を出し、自分で立ち向かい、
全てを自分の力で解決をしなければならないコトこそが、
私たち人間に与えられている人生なのです。

ほんの少し前までは、日本人にはそのような「普通」の人はあまり居ませんでした。
江戸時代でさえ、世界的に見て庶民の知的レベルが非常に高かったという日本民族は、
普通=平凡を望む人より、普通に非凡を求める人が今よりも多かったと思いますが、
敗戦と占領、お仕着せの憲法と偏向教育を他人任せ、他民族委せにした結果、
誰もが「普通=安全と保障」を当たり前のことだと錯覚するようになりました。
私たちの周りには曾て無い危機が待ち受けているにも拘わらず・・です。
 
16. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:24
☆ bamboo さん

>ホヤボヤしていられませんね

♬ ボヤボヤしーてたらワタシは誰かのイイ子になっちゃうよぉ〜・・
 むぉお、どぉおにもトマラナイっ〜・・・

ガンバレ、ヒロタカ!!・・カンバレ、リュウノミチ!!
頑張れ、プリズンブレイク!!、24なんかに負けるなぁ〜!!

ムシ暑い日本を想像してたら、ちょっとオツムが熱中症になりました(^_^;)
 
17. Posted by taka_kasga   2013年07月09日 18:24
☆MIB (▼_▼¬ さん

>師父の中国服姿を拝見したことがありません

おや、そうですか。
最近はもう、儀式の時しか着用されませんね。
動画撮影の時にも、あのパジャマみたいなモノだと巧く構造原理が隠せると仰って、
かつてはよく着ておられましたね。

巷の太極拳がタクパンを履いてやったら、どうなるか・・・
あはは、それは見モノですね、ぜひ見てみたいです。
ついでに、当代の高名な老師たちには是非とも、
軍隊のフル装備でブーツを履いて、走ったり闘ったりして頂きたいです。
太極拳がどれほど強いのか、それで証明される事になると思います。
 

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