2009年09月18日

連載小説「龍の道」 第27回




 第27回 臺 灣 (たいわん)(6)



「日本への侵略を企んでいるのは、君もよく知っている、すぐお隣の国々だ。
 そして、彼らが侵略を計画しているのは、日本だけではない。この台湾も、東南アジアの国々も、西はカスピ海、南はインド、オーストラリア、東はハワイに至るまで、その狂ったような侵略計画は止まることを知らない・・・」

「しかし、それをきちんと知りたかったら、私たちの家族になることだ。
 そうすれば、私たちは、その詳細を君に教えることができる。
 そこには、一般日本人には知る由もない、政治的、軍事的に極秘とされるものが多く含まれている。王くんの学生とはいえ、まだ正式な家族ではない者に、それらを明かすことは出来ない。それに、知ってしまったら、君はもう吾々と同じ立場になるしかない」

「では・・その“家族”というのは、何と言いますか・・・
 そういう秘密の・・・いや、政府登録の公然の結社が、違法の武器を取って戦うというのは、人としての道には背かないのでしょうか?」

「・・・先ず、私たちが戦っている相手は、吾々だけにとっての敵ではない。
 彼らは極めて危険な全体主義国家で、内にあっては暴力的独裁、外にあっては侵略主義を露わにしている。自国こそが世界の中心であり、世界を支配するべきだという思想を持ち、自分の民族以外の、異民族の独自性や文化的な価値を決して認めようとはしない。
 彼らは、その為には人類の偉大な文化や伝統を破壊することも何とも思わないし、人間の尊厳や誇りなども全く無視して、侵略や殺戮を繰り返している」

「彼らは自国が“世界の中心”となることを実現するための経済力と巨大な軍事力を備えることに躍起になっている。その為には、資本主義の真似さえすることだろう。
 彼らの最大の目的は、この“世界”を手中にすることなのだ。かつての大英帝国や、スパイ映画に出てくる悪者の組織のようにね。それを本気で、国家の方針として進めている。
 その思想は、やがて人類そのものさえ滅ぼしかねない、自己中心的なものだ」

「そう伺っても、それが現実のことだとは、にわかには信じがたいことですが・・・」

「信じようと、信じまいと、残念ながら、それは紛れもない現実なのだ。
 君に、ひとつの資料を見せてあげよう・・・」

 張大人は傍らに立っていた男を呼んで何かを告げると、すぐに別室から一冊のファイルが運ばれてきた。そのファイルには、地図が入っていた。

「・・まず、この地図を、よく見てごらん」

「アジアの地図ですね、色がついていますが・・・・」

「何のために、その色分けが為されていると思うかね?」

「分かりません・・・
 でも・・インド、東南アジア、日本、朝鮮半島、台湾が、中国と同じ色になっています」

「では、次のページの、日本が拡大された地図はどうかな・・?」

「あ・・・日本海が “東北海” という表記になっています・・・
 朝鮮半島も、南北の区別が無く、中国と同じ色で “朝鮮省” と書かれていますが・・?」

「日本の国土は、どうなっているかね?」

「・・えっ?・・・・ と、東海省・・・?
 日本の愛知県から北陸の辺りを境に、そこから西は沖縄まで “東海省” となっていて・・
 東日本と北海道は “日本自治区” となっています・・・・」

「そのとおりだ・・・さて、君は、これをどう思うかな?」

「・・誰かの、タチの悪い悪戯でしょう。
 強い反日感情を持つ人か何かが、嫌がらせに作ったとしか思えませんが」

「いや、残念ながら、これは中共政府の外交部、つまり中国の外務省に当たる国家機関が、将来の展望として作成した “将来予測図” という名称の、極秘とされている資料のひとつなのだ」

「まさか、そんな・・・」

「彼らの侵略計画は、日本の敗戦後すぐに始まり、まず百年先までの計画をした。
 これは、まさにその国家百年の大計・・西暦2050年までに日本と台湾と朝鮮半島を、すべて中華人民共和国に併合してしまう計画の、極秘の資料地図なのだよ。
 この地図に付随する、その計画を詳細に記した極秘文書も存在している」

「次のページから長々とファイルしてあるのは、その計画概要のコピーだ。
 もし興味があるなら見ても構わないよ。中国語だがね・・・」

「しかし・・・まさか、そんなことが・・・!!」

「いや、まさかではない。その計画は、すでにもう、着々と進行している。
 “遅くとも21世紀の半ばまでには、日本などという国は消えて無くなる” ・・というのは、もはや共産党幹部の間では常識であり、確実に起こる“現実”と見なされているのだ」

「近い将来・・・21世紀の初頭には、計画通り、まず日本で与野党の逆転劇が起こり、中国や朝鮮、韓国と非常に密接な関係にある野党が、日本の政権を取ることになるだろう。
 彼らは、そのための潤沢な資金を中共政府から提供され、日本のメディアの支配をはじめとした充分な準備を整えつつある。しかし、それは “日本国” を “日本省” にするための、ほんのささやかな始まりに過ぎない・・」

「そんな・・・本当に、日本はいつか、そのような状況になるのでしょうか・・・」

「残念ながら、相手の力はあまりにも巨きい・・・
 そして、日本の国民は、それに対してあまりにも無知のままに長い時間をかけて念入りにコントロールされ続けてきている。このまま放置すれば、やがて数十年後には、チベットやウイグルで起こっているのと同じ事が、日本全土を襲う事になるだろう。
 そうなって初めて、国民はようやく自分たちの選択が誤りであったことに気が付くことだろうが・・・しかし、その時にはすでに “国家” としては手遅れの状態だ」

「チベット・・? あのヒマラヤの麓にある仏教国のことですか?」

「・・・君は、今、チベットで起こっていることを、何も知らないのかね?この問題は、イギリスでは、既にテレビの特別番組で取り上げられているが・・・
 日本人には、1950年以降、四半世紀以上にも亘って、漢民族がチベットに対して行ってきた非道な侵略行為を、ニュースや学校で、未だに何も知らされていないのだろうか?」

「チベットへは、一度行ってみたいと思っていました。
 しかし、歴史の時間には何も教わっていません。
 近ごろNHKでも、平和な仏教国というイメージで番組が放送されていましたが・・・」

「日本の教育や報道は、噂どおりの、偏向したものであるらしい・・・・
 チベットは “歴史的に観て紛れもなく中国の不可分の一部である“ などという勝手な理屈で1951年に中国軍が占領し、’59年にはそれに反発したチベット人が武装蜂起したが、中国軍の猛反撃で容易に弾圧され、ダライラマ14世は多数の難民と共にインドに脱出し、亡命政府を立てた。
 その後、文化大革命からは更に弾圧が厳しくなり、チベット固有の民族性、文化、宗教などの独自性がどんどん奪われ、人権などが全く無視された極悪非道な行為が一般市民に対して繰り返され、加えて漢民族の大量移入によって、純粋なチベット人の血液まで根絶させようとしている・・・」

「恥ずかしいことですが・・・・
 僕は、そんなことが起こっていることを、全然知りませんでした」

「チベットへの侵略と弾圧は、今でも継続して、公然と行われている。
 チベットは、すでに “中華人民共和国チベット自治区” であり、ポタラ宮のあるチベットのラサ(Lhasa)も、今では “拉薩” と、漢字で書かれる。
 チベット僧が五体投地の行をする目前で、無礼にも中国人観光客が写真を撮りまくる。
 もし、他の僧がそれを咎めたら、すぐに中国の憲兵が来て、逮捕して連行されてしまう。
 ヒマラヤを越えて脱出しようとする者は、たとえ子供でも、国境警備隊がライフルで標的のように撃ち殺してしまう・・・」

「近頃は、チベットのすぐ下に位置するインド北部まで自分たちの領土だと言い始めたし、日本の沖縄も、元々は中国のものだった、などと言い張っている。
 チベットと同じことが、君の国で起こったら、どうするかね・・・?」

「そんなこと・・日本人として、絶対に許せません!!」

「では、実際にどうする? 独りで、武器を取って、闘うかね・・?」

「そうなったら・・・敵わぬまでも、一矢を報いるために、闘います。
 たとえそれが “犬死に” だと言われても・・・」

「そう、それは “犬死に” に過ぎない。君ひとりが死んでも、何も変わらない。
 しかし、だからといって、それに抵抗することを放棄してしまえば、そこには人間としてもっと悲惨で、もっと屈辱的な結果が待ち受けている・・・
 私たちは、それに対して、決して屈せず、戦い抜くことを選んだ。
 私たちの自由と尊厳は、私たちの手で守らなくてはならないし、たとえ小さな力であっても、決して屈服をしない意志を世界に示し続けることが大切なのだ」

「王先生は・・・王老師も、同じように戦ってこられたのでしょうか?」

「そうだ・・王くんは人間としても実に豊かで高潔な魂を持つ、私たちが誇る同志だ。
 王くんの家族の話は、すでに君も、聞いているはずだが・・・」

「いえ・・お訊きしても、あまり詳しく説明されようとはしませんでした」

「・・・文化大革命の時に、王くんは、ただ伝統武術を真摯に学んでいる、というだけで、考えられぬようなひどい目に逢わされた。
 彼だけではない、全ての武術家、文化人、知識人、科学者たちは、皆そのような目に逢わされたのだ。文革の難を逃れる為に、武術家を辞め、武術を学んだことを隠して、一般人を装って過ごす人間も多かった」

「王くんは、その不条理を前にして人間として当然の抵抗をしたが、そのために王くんの家族は、ご両親も、当時三歳になったばかりの息子も、美しい奥さんも、容赦なく公衆の面前で辱められた上で、皆殺しにされた・・・
 家族だけではない、王くんに老荘哲学や禅を教えていた教師も、ただそれだけの理由で同じように捕らえられ、如何なる人間としての権利も無視され、生き埋めにして殺された」

「そして、その後で、彼ら文革の独裁者たちが、何をしたと思うかね・・・?
 彼らは、弾圧への屈従と引き換えに生き延びた者たちに、その家族や友人たちに土をかけて生き埋めにすることを強い、更にその土地の上に自分たちの畑を作るように命じた・・・
 『人間の体は作物の肥やしに最も適している』と、毛沢東が言った言葉を、そのまま実行させたのだ・・」

「王くんは、殺された家族を弔うためにも、生命をかけて彼らに復讐し戦うことを決意し、同じ志を持つ人たちと共に抵抗運動をし、ある時、共産党幹部の命を狙ったが、どこから洩れたか、その計画が発覚して追われる身となってしまい、その追捕(ついぶ)の手を逃れながら必死に逃亡する最中に、偶然私たちの組織と縁を持つことになったのだ・・・」


 ・・・・宏隆は、言葉も出なかった。

 あまりにも、自分は何も知らない・・世間知らずも甚だしい、と思えた。
 生涯をかけて中国武術を学びたいと言っておきながら、その中国の現状について何も知らぬに等しい自分を、宏隆は恥じた。

 自分が想像していた王老師の過去も、いま、張大人の話を聞けば、まったくそのイメージが違っていた。

 それに、学校では、そんなことを何ひとつ教わったことが無い・・・・
 学校などに頼らず、もっときちんと歴史を勉強しなければならない、と思える。
 そして、何が人をそのように侵略や殺戮に駆り立て、また、それに対する復讐も重ねて行かねばならないのか・・・そのこともまた、学んでいかねばならない。

 ・・・そう思っていると、張大人が付け加えて、こう言った。

「文革のときの、王くんの話を聞いて、ずいぶん驚いているようだが・・
 君は、つい最近の、君が生まれた祖国の、日本国の歴史を理解しているだろうか?
 アメリカから日本が受けた被害は、かつて世界に例を見ないものだった・・・」

 張大人は、日本人である宏隆よりも、はるかに日本の歴史に詳しかった。
 それは、宏隆が学校の歴史の時間に学んだような、年代ごとのダイジェストではなく、まさに、激動の歴史の中で生き抜いてきた人の、歴史を体験した重みを持つ言葉であった。


                              (つづく)





  
 

taka_kasuga at 19:53コメント(5)連載小説:龍の道 | *第21回 〜 第30回 

コメント一覧

1. Posted by トヨ   2009年09月19日 01:02
東海省に・・・日本自治区・・・?
全くふざけた戯言をぬかしてくださるものですね、
“世界の中心”国さんは。

王老師の過去も含め、読んでいて体中の血液が沸騰して、
暴れまわりそうになって大変でした^^;

こんなことは、絶対に許してはいけません。
そのためにはまず、日本人ひとりひとりが学び、自らを磨いて、
一人の人間としてちゃんと立って行かなければならない
と思います。

無意識に生き、他者に扇動されてしまう群集の一部に
なるのだけは御免ですから。

さーて、練習練習。
 
2. Posted by とび猿   2009年09月22日 12:39
東海省・日本自治区・・・
この地図は衝撃的です。


>漢民族の大量移入によって、純粋なチベット人の血液まで根絶させようとしている・・・

いつの間にか日本でも、一般人があまり疑問に思わないような方法や速度で、
現実に、着実に進行しつつあるように思えてきます。
このままでは、日本が無くなってしまうという危機感を感じます。
その様な事にならない為にも、一人一人が自覚を持ち、しっかりと生きていかなければ。
 
3. Posted by まっつ   2009年09月23日 00:53
うーむ・・・何とした事でしょう!

彼の国は血で血を洗う歴史を経てきた大陸国家なので、
このようなシナリオが描かれていたとしても、
ちっとも不思議では無いですね・・・
米国も然り、鉄血を信仰する国家の本能であるとも感じます。

むしろ嘆くべきは、
唯々諾々と骨抜きにされている日本こそが問題でしょうか・・・
おーい、どーなってしまううんだ、日本!(C)
次回も期待してます!
 
4. Posted by 春日敬之   2009年09月28日 16:39
☆皆さま
毎度、コメントをオオキニです。

アメリカに叩かれた日本を、絶好のチャンスとばかりに侵略併合のターゲットとした脅威の隣人たちは、コツコツとその野望を段階的に達成しつつあります。

衝撃的なのは、その地図だけではありません。

武藝館のある東海地方では、ド派手なパチンコ屋のチェーン店がそこら中に出来て、周囲を圧倒する巨大電光掲示板で「毎月4の付く日はヨンさまの日!」『毎月16日は生誕記念日!!』なんて大々的に表示しているそーな。

ヨンさまは分かるけど、生誕記念日?・・・うーん、天皇誕生日は23日だし、キリストは25日、お釈迦様は8日。いったい誰の生誕記念かいな、と思って調べてみたら、何と、ヨン様ならぬ、あのキム・ジョンさまのお誕生日が16日でした・・・ア然!!

もし日本人がコリアにパチンコ屋出して、「毎月23日は天皇生誕日、大サービスしまっせ!」なんてやったら、また日本大使館前でエラいコトになるだろーに・・・ね。
でも、日本人は何も言わない。日本人を拉致したジョンさまの御生誕記念日を、まさか祝っているワケじゃないだろうけど、気にしてないのか、出玉がイイのが嬉しいのか・・・
 
5. Posted by 春日敬之   2009年09月28日 16:55
ま、パチンコ屋は某大手スーパーのあるところには必ずと言って良いほどあるし、その跡地にも出来る。チョコクロのカフェもこのパチンコ屋の経営で、勿論そのスーパーにもある。
日本人は何も気にせず、せっせと将軍サマのミサイル資金源、拉致活動資金に貢献してオル、ということでしょうか。

そのジョンさまへのパチンコ献金は、実に年間600億円というからすごいっ!! 
そして、全国の各管区警察局長の天下り先が ”すべて” パチンコ業界、というのも日本人がほとんど知らない真実。いやはや・・・

オーストラリアで報道された鳩山首相夫人の挨拶の仕方が、韓国人によく見られる胸に手を当てた挨拶の仕方なのには驚かされましたし、詐欺罪で逮捕歴のある副大臣の内縁の夫が日本赤軍幹部というのも、怖い話です・・・
そういえば、かつて北鮮拉致問題を否定していた土井たか子(李 高順)委員長はじめ、社会党の幹部たちが ”パチンコ・ソーシャリスト” などという名で、米国の「タイム」紙にさんざん非難されていたことを思い出しました。
例によって、日本ではあまり報道されなかったみたいですけど。

民主党が実質社会党であることを、日本以外の国、特に欧米人たちは良く知っています。
 

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