2010年10月01日

連載小説「龍の道」 第54回




 第54回 綁 架(bang-jia)(5)


 いったい、何処をどう捜せばよいのか───────

 台北の閑静な住宅地、瑞安街の一角にある老舗クリーニング店、「白月園」の地下訓練場に集合した武漢班のメンバーは皆、暗い面持ちで途方に暮れていた。

 あれから、すでに24時間以上を、徒らに過ごしている。
 捜すべき所は全て捜した。武漢班や偵察班の隊員、約八十名が総出で、不眠不休で台北中を駆け回り、どんな些細な情報でもそれを確かめることに躍起になっていたが、いずれも結果は虚しく、拉致された宏隆の居所は未だに見当も付かない。

 二十畳ほどある会議室の真ん中に置かれた大きなテーブルには、台湾全土や台北縣、市街地の詳細図、ホテル周辺の拡大図などが所狭しと広げられ、各班のチームリーダーでもある九名の選りすぐりの隊員たちが皆、困憊(こんぱい)しきった表情で周りを取り囲み、為す術もなくそれを睨んでいる。

 昨夜、宏隆に何が起こり、どのようにして拉致されていったのかは、病院にいる程の証言ですでに明らかになっているが、そこから先のことが何も判らない。
 ホテルでは、土曜日という週末の慌ただしさに加えて、銃声騒ぎまであったというのに、従業員が誰ひとりとして徐とその部下や宏隆本人の姿を目にしていないことから、おそらく蒋介石の緊急避難用に造られた、あの地下の秘密通路が使われたのだろうと推測できた。

「いったい、誰が地下通路への手引きをしたのか・・・あの通路さえ使えなければ、奴らもそう簡単にはホテルから出られなかっただろうに!」

 ホテル周辺の地図を見つめながら、若い隊員が声を荒げて言う。

「・・まあ、マネージャーか宋美齢の一族の誰かに金を握らせて、通路のことを詳しく聞き出し、途中々々にある扉の鍵を手に入れたのだろう」

 壁に靠(もた)れて、憮然として腕を組んでいた一人がそれに答えた。

「ならば、その線を手繰って、居所を吐かせてみるか・・・」

「無駄だろう、どうせ金を貰っただけの話で、奴らの居所など知るわけがない」

「しかし、奴らの足取りがこれほど全く掴めないのはどうしてだ?」

「真夜中で目撃者も居ないし、秘密の通路から暗い剣澤公園へ出て、そのまま高速にでも乗られたらもうお終いだよ。そうなると何処へ行ったか、追いかけようもない・・・」

「だが、市街地に潜伏したのではないことは確かだろう。市街(まち)の何処にも、それらしい情報がまったく無かったからな」

「すると、やはり台北市の外か、或いはすでに台北縣から外に出たか───────」

「そもそも、どうして徐が北朝鮮のスパイだと、誰も気付かなかったのだ?」

「張大人に所縁のある人の紹介で組織に入ったと言うので、疑いもしなかったのだ。
 今さら、そんなことを言っても仕方がないが・・・・」

 ───────そんなふうに、取り留めもなく、各々の想いばかりが交錯していたが、

「みんな、済まない・・・・」

 徐の話になった途端、兄貴分として慕われていた強が立ち上がり、悔しそうに唇を噛み、思い詰めた顔をして頭を下げた。強にしてみれば、可愛がっていた弟分にすっかり騙され、裏切られたのである。

「徐のことは───────奴のことは、ひたすらこの俺の責任だ。いちばん身近に居た俺が、奴の謀略に何も気付けなかった・・・だから、俺がきちんとケジメをつける。たとえ北朝鮮に潜入してでも、必ずヒロタカを捜し出して、取り返して来てやる!」

 部下でもあった徐が北朝鮮のスパイであり、宏隆の拉致を実行した首謀者と判明した今となっては、あれほど反日感情を剥き出しにしていた強も、玄洋會の一員として、流石に大きな責任を感じていた。

「お前たち・・・強も、もういい。問題はヒロタカが今、どこに居るかだ。
 それ以外のことは、無事にヒロタカを奪還してからのことだ。
 もう時間が無い───────時間が経てば経つほど救出は難しくなる。奴らはまだ台湾を出てはいない。全員で、いま吾々に出来ることは何かを、もう一度よく考えるんだ!!
 ───────宗少尉、現在考えられる状況を確認してくれ!」

 誰よりも険しい表情の陳中尉が、やや混乱気味の隊員たちに向かって厳しく言った。
 陳中尉は流石に冷静ではあるが、言葉の端々には、やはり焦りを隠せない。

「・・・・先ほどもお伝えした通り、昨夜のうちに空港と台湾空軍には連絡済みですから、空路を使って脱出することは、航空管制の問題からも、この週末には不可能です。
 私の考えでは、やはり最も考えられるのは海路で、それも民間の漁港を使って、早朝から週明けの操業に出かける漁船に紛れて逃亡する可能性が高いと思われます」

 腰の後ろに拳銃を装着した宗少尉が立ち上がり、歯切れ良く、全員にそう説明する。
 拉致の知らせを受けるとすぐ、早朝から台南の基地に出張する予定を取り止め、一旦緩急あれば直ちに玄洋會の司令室となる「白月園」に、誰よりも早く駆けつけていた。

 一見、宗少尉は平静に見えるが、心の内は大声で泣き出したいような気持ちだった。
 まるで、仲の良い弟が突然誘拐され、行方不明になったような辛さであり、狂おしいほどの悲しさなのである。
 けれども、宏隆が北朝鮮に連れ出されるよりも早く発見し、何としてもそれを阻止しなくてはならないという強い想いが、努めて気持ちを平静に保ち、涙が溢れそうになるのを懸命にこらえながら、宏隆の捜索に全神経を傾けていた。

「ふむ───────しかし、脱出経路を漁港と限定してしまって良いのだろうか?」

「はい、漁港以外の所から脱出しようとすれば、北朝鮮まで最短でも1,500kmの距離を航行できる船の大きさでは必ずレーダーに引っ掛かり、巡防署のパトロールにもすぐに発見されてしまいます。海軍の報告によれば、現在沖合に停泊している社会主義国の船舶や不審船は一隻もありませんので、待機している船に小舟で乗り付けることも考えられません」

「では、西海岸から福州や杭州に渡り、中国経由で逃亡する可能性はどうだ?」

「現在、中国と北朝鮮の関係は微妙ですから、それもちょっと考え難いものです。
 もし大陸に渡るとすれば、いったん澎湖縣(ほうこけん)など、台湾海峡に浮かぶ離島に渡ってから対岸の厦門(アモイ)に入る方法を選ぶかも知れませんが、密入出境の取り締まりが厳しい現在、大陸経由はあまりにも人目に付き易く、リスクが高いので、これも無いと考えて良いでしょう」

「確かに、宗少尉の言うとおりだな───────」

「これほど市街地を捜しても何の情報も無いのは、すでに郊外に出た証拠です。
 現在時刻は8月14日・月曜日の 0236(午前2時36分)、拉致が実行されたのは一昨日、つまり8月12日・土曜日の深夜ですから、警察や軍隊など関係機関の動きが悪くなる週末を故意に狙ったものと言えるでしょう。
 さらに、拉致実行の直後に動いては目立つので、昨日一日を潜伏と準備に充て、明けて本日、月曜日の未明に、漁船が出漁するのに紛れて出港するつもりではないでしょうか」

「海巡(海岸巡防署=日本の海上保安庁に相当)には、もう連絡を取ったか?」

「はい、拉致直後に北部、中部、南部の各巡防局に連絡済みです。張大人が昨夜のうちに行政院の役人を叩き起こして国防部に働きかけたので、今回の事件は中華民国としても見過ごすことの出来ない大きな問題となり、警察と連携して動き始めています」

「よし───────では、彼らがどの漁港に潜んでいる可能性が高いかを検討してみよう」

「漁港に潜伏して脱出を図るとしても、徐の一行が、台北からわざわざ陸路を南に移動してから船に乗るということは考えられません。西海岸からでは中国とトラブルが起こる可能性があるので避けるはずですし、また、宜蘭縣や花蓮縣からだと反対に北朝鮮へは遠くなり、陸上では距離を取るほど検問に引っ掛かる確率が増えますので、そうなると、脱出地は自ずと、台北の北、東、西に位置する漁港に限定されてきます」

「それらの漁港は、全部でどのくらいある?」

 宗少尉は、台北縣の地図をテーブルの中央に移すと、赤い丸印でマークされた各々の港を指差しながら、

「台北縣に存在する漁港は、大小を合わせると、およそ四十港ほどあります。しかし大きな漁港では海巡の監視が厳しく、かと言って余りに小さな漁港ではかえって目立ちますから、それらを外した対象は十数カ所、中でも、そこまでの移動が人目に付きにくく、かつ鄙びた場所で、さらに社会主義思想の協力者が居そうなところとなると────────」

 地図を睨みながら、漁港をひとつずつチェックしていくが、

「基隆(キールン)から2號省道を東に行った所にある、貢寮郷の澳底(おうてい)漁港はどうでしょうか。数年前になりますが、福建省から密出境してきた中国共産党・中央統戦部のスパイのアジトが見つかり、私のチームが念入りにチェックしたことがあります」

 精悍な顔をした一人の隊員が、思い出したように言う。

「文革中は鳴りを潜めていたけれど、’73年6月に活動を再開した工作部の潜入事件ね。
 でも、澳底はつい最近、中国からの武器密輸事件で警察の大規模な手入れがあったばかりだから、奴らはきっと、そこは嫌って外すはずよ」

「と、すると・・・・」

「そこから10kmほど南東へ下った、卯澳(うおう)漁港───────」

「そう言えば、卯澳漁港のある福連街は、昔から朝鮮人の多いところですね」

「これまで気にも留めませんでしたが、国家安全局が追う重要犯罪者がその辺りに逃げ込んだという話も聞いたことがあります。中共か北朝鮮のスパイだったかも知れません」

「・・いや、何年か前に、朝鮮の工作船から麻薬を受け取って台湾本土に持ち込んだ事件は、確か卯澳か澳底あたりの漁船ではなかったか?」

「そうだ、田舎のことで余り気にも留めなかったが、あれは確か卯澳だったな・・」

「そうなると、俄然、卯澳漁港が怪しくなってくるぞ!」

「台湾最東端の、あんな鄙びた所なら、潜伏も逃亡の準備も容易だ」

「隠れた協力者が、何人も居そうだな・・・」

 地図を見ながら隊員たちが口々にそう言い、確かめるように陳中尉の顔を見た。

「卯澳なら、台北市街から高速を通って、2号省道を海岸沿いにひたすら走れば、拉致された時間帯なら、途中で誰にも見咎められずに、2時間ほどで行けるな────────」

 暗夜にようやく小さな灯火を見出したような気持ちで、陳中尉が言う。

「・・・はい、そのとおりです!」

 目を輝かせて、宗少尉が答えた。

「────────よし、最優先で卯澳の情報を取れ!!
 この数週間、近辺で何か気になる事が無かったか、朝鮮人や社会主義者の不穏な動きがなかったか、卯澳船籍以外の、見慣れぬ船が入っていないか・・・・」

「了解しました!!」

 宗少尉が素早く二人の隊員に指示をすると、会議室の壁ぎわに並んだ無線機を取り上げ、大急ぎで卯澳漁港のある貢寮郷の支局に向けて通信を始めた。

「・・・ですが中尉、もうこんな時間です。漁師たちはあと2時間もしないうちに出港し始めるはずです。卯澳までの道のりは70km以上、それも狭い海岸線をクネクネと走って行くので、此処からではとても間に合いません」

 玄洋會の戦闘部隊・武漢班で実力ナンバーワンと言われる、第1班のリーダーである黄が、腕のベンラス(BENRUS=海軍特殊部隊の腕時計)を見つめながら、心配そうに言う。

「それに、もしその場所が違っていたら、もう他を捜す時間がありません・・・」

 さっきの精悍な顔つきをした隊員が言った。

「うむ・・・・・」

 陳中尉にしても、決してその漁港に宏隆が居るという確信があるわけではない。
 しかし、たとえそれがどれほど細い糸であっても、それを辿って行けそうな可能性があるのなら、何でも良いから片っ端から確認していきたい気持ちなのだ。

 だが、確かに、もう時間が無い。
 陳中尉は、今すぐにでも決断をしなければならなかった。

「ジリリリリリ・・・・・!!」

 丁度その時、壁際の赤いランプが明滅し、けたたましく会議室の電話が鳴り響いて、全員の顔にサッと緊張が走った。

「中尉、階上(うえ)から内線電話です。お姉様からですが」

「姉?・・・・何か情報でも入ったか」

 そう言いながら、受話器を受け取る。

「はい・・・・何ですって?・・・そうですか、すぐに上に行きます!」

「中尉、何ごとですか?」

 電話を受けた隊員が、心配そうに訊ねる。

「誰かが拉致に関する情報を持ってきたらしい。組織の者ではないから、ただの情報屋かもしれないが、私を名指しで直接話したいと言うので、ちょっと確かめてくる。
 ・・・宗少尉、引き続き、情報収集を頼むぞ!」

「イエッサー!」

 何か新たな情報が入ったのではないかと、ワラにも縋る思いで一階に上がり、クリーニング店の中ほどにある応接室に行くと、ひとりの男が立ったまま待っていた。

「あ、あなたは────────!!」

 扉を開けた途端、陳中尉は驚いて立ち止まり、その男の顔をまじまじと見つめた。

「その節は、大変失礼をしました・・・」

 深々と、陳中尉に向かって頭を下げたその男は、つい四、五日前、士林夜市で一悶着があった時の相手───────台湾有数の黒社会として知られる「萬国幇」の、その五堂ある組織の中でも最も勢力の大きい「火堂」の堂主(首領)、許国栄その人であった。

「貴方だとは思いも寄りませんでした。しかし、何故ここが───────?」

「ははは、蛇の道はヘビ、と言いますからな・・・・
 しかし、そんなことよりも、現在の状況について急いでご報告をする必要があります」

「現在の状況、とは・・?」

「こちらに日本から来ている少年が拉致され、捕らわれている状況についてです」

「・・・な、何故それを!?」

「後で詳しくご説明しますが、その少年は今、北朝鮮の特殊部隊によって東北部の漁港に監禁されています」

「卯澳(うおう)漁港────────ですね?」

「おお、流石にもうそこまで把握されていましたか、それなら話が早い」

「やはり────────」

「しかし、もう時間がありません。奴らは夜明けを待って、漁船に偽装した工作船に乗り込み、拉致した少年を北朝鮮へ連れて行くつもりです」

「吾々も、つい先ほどその漁港を特定したところです。しかし、卯澳の何処に捕らわれているのか、どの船で脱出するのか、まだ何も分かっていない状態です」

「ご安心下さい、それらの状況はすべて、私の部下が掴んでいます」

「えっ・・・?」

「御恩を、お返ししたかったのですよ────────
 先日の士林夜市では、有ってはならない無礼を働いたにも拘わらず、陳中尉の一存でそれを不問にして下さった。お陰で私たちは、かつて張大人にお世話になった幇主(ボス)から責任を問われずに済みました。
 しかし、私は正直に幇主に報告しました。親代わりとして育ててくれた人に嘘はつけませんからね。義理を重んじるこの世界では、本来なら厳罰に処されても仕方のないところでしたが、幇主もその話を聞くと陳中尉の態度に甚(いた)く感心し、それに免じて不問にして下さったのです。そして、御恩をいつか必ずお返しせよと、幇主に厳しく言われました」

「そうだったのですか・・・」

「少し前から、私たちの縄張りに、珍しく朝鮮系の人間が足繁く出入りするようになりました。それが矢鱈と金をちらつかせて、玄洋會のことを根掘り葉掘り訊いてくる・・・・
 これは何かあるぞ、と思っていると、今度は東北部の漁港に船を一隻、泊めておけるように算段して欲しいと言うのです。台南で修理した船を回してくるのだと・・・」

「萬国幇と玄洋會の繋がりまでは、奴らも識らなかった・・・」

「接触してきた所が私たちの一番下の組織でしたから、気が付かなかったのでしょう。
 それ以来、私たちは奴らに騙されないよう密かに監視を続けていましたが、どうも一人の日本人を拉致して行くことが目的らしい・・・・そして先日の夜市の一件の際、お傍に日本人の少年が居たことを思い出し、その少年こそが拉致の対象ではないか、と直感しました。
 御恩ある玄洋會の客人を、みすみす拉致させるわけにはいかないと、密かに協力するフリをしながら、奴らの計画の全貌をつかもうとしていたのです。こんなに早く拉致を実行に移すとは思っても居ませんでしたが・・・」

「ああ・・・ご縁というものは、何と有り難いものでしょうか」

「今こそ、御恩返しをさせて頂く時です。さあ、急いで卯澳に向かいましょう!」

「・・・しかし、卯澳までは70キロもあるので、どんなに急いでも、目的地に着くまでには夜が明けてしまいます」

「大丈夫、あっという間に到着できますよ───────」

「えっ・・・?」

「こんなこともあろうかと思って、すぐそこの森林公園の工事中の空き地にヘリコプターを用意しておきました。今すぐ飛べるようにパイロットを待機させています。
 あと7〜8人は乗れるので、隊員の方たちも同乗できます。卯澳までは、ここから直線でわずか50km足らず。ヘリで飛べば、まあ、15分というところですかな・・・」

「許さん───────ありがとうございます・・・・」

 陳中尉は、許国栄の手を取り、それを押し戴くようにして頭を下げた。

「いやいや、私は御恩返しをさせて頂いているのですよ。お礼など、とんでもない。
 さあ、どうか頭を上げて下さい・・・・」

「陳中尉!!」

 その時、宗少尉が慌ただしく応接室をノックした。

「入れっ・・!」

「陳中尉、至急お話が────────あっ、あなたは・・・!?」

「そう、萬国幇の、許国栄さんだ」

「お嬢さん・・いや、宗少尉でしたな、先日は大変失礼を致しました」

「許さんは、ヒロタカの情報を持ってきて下さったのだ」

「そのことですが・・・・」

「許さんなら大丈夫だ、ここで話しても構わない」

「はい、貢寮郷の支局員が、この夜中に慌ただしく動き回っているそれらしい人間たちを確認しました。しかし、彼らを監視している別のグループがある、というのですが・・・」

「それは、許さんの配下の人たちだ」

「え・・・?」

「急ごう、時間が無い────────説明はヘリの中でする。
 随行は、宗少尉以外に5人、精鋭を選べ!、
 各個人は第1級装備、特殊装備はグレネード・ランチャーを2基、榴弾、催涙弾、煙幕弾を用意。また、個人用とは別に長距離無線器を1台、現地には速度の出るゴムボートを2台、目立たない所にスタンバイさせておけ。随行者以外は基隆海軍基地に急行、第1班は哨戒艇で海路を卯澳へ向かい、残りは連絡を待って基地に待機すること!!」

「ヘリ・・・・?」

「────────いいから、すぐに掛かれっ!!」

「・・イ、イエッサー!!」



                                (つづく)






   【 資料:台湾・台北付近地図 】

   


taka_kasuga at 20:13コメント(10)連載小説:龍の道 | *第51回 〜 第60回 

コメント一覧

1. Posted by まっつ   2010年10月03日 00:47
予想を超える緊迫した展開にドキドキしてきました。
当に風雲急を告げる事態ですね!
嵐の空が人の心を昂らせるように、
張り詰めた鉄火場の雰囲気も我知らず昂揚を呼ぶようです。

宗少尉も駆けつけてくれたので個人的には大変嬉しいですし、
音に聞こえた武漢班の精鋭部隊の活躍にも期待大です。
そしてきっとこのままでは済まさない宏隆君も・・・
どーなるんだ、次回!(C)
刮目して待たせて頂きます!
 
2. Posted by 小周天   2010年10月04日 16:12
「龍の道」は、月に二回の掲載が本当に待ち遠しいです。
今回は特に玄洋會の中枢機関の働きが目に浮かぶようであり、
まるでアクション映画を観ているような興奮を覚えました。
また、あれだけ活躍していた宏隆くんが1回も出てこないと、何やら落ち着きません。(笑)
拉致されてから丸々二日が経過していますが、その間どうしていたかと考えてしまいます。

この小説では、異国の地、異国の人との関わり・・という感覚がずっと続いていますが、
人類に共通するスピリットや、「人間らしさ」が描かれているところが、とても好きです。
影がなければ光は際立たないと思うのですが、春日さんの小説には、光と影、
つまり陰と陽が心地よくバランスされているからこそ、こんなにも面白いのでしょうね。
次回も心待ちにしています。
 
3. Posted by 太郎冠者   2010年10月04日 20:40
かすかな情報から、敵の足取りを確かなものにしていく手腕は、さすがといわざるをえませんね。

ただ戦闘に強いというのではなく、極限の状況下でも冷静な判断を下せるという素質が、本当の戦士には必要だということでしょうか。
また、敵対してきた人間をただ打ち倒すのではない、人間としての器の大きさ。

そういったものがすべて合わさって、物事が進展していく様子が、読んでいて実にすばらしいと思いますし、読み物としてもスリリングでじつに面白いです。

さて、主人公のヒロタカくん・・・
このまま良いトコなし、ってことにはならないと思いますので(笑)
楽しみにしています。
 
4. Posted by 春日敬之   2010年10月06日 13:25
☆まっつさん

>嵐の空が人の心を昂ぶらせるように

嵐が来ることは、本当は誰も嬉しくはないし、大変な目に遭うのは分かりきっているのに、
心はそれに反して昂ぶり、これから起こることへ大きな期待さえ感じてしまいます。
人が何かに立ち向かっていくことは、斯くも本能を目覚めさせ、
普段、精神の奧深くに蔵われていたものが、沸々と湧き上がってくるのでしょうか。
「願わくは吾に七難八苦を与え給え」・・というような心を忘れてしまっては、
偉大なものは決して手に入らないのだと痛感します。
 
5. Posted by 春日敬之   2010年10月06日 13:34
☆小周天さん

>異国の地、異国の人との関わり・・・・

日本人は、なかなか外に出て行くことが苦手ですね。
外国には行ったことがない、とか、行くにしてもツアーじゃないと行かなかったり、
友達と一緒でないと行けないとか、英語を話せないというだけでオドオドしたり、
そんな若者が今でも多く居ます。

ボンダイビーチを散歩していると、一キロ以上も続く広々とした芝生の中で、
五人から十五人くらいの人が綺麗な円陣を組んで、座って話をしているのを時折見かけます。
近寄って行くと、何とこれがツアーで来た日本人。
何もこんな所で円くなって話をしなくても良いのにな、と思うのですが、
それを見かけることが一回や二回ではないので、その度に驚かされます。
「個人」という考えが主体の外国人、特に白人や中国人は決してそんなことをしません。

外国は、ツアーで行くよりも、個人で行く方が遥かに学ぶことが多いですし、
できれば長期滞在をして、ホテルではない所を自分で借りて、生活してみると良いですね。
そうすれば、「人種」というものと付き合わなくてはならない国際社会に於いて、
日本人に何が足りないのかが、嫌というほど見えてきます。

尤も、近頃は日本に大量に外国人が入ってきていて、驚かされますが。
 
6. Posted by 春日敬之   2010年10月06日 13:47
☆太郎冠者さん

>微かな情報から敵の足取りを確かなものにしていく手腕
>極限の状況下でも冷静な判断を下せるという素質

・・・・これは何れも、「戦闘の基本」というやつですね。
同じことが散手でも、ストリートファイトでも、戦場でも要求されますから。
必殺技(笑)を隠している人は、それ故にソレを隠していることが分かりますし、
コンビネーションが戦い方だと思っている人は、そのコンビネーションが見えてしまいます。
一番怖いのは、やはり「基本」が戦い方になっている人です。
基本は誰でも実態がよく見える、丸分かりのことなのに、それで来られるとどうしようもない。
基本だけで戦えることがその武術の実力であり、その門派の実力であり、個人の実力であって、
それ以外に何を加えても、それ故に武術が貧しいものになる・・・のだと思います。
太極拳の基本は、本当にスゴイですね!!
 
7. Posted by マルコビッチ   2010年10月07日 23:57
武漢班のメンバーが集合し、宏隆君の行方を追っている様子!
陳中尉や宋少尉の心中は文面から手に取るように伝わってきますし、
緊迫した様子が頭の中で映像になり、私まで緊張してしまいます。

しかし、人との繋がり、縁というものはどこかで繋がっているものですね!
また、その関わりや行動ひとつで形を変えるものなのだなと考えさせられます。
たぶん陳中尉はこの宇宙の中での人との関係性を解っていて、
士林夜市での一件を不問にしたのは、なにか直感めいたものを感じたのかもしれませんね!

宏隆君がどうしているのか心配です。
 
8. Posted by とび猿   2010年10月09日 12:28
ご縁というのは、本当に有り難いものですね。
この様な縁に恵まれるのも、陳中尉と宏隆君が、誠実に繊細に生きているからこその人徳というものなのでしょうか。
自分を省みると、折角のご縁を、自分の都合を優先して、ふいにしてしまうことが多々あります。
反省しなければなりません。
 
9. Posted by 春日敬之   2010年10月11日 16:29
☆マルコビッチさん

モノゴトはすべて「因縁」によって起こる、というのは仏陀が説く宇宙の法則ですね。
因縁というのは「因」という、モノゴトに結果が生じる直接の原因と、
その原因を助成して結果を生じさせる条件となる「縁」という間接的な原因のことですね。
また、それらの原因から生じた結果を「果」と言い、自分が過去に行った行為の全てがそれに対応した結果となって顕れてくることを「因果」と呼んでいるわけです。

誰もが繋がっている、何もかもが皆、繋がっている───────

今の子供たちに「そんなことをしたら、地獄で閻魔サマに・・・」などと言うと、
「じゃ、閻魔クンに幾ら払えば許してもらえるの?」と、笑い飛ばされるかもしれませんが、
この「縁」という考え方がとても希薄になってきた世の中では、自分を大切に思えるように、他を大切に出来る心が、どんどん失われていっているような気がします。
 
10. Posted by 春日敬之   2010年10月11日 16:35
☆とび猿さん

太極拳の稽古もまた、全ての内容が「因と縁」によって繋がっているのだと思います。
ひとつひとつを大切にしていくと、思わぬ発見や喜びに巡り会えるのは、
私たちの人生とまったく同じですね。
 

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