2012年06月15日

連載小説「龍の道」 第90回




第90回 龍 淵(13)


「わぁ、美味しいっ!─────────────────」

「うん、いつ食べても、この味は変わらないな」

 ふと気付くと、ランチタイムにはまだ間があるというのに、このレストランに訪れて来る人がだんだん増えてきた。ほとんどの人がカレーを注文している。昼どきの混雑を避けてゆっくり此処のカレーを楽しもうと、時間に余裕のある人たちが早めにやって来るのである。

「これはちょっと他には無い味ね。宏隆が何度もここに来る理由が分かるわ・・・」

「ね、そうだろう?、僕もカレーが好きであちこち食べ歩いたけど、インド料理店のカレーなんかは別にしても、まだこれに匹敵するカレーにはお目にかかったことがない」

「やっぱり牛肉が深い味わいを出しているのかしら?、もちろんルウのベースにも神戸牛が使われているのでしょうね」

「・・うん、それはもちろん、神戸ビーフを使っているだろうな」

「カレーの具に使われているお肉も、やっぱり神戸牛なんでしょうね」

「ん・・ああ、そうね・・そりゃ、神戸ビーフに決まってるよ」

「神戸牛って、どうしてこんなに味わいが深いのかしら。松阪牛なんかは当地のすき焼きの老舗で何度か頂いたけれど、神戸牛とはまた全然味が違っているわね。近江牛もすき焼きで食べると本当に美味しいんだけれど、神戸牛とは味も香りも違う・・・」

「そう、確かに、神戸ビーフと、松阪牛や近江牛とはまったく違うね」

「何よ、宏隆・・さっきから奥歯に物が挟まったような言い方をして!、私が ”神戸牛” って言っているのに、どうしてわざわざ、神戸ビーフ、神戸ビーフ、って言い直すのよ?、それも生粋ハイカラ神戸っ子の習慣だってこと?!」

 ちょっとムッとした声で、珠乃が言う。

「いや・・ただ神戸牛と神戸ビーフとは違うものなので、つい・・・・」

「え?、神戸牛と神戸ビーフは違う?・・それってどちらも、世界的に有名な神戸の牛肉を指しているんじゃないの?」

「いいや、まったく別のものだよ」

「別のもの?、ただ普通に何々牛と呼ぶか、ハイカラに呼ぶかの違いだと思っていたわ」

「ははは・・神戸っ子は何でもハイカラにして喜んでいるワケじゃないよ。珠乃は奈良から来たから知らなくても当然だけど、そもそも ”神戸牛” という銘柄は存在しないんだ」

「ええっ、そんな!・・・だって、スーパーでもデパートでも、そこら中で ”神戸牛” って名前で売られているじゃないの?」

「一般的に兵庫県で生産された牛は何でも ”神戸牛” と呼ばれているみたいだけど、厳密に言えば ”神戸ビーフ” だと思って買ってきても、ホンモノとは全く違う場合があるってことになるね」

「宏隆・・・神戸を愛する神戸人のハシクレとしてはっきりしておきたいから、そのあたりをちゃんと説明してよ!」

「オーケー、そンじゃ説明してやるか・・・あ、コレ食べてからでもいい?」

「駄目ッ、すぐに説明しなさいっ─────────────────!」

「ヤレヤレ、こんなのをヨメハンに貰ったら亭主が可哀想だよな、ほんまに・・・」

「ん・・何か仰いましたか?」

「あ、いや、コホン・・・それじゃ神戸肉について、ちと説明させて頂きます」

 宏隆がスプーンとフォークを置いて、膝の上のナプキンで口を拭き、水を一口飲む。

「はい、謹んで蘊蓄(うんちく)を拝聴させて頂くわ」

 珠乃は椅子に座り直して、笑顔でちょっと姿勢を新ためた。
 自分が知らないことを人に教えてもらう際に、このように先ず姿勢を正して聞こうとする習慣は自分にも身に付いている。宏隆はそれをごく自然にできる珠乃を好ましく思えた。

 こんな時の珠乃は、とても輝いて美しく見える。

「・・まず、神戸肉は言わずと知れた日本三大和牛ブランドのひとつだけれど、いま言ったように ”神戸牛” という銘柄は存在しない。神戸牛というのは俗称で、最高級の牛肉として知られる神戸牛肉の正式な名称は、”神戸ビーフ” 又は ”神戸肉” と呼ぶのが正しいんだ。
 それに、神戸で育ったすべての牛肉が神戸ビーフと呼ばれるわけじゃなくて、神戸肉流通推進協議会という所が定めた厳しい定義をクリアしたものだけに、晴れて ”神戸ビーフ” という称号が与えられるんだよ」

「まあ、そうだったの・・・」

「神戸肉の定義は、神戸肉流通推進協議会が設立された昭和58年に定められていて、そこに ”兵庫県産但馬牛および神戸肉神戸ビーフの規約” というものがある。
 その規約には、神戸肉・神戸ビーフと呼べるものは、兵庫県産の但馬牛のうち、未経産牛(出産を経験していない雌牛)と去勢牛に限られ、肉質等級はどう、歩留(ぶどまり)等級はどう、枝肉重量(頭部、内臓、四肢を取り除いた部分の骨付き肉の重量)は何キログラム以下、という具合に肉の格付けが細かく決められていて、そうでないものとは厳しく区別されているんだ。
 つまり、但馬産の肉牛の中でも特に上質なものを ”神戸ビーフ” や ”神戸肉” と呼んでいるわけで、一般の人たちに ”神戸牛” と呼ばれているものはもっと範囲が広くて、その規定に入らないものも多く含まれるってコトになるね」

「うわぁ、宏隆は食いしん坊だけあって流石に詳しいわね。ただ漠然と、神戸近郊で育つから神戸牛なんだと、単純にそう思っていた自分が恥ずかしいわ。でも、歩留り等級って何のこと?」

「歩留り等級というのは、日本食肉格付協会によって定められたABCのランクのことで、枝肉から得られる部分肉の重量によって決められている。ステーキを食べに行くと、よくこの肉はA5です、A3です、などと説明されるけど、そのことだよ。それを導き出すための難しい計算式まであるんだ。ついでに、肉質等級というのは、霜降りの入り具合や肉の保水力やきめの細かさ、脂肪の色つやなどによって詳細に決められているんだ」

「ふぅむ、なるほど・・・・」

「神戸ビーフの歴史は、慶応三年(1867)に神戸港が開港された際、外国人が船で神戸に入って来た時に始まる。当時の日本人はまだ牛肉を食べる習慣がなく、彼らは仕方なく自分たちで牛を手に入れて食べていたんだけれど、ある時、但馬牛を口にする機会があって、その余りの美味しさにとても驚いた。
 彼らが本国で食べていた牛肉は固くて、よく噛まなくてはロクに味も無いし、バサバサしているからバターをステーキに乗せたり、ワインで蒸し焼きにしてソースを工夫したり、焼いた肉を10分間も休ませておかなくては美味しくならない。しかし但馬牛はそのまま生で食べても美味しいし、ただ焼いて塩を振るだけでも充分美味しく食べられたんだ。彼らがビックリするのも無理はなかっただろうね」

「ああ、それはよく分かるわ。外国に行ってステーキを食べても、あまり美味しかったという記憶が無いのよ。両親とフランス旅行をした時、高級ホテルのレストランへ入っても、確かに味は洗練されているけれど、お肉そのものはそれほど美味しいとは思えなかったわ。
アメリカに行った時なんかは、これは本当に食肉なのかしら、って思えて・・・」

「そのとおり、それが気候風土の違いというものなんだろうな。但馬牛を産み出す中国山地の気候は牛にとって快適で、それが美味しい肉牛に適した環境だったのだろう。
 但馬牛はもともと水田耕作や輸送のための役牛だったのだけれど、牛肉を食べる習慣が日本に生じてきた明治以降から食肉としての但馬牛の質の高さが注目され、但馬牛同士の交配しか行わない純粋な血統を保つ努力が続けられて、今日の名声を築くようになったんだ」

「それじゃ、開港の時に入ってきた外国人は、その役牛の肉を食べて美味しいと思ったわけね。彼らが本国で食べていたのは食用に育てた肉牛だったのに、日本の農家に飼われている役牛の方が美味しいなんて、よほどのコトね」

「本当にそうだな。反対に日本人が外国に行って肉を食べると、これは役牛じゃないのかと思えてしまったりする。文化の違いというのはスゴイもんだね」

「でも、世の中には何にでもすぐ反対する人が居るわね・・・神戸や松阪の牛肉の美味しさは脂肪の美味しさであって肉本来の旨さではない、そもそも脂肪の味を肉の味とするのは日本人くらいのもので、その証拠に霜降り肉は外国人から全然評価されていない、などと言っている評論家や有名なロングセラーの漫画原作者が居て、それを ”霜降り肉信仰” と称して、強く否定しているわね」

「あはは、”霜降り肉信仰” ね!・・・本当に、メシの種にするためには色んなことを言う人が居るね。けれど実際には神戸ビーフは欧米を中心とする海外でもすごく知名度が高くて、キャビア、フォアグラ、ホワイトトリュフと並んで Kobe Beef が常に上位にランクされ、最高級の食材として定着しているんだよ。日本を訪問したら、先ずは神戸ビーフを食べたいという各国の王室王族、政治家、有名人、ハリウッドの俳優なども大勢居ると言うし」


 ここで宏隆が語っていることは事実である─────────────────

 例えば、有名な映画監督のスピルバーグが自家用機でやって来ては、何十キロも神戸肉を買い込んで帰るというのは有名な話であるし、俳優のトム・クルーズは大の神戸ビーフ好きで、その味を事あるごとに行く先々で紹介し続けている。

 また、オバマ大統領が来日することになって天皇皇后両陛下との昼食会が企画された際、事前に外務省から宗教上の理由やアレルギーなどで食べられないものが有るか、とホワイトハウスに問い合わせたところ、『ぜひ神戸ビーフとマグロを食べたい』と回答があった。
 食べられない物があるかと訊ねたのに、食べたい物はこれだと回答してくるのは異例であったというが、かのミスター・プレジデントは、それほど神戸ビーフやマグロに強く憧れていたということになるだろうか。

 また、こんなエピソードもある。
 2009年9月に「The World」という、全168室の船室を世界中の富豪に分譲販売している「洋上マンション豪華客船」が神戸港に二度目の入港をしてきた。因みに船室一室の価格は八千万円から七億円で、船内自治会でそのつど寄港地が決定され世界中を巡り続けている。
「The World」には、同じ寄港地には二度と立ち寄らないというルールがあるのだが、神戸ビーフに魅せられ、どうしてももう一度食べたいという自治会員たちの強い希望により、ルールを破っての異例の再入港になったという。


「まあ、そうだったの?・・・霜降り肉は外国人から評価されていないなんて、霜降り肉の否定論者たちはよくそんなことが言えるわね!」

「あの漫画には、霜降り肉を否定する描写が何度も登場してくる。たとえば最高級の土佐赤牛の霜降り肉の刺身を出されて主人公の父である高名な美食家が激怒する、という場面が出てくるね。

 『あなたには人をもてなす資格がない。そんな人の頼みなんか聞けませんな。
  マグロの脂肪は低い温度で溶けるから、舌の上でトロリと溶けて甘い味がするが、
  牛の脂肪は高い温度でないと溶けない。冷たい刺身の状態では、食べると脂肪が
  ロウソクのようにニッチャリと歯にまつわりつくだけで、旨味は少しも感じない・・』

 ─────────などという具合に、”霜降り肉” はケチョンケチョンに描かれている。
 だけど、怒る気にもならないね。一体この作者はどんな霜降り肉を食べたんだろうかと、神戸や松阪の人なら、誰でもそう思うんじゃないかな。
 そもそも、牛肉は部位や品種によって融点が違うんだ。和牛種では全部位に渡って低い融点なんだけれど、輸入牛や乳牛の肉は皮下脂肪が体温で溶ける範囲の融点でしかない。
 一度この原作者に本物の神戸ビーフをナマの刺身で食べさせてあげたいね。脂肪がロウソクのようにニッチャリと歯にまつわるような神戸肉は存在しない。有り得ないね。
 大体、この原作者はロウソクをカジったことがあるんだろうか?、だとしたら何故?
あはは・・・まあ、漫画に書かれていることを頭っから信じる方がどうかしているけどね」

「宏隆、あなた、本当に食べ物に詳しいわね!」

「はは、実はこれ、ウチの鈴木シェフからの受け売りなんだ・・・」

「なぁんだあ、よく勉強してるなぁって、感心してあげたのに!」

「・・・ついでに、中国人なんかは神戸ビーフを本国に大量密輸するヤツらが絶えないって父の貿易会社の人が苦笑していたっけ。だから中国共産党にはけっこう神戸肉がウケているんじゃないかって言ってたよ。
 そう言えば、北朝鮮の楽園とやらに御座す(おわす)例の将軍サマも、神戸ビーフは大の好物で、あの国が何かしでかす度に日本が制裁措置を取るわけだけれど、その中に必ず神戸肉の輸出停止というのがある。お前たち、そんなコトをすると将軍サマに神戸肉を食べさせないぞってワケだよね、あははは・・・」

「オドシ、ユスリ、タカリの北朝鮮のやり方は日本人として決して許せないけれど、強気ですぐにミサイルを撃つぞと言う将軍サマにしては、何だかユーモラスな話よね」

「外国人ばかり例を挙げたけれど、もちろん神戸肉を愛する日本人は多いよ」

「ハイ、私もその一人よ。ただサッと生姜焼きにしただけであんなにも幸せになれるお肉って、他にあるのかしらね・・・そう言えば、伊藤博文や文豪の谷崎潤一郎も神戸ビーフを愛したという話を聞いたことがあるわ」

「伊藤博文は初代の兵庫県知事だったからね、きっと毎日でも食べただろうな。谷崎潤一郎は神戸に長く住んだから、そりゃ食べずには居られないよ。三宮には谷崎がよく通ったという老舗の洋食屋もあるし。まあ、ボクはあまりお勧めしないけれどね」

「あら、どうして?」

「有名人が愛した有名老舗、イコール本当に美味しいお店とは限らないからだよ。他の人が何と言おうと、自分の目で確かめて、自分の舌で味わって、美味しいと思えないんだったらそれは美味しくないんだよ。だから流行のグルメ漫画なんかに踊らされる人間の気が知れない。その洋食屋は味もポリシーも僕の好みじゃないしね」

「宏隆らしいわね。でも、そのとおりよ。メディアの都合の良い情報に踊らされて物事の本質を見失い、肝心の自分の感性が信じられないというのは、ちょっと哀しいコトよね」

「ところで、ここのビーフカレーはどう?」

「うん、すごく美味しい!!」

「このホテルやレストランが、将来もずっと伝統が守られて存続していくと良いのだけれどね。古き良き伝統を、佳き文化を失うことなく、大切に守っていって欲しいな」

「本当に、そうね・・・・ところで、神戸ビーフのことはよく分かったけれど、近頃の宏隆が一体何をやっているのか、あの怪しい中国人の女性は何者なのか、やっぱり気になって仕方がないのだけれど」

「そうだったね、神戸ビーフの話に夢中で・・・・」

 頭を掻いて、宏隆はちょっと困ったような顔をした。
 珠乃に、自分の置かれた立場を、どのように説明すればよいのか───────────────

 王老師と出会って以来の出来事には、いろいろと複雑な事情が絡んでくる。
 それを洗いざらい何もかも珠乃に話してしまうことなど、どう考えても出来ないと思えてしまうのだ。それに、いくら宗少尉が大丈夫だと言っても、それを知ることによって珠乃自身に降りかかって来ることの大きさを想うと、自分が知らせたために珠乃をそんな世界に巻き込んではならない、という気持ちになる。
 現についさっきも、秘密結社とは無関係でも自分の所為で珠乃を危険な目に遭わせてしまったのである。二度と珠乃にそんな思いをさせてはいけないと、宏隆は思うのである。


「いいのよ、話したくなかったら・・・無理に話さなくても、いいの・・・・」

 宏隆の困っている顔を見て、珠乃が優しく声を掛ける。

「いや、話すよ──────────でも、僕の問題だけじゃ済まないデリケートなことについては今の時点では話せない。それを分かってくれるなら、珠乃に話そうと思う」

「分かったわ。宏隆が話せることだけで良いから私に聞かせて。私は興味本位でそれを知りたいわけではないのよ。ただ、宏隆が・・宏隆のことが、心配で・・・いつの間にか、自分が知らないところに宏隆が行ってしまいそうで・・なんだか怖くて・・・・」

 珠乃は目にハンカチを当てて涙ぐんでいる。

 宏隆には、珠乃の心が痛いほどよく分かった。

「ありがとう、珠乃・・・・話せるだけ、話すから」

「うん──────────」


 食後の珈琲とケーキをいただきながら、宏隆はこれまでのことを珠乃に話した。


 王老師との出会い─────────────────

 たとえ真摯に武術を追求していたとしても、そして才能に恵まれていたとしても、滅多にそんな機会が与えられるはずも無い、太極拳の正式な真伝継承の道が宏隆に訪れたこと。

 そして、師は台湾の秘密結社に関わる人であり、その秘密結社は文化大革命の際に反政府思想者・反共産主義者狩りで大陸を追われた人や、革命で家族や親族を殺された人たちによって、共産主義中国や北朝鮮の侵略を防ぐために結成されているということ。

 その結社はかつて日本が台湾を統治していたことに恩義を感じており、またそこには宏隆の父親も深く関わっていて、宏隆もそれらの縁で参入することとなり、様々な訓練を受けているということ。

 宗少尉は秘密結社の格闘訓練教官であるということ。自分は台湾で訓練を受け始めたが、その間には少々危ない目にも遭ったということ。

 宏隆は珠乃に、それらをできるだけ分かり易く話して聞かせた。
 ただ、台湾に渡る時に乗っていた大武號(たいぶごう)が、尖閣諸島の辺りの海で漁船を装った北朝鮮の工作船から攻撃を受けたことについては、話すのをやめた。
 珠乃が怖がったり心配してはいけないし、そのこと自体がニュースにも取り上げられず、秘密裏に処理されている事だからである。



                                (つづく)



  *次回、連載小説「龍の道」 第91回の掲載は、7月1日(日)の予定です

taka_kasuga at 19:38コメント(16)連載小説:龍の道 | *第81回 〜 第90回 

コメント一覧

1. Posted by bamboo   2012年06月15日 22:11
なんだか日本ってすごいですね…改めて思いました。
海外の牛肉といえば、カンボジアのある店で食べた「SUKIYAKI」は、やはりバサバサで味がなく、水団のような白い脳みそがたくさん入った辛い味噌汁でした…。あれを口に入れた観光客が日本の鋤焼を誤解しないといいのですが(苦笑)

考えてみれば名前というのは恐ろしいですね。同じ名前でも中身は全く違ったり、違う名前でも中身が同じだったり…。多くを語ったりせず、粛々と文化や精神を継承していく。「日本人はいつも黙ってる」と、ある欧米人に言われたことがありましたが、言わなくても伝わってるという日常が信じられないといった様子でした。
宏隆君が、心配する珠乃嬢に見せた心遣い…彼女の心が「痛いほどよく分かった」彼がちょっと羨ましいです、わからずだいぶ失敗してますので。
 
2. Posted by まっつ   2012年06月17日 03:51
うーん・・・
神戸ビーフ・・・
最近は、うどんとかパスタとか麺とか長細いものばかり食しているので、
肉の極み「神戸ビーフ」にはとても心惹かれました。
身体を維持するだけではなく、
心を満たす食事も人生には必要だと改めて思いました。
 
3. Posted by ユーカリ   2012年06月17日 04:25
いつも宏隆君の知識の豊富さと深さに感心させられてしまいます。
正しい理解が在るからこそ、その本質を追求し続けてゆけるのだなと感じます。
また、珠乃さんの、少しでも疑問に感じた事をすぐに訪ねる事のできる素直さ、学ぶ姿勢、見習いたいです。
お二人の経験の豊富さにも驚きですが、その経験が知識と一体となり、より深い理解に繋がり、豊かな感性が育まれていて、うらやましい限りです。自分自身の今後の人生もそのようでありたいと、また、我が子にもそんな生き方をしてもらいたいと思います。
武藝館で学ばせて頂いているおかげで、このような事がただの絵空事で終わる事なく、自身の在り方次第でそうなれると前向きにそれに向かえる事に感謝と喜びが溢れます。。。
 
4. Posted by 円山玄花   2012年06月17日 12:11
う〜ん、神戸肉とは知りませんでした。
松阪牛、近江牛と呼ぶのだから、きっと兵庫県産は神戸牛に違いないと、勝手に考えていましたが
それは、自分が生きていく上では非常に危険な考え方ですね。
あちらではコウ言っている、そちらではアア言っている、だからこちらもソウに違いない・・・
などと考えるようになってしまったら、自分が不確かな情報に踊らされていることも知らずに、
敵の思うツボにどんどん入って行くことになります。
「侮辱されていることも分からない日本人」とは、最近の稽古で出てきた言葉ですが、やはり生き残るためには自分の目で見て、確かめて、納得して行動を決定するということが重要ですね。
牛肉ひとつでこれですから。
ただ、自分で確かめるという以前に、「確かめてみよう」と思える意志や意欲があるかどうかが、
現代人には問われるような気がします。もっと自分の意志や意欲をがんがん出してこれる人が、
今の日本に増えてほしいと思います。
 
5. Posted by taka_kasga   2012年06月18日 18:01
☆ bamboo さん

>何だか日本ってすごいですね・・・

そう、実は日本という国は、途轍もなくスゴイ国なんですよ。
そして日本民族も、日本文化も、本当にすごいと思います。
ボクなんかは海外生活が長いから、その辺りはむしろ、
ずっと日本に住んで居る人たちよりも良く分かるかもしれません。

日本はものすごい国で、日本の民族もすごいチカラがある。
なのに私たちは、日本なんか全然すごくないのだと思わされてきました。
ちょっと昔にはアジアを侵略し、南京で大虐殺をし、
真珠湾を奇襲し、台湾や朝鮮半島を悪逆無道な方法で支配し、
世界に対してヒドイことばかりをしてきたのだ、などという偏向教育をされ、
敗戦を乗り切って世界に類のない見事な経済復興をすればエコノミックアニマルだと罵られ、
私たち国民が独自の長い歴史(世界一古い歴史です)や文化に誇りを持つことも、
高い民族性を持っていることも、それを認識することさえも、みーんな否定され、
実質的に現在も世界一の経済力を持っていることや、
日本の貿易が中国になんぞ全く依存していないという事実を証明する人が少なく、
反対に世界一の借金大国であるなどと、ことごとくニセ情報が横行し、
私たち日本人が一切誇りや自信を持てぬように、ウソばかりが伝えられ続けています。

それらはすべて、まるでカンボジアのバサバサのすき焼きこそが、
実は本物の日本のすき焼きであるかのように錯覚させられるウソを、
他でもない日本人ひとり一人に、コツコツと根気よく教え込まれてきたようなものです。
これからの時代は、多くの識者が毅然として本当のことを語らなくてはならないし、
誰もが本当のことを見抜くことの出来る感性を養わなくてはならないと思います。

手遅れになる前に─────────────────
 
6. Posted by taka_kasga   2012年06月18日 18:11
☆まっつさん

そう。
人生には心を満たす食事も、
心を満たす芸術も、必要ですね。
心を満たすものは、何であれその人を成長させ、
「本当のこと」を認識できる感性を養いますが、
安っぽい偽物や、程度の悪い紛い物でモノゴトを良しとしていると、
やがてその人は本当のことを認識できなくなってくるのだと思います。
グルメだ、トレンドだ、リッチだ、などということではなく、
自分が本物を識り得、本物の内容を身に付けられるためにこそ、
心を満たすものを心掛けてゆきたいものです。
 
7. Posted by taka_kasga   2012年06月18日 18:21
☆ユーカリさん

食べたいものが有るけれど、態々そこへ行って食べるのは大変だ。
やりたいことがあるけれど、とてもそんな時間が無い。
やらなくてはならないコトがあるけれど、今日はそんな時間が取れない。
学びたいことがあるけれど、今はそんな余裕が無い。
時間までに其処に行かなくてはならないけれど、忙しいから遅れても仕方がない。

・・・なぁんてコトを、私たちはごく普通にやってしまいますが、
まあ、実はそれでは何もマトモな事は出来ないんですね。
物事をきちんとやる、物事にきちんと向かう、ということはとても大変なことですが、
それを出来るかどうかではなく、それに向かおうとしたか、
誤魔化さず、言い訳をせず、自分に誠実に、物事に対して誠実に、
きちんと全力を尽くそうとしたかということで、人間は決まるような気がします。

宏隆くんや珠乃さんは、それがとても大切だという価値観や人生観を持っていて、
その意識のために、現代の若者たちとは違う、とても豊かな人生を歩んでいきます。
そして「豊かさ」とは、平穏無事で何の不自由もなく満ち足りていることではなく、
もともと危険に満ち溢れ、そこら中に落とし穴や地雷のある「人生」に、
如何に前向きに立ち向かって行くかという姿勢の中で初めて得られる、
自己という存在への正しい認識のことであると、僕は思っています。
 
8. Posted by taka_kasga   2012年06月18日 18:31
☆玄花さん

陳家溝の老師がこうやっているから、太極拳はこうに決まっている。
武術雑誌にこれが発勁だ、纏絲勁だと書いてあったから、それはきっとそうなんだ。
あの〇〇さんが言うのだから、武術的に高度な身体というのは、こうなんだ。
・・などと思っている人も、この世界には多いんでしょうね。

僕は自分が太極拳の核心である纏絲勁の奥義を知りたくて入門しましたが、
自分が想像していたものと、師父の纏絲勁とはまるで違っていました。
では、何故それが本物だと思えるかと言うと、それを科学的に検証できるからです。
僕は科学者でも技術畑でもないけれど、そんな自分でもひとつずつ科学的に検証していける。
そのようなものを、実に明確に提示して頂けるわけです。
太極武藝館の稽古では、氣だとか丹田だとか、そんなことをひと言も口にしませんね。
まだ科学で立証できないものを、太極拳のシステムやチカラの根拠にしていないんですね。

玄花さんの仰るように、自分の力で「確かめてみよう」という意志があるかどうか、
つまり、その対象が何であれ「科学的な態度で臨む」ということこそ、
本物を正しく知るために最も大切なことであると、僕は思います。

だから稽古でも、科学的に学ぼうとしていない人はダメですね。
何となく師父についてやっていれば、いつの間にか出来るようになると本気で思っている。
与えられたことを、ただマジメに繰り返していさえすれば、
きっといつの日かそれが真の功夫になると安易に考えてしまっています。
そんな人は、自分の力でそれをこなして行くからこそ、
目の前の問題が解決して、理解が与えられるのだと言うことが分からない。

近ごろの若者には、そんなのばかりが増えましたなぁ。
 
9. Posted by とび猿   2012年06月18日 22:44
以前、焼き肉屋で「神戸牛」というものを食べたことがあったのですが、
あまり美味しく思えませんでした。
奮発して刺身も食べてみたのですが、別の店で食べた地元の牛のほうが美味しく感じ、
言葉の響きに踊らされて食べてみて、その違いに、とても驚きました。
簡単な言葉に引っ掛かってしまい、とても滑稽に思いました。
 
10. Posted by 太郎冠者   2012年06月19日 00:17
つい何ヶ月か前、米国マクドナルドが、洗浄されアンモニア水で殺菌処理されたクズ肉…
通称ピンクスライム肉の使用を中止した、というニュースが話題になっていました。

一応安全上の問題はないそうですが、それでも、機械から搾り出されるピンク色の肉(?)
の映像のインパクトはかなりのものでした。
ニュース映像を観たら、さすがのアメリカ消費者も(失礼)、こんなものを食わされるのは
たまらん!と声をあげたようです。
逆を言えば、知らなければこの先もずっと食べていたともいえるわけで…。

食品の問題に限らず、我々の身の回りには、意図的に偏向させられ、
洗脳(と言っていいでしょう)しようとする情報が溢れかえっていますね。
一番の予防策は、鵜呑みにせずしっかりと自分で吟味してみることでしょうか。
何よりも、はっと気付けるかどうかが大事だと思います。
 
11. Posted by マルコビッチ   2012年06月19日 09:50
神戸ビーフと神戸牛の違い・・知りませんでした。
興味を持つ、疑問を持つ、自分で調べて知ろうとする力!
私には大分不足していることです。
日々いろいろな事にもがいていて、でも安寧を求めてそのもがいている自分を
変えようとしている自分がいる。逃げているんですよね!
その不足しているものとイコールになる気がします。
もがいている自分にもっと積極的に飛び込んでいこう!!と思いました。

先日オウム真理教の、長い間逃亡していた元信者が逮捕されましたが、
今でも教祖を信じていると言っているそうです。
マインドコントロールって凄いですね!、でも最近、何か社会全体がマインドコントロールの
ドツボにはまっているような気がしてきました。
もっと、私も含めて、人々が意識的に、本物、真実は何かを検証していく力が必要だと思います。
それは自分の所作、言動に対しても無意識でいないということと繋がると思いました。
 
12. Posted by tetsu   2012年06月19日 12:08
肉のことは全然知らず、大変勉強になりました。
また、玄花さんの仰る通り、自分の勝手な思い込みというものは怖いと感じました。
さらに、大衆向けのメディアの情報もある意味怖いですよね。
ちょっと名の知れた人が本に書いたり、TVなどでコメントしていると、
それがあたかも「本当である」と思わされている人も多数いらっしゃるでしょうから・・・。
 
13. Posted by taka_kasga   2012年06月19日 16:03
☆とび猿さん

>簡単な言葉に引っ掛かって・・

・・しまうのは、何も「神戸牛」だけのことではありません。

人は何にでも、どんなコトにでも、面白いほど簡単に引っ掛かってしまいますね。
結局のところ、安いものは高くつくし、甘い話には必ず罠が潜んでいるし、
まあ、指一本で相手をフッ飛ばす、なんて言う変な道場の謳い文句に引っ掛かって、
本気でそれを信じて入門するヤツの方が、よっぽどアホだと思いますが、
まあ、引っ掛かる輩が如何に多いか、ということでしょうね。

けれども、
本当に怖いのは、それらに引っ掛かることではなく、
「自分で創作した安いモノ」や、「自分で演出した甘い話」など、
自分でそれらを創作し、演出してまで、わざわざそれに引っ掛かろうとする、
内面の「弱い心」や「作られた無意識」です。

本物の武術というのは、それにきちんと直面し、
自己を理解しようとした人だけが真正に学ぶことができ、
本当の意味での真伝を身に付けて、後世に伝えて行けるのだと思います。
 
14. Posted by taka_kasga   2012年06月19日 16:13
☆太郎冠者さん

そういえば昔、日本でオーストラリア産の「大ネズミ」の肉を輸入している業者が居て、
いったい誰が何のために使うのかと追跡調査していったところ、
なんと・・「日本マクドナルド社」へ行き着いた、という話がありました。
これは当時、さる外資系大手食品業界の管理職から私が直接聞いた話です。
同社は Global Purchasing といって、世界で一番安い原材料の価格情報を集めて、
常に世界で一番安いところから仕入れる方法をとっていました。(たぶん今でも・・)

>一番の予防策は、鵜呑みにせずにしっかりと自分で吟味してみることでしょうか

モチ、それが一番ですが・・
たとえば、かつて第一次狂牛病の際には、イギリスは9割もの牛肉市場を失いました。
ヨーロッパのみならず、世界中が英国産の牛肉を輸入禁止にしたために、
牛肉市場は大暴落してタダ同然の価格になったのです。

しかし・・・・(*'ω'*)......ん?

そうです。果たしてこれらの「タダ同然」の「世界一安い牛肉」は・・
18万頭もの哀れなウシさんたちは、一体どこへ消えたのでしょうか?
焼却処分と言っても、それをするのに一体いくらかかるのか・・
焼いたら国じゅうに良い匂いが漂うんでしょうけど・・

先進国で英国産牛肉の輸入を禁止されても、アジアやアフリカでは規制がユルイので、
それらの国々にまず輸入させ、原産地証明が不要な「加工肉」にして先進国に送る。
そうすれば堂々と輸入して販売ができる・・という法の抜け道もあります。
加工肉は輸入をした最終国を表記すれば良いので、
この肉は「100パーセント 〇〇〇産のビーフ!」と言えるメリットもある。

そうでないことを、心から祈りますが・・・
 
15. Posted by taka_kasga   2012年06月19日 16:23
☆マルコビッチさん

>興味を持つ、疑問を持つ、自分で調べて知ろうとする力!

これは、マルコビッチさんに限らず、キョービの日本人の大方に不足していることです。
たとえば、無人島に独りで漂着したら、そのチカラがなければ生きていけないのは誰にも明らかなことですが、昨今はそんな力がなくても当たり前のようになっている。
つまりは、これは国力が著しく低下していることであり、大変なことなのです。
すべての日本人は、戦後六十五年の「永すぎた春」を、いい加減に卒業しなければなりません。
そして、その間に私たちが思い込まされた歴史や文化、わが国の現状を、もう一度見直せるような意志とチカラを養わなくてはならないと、強く感じます。
戦後の偏向教育や操作された情報に自分が騙されていたことも分からないようでは、
太極拳の真実を追究するチカラなど、出て来るわけもありませんからね。
 
16. Posted by taka_kasga   2012年06月19日 16:33
☆ tetsu さん

>それがあたかも「本当である」と思わされている人も多数・・・

そう、本当にそうなんですよね。思わされてしまっているんです。
人間社会というのは、真実がどうであるか、というよりも、
こんな風に言われているから、きっとそうなんだろう・・みたいな人が、
きっと大多数を占めているんでしょうね。
ある動物の群れが百頭居て、一頭が危険を察知してサッと走り始めると、
残りの九十九頭も一斉に同じ方に走り始める。アレと同じ感じがします。
他のヤツは何も知らないのに、誰かが走ったら、取り敢えず従いて行こうとする。
多分何かがあったんだろうな、行かなきゃ、って思うんでしょうかね。

考えてみると、これはちょっと怖ろしいことです。
こんなにコントロールをし易い国民は、世界にも珍しいのではないでしょうか。

竹島は古くから韓国の領土だ、と言って不法占拠されても、国が何もやらない。
尖閣諸島はもともと中国のモノで、沖縄はアメリカから日本に返還されるべきではなく、
正しくは中国にこそ返還されるべきモノであった、などと平然と寝言をホザいても、
国が何もせず、そんなら東京都が買ってやろうじゃないかと立ち上がる始末。
些少ながら、ボクも尖閣購入の寄付金を送らせて頂きました。

つい最近、新潟の沖合で尖閣のそれに匹敵するような大規模な油田やガス田が発見されましたが、
下手をすると、かつて鳶に油揚げで北方領土を略奪したロシアあたりが、
「あ、それもウチのものだっ!!」「日本海は昔はロシアの湖だったんだよ」
なんて、本気で言い出しかねませんね。

あのネ、その油田は、佐渡と新潟の間に位置してるんだけど・・・って(笑)
 

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