2009年01月20日
美し店・美し宿 「箱根ハイランドホテル」
さて、「美し店・美し宿」の第一回目は、昨年秋のスタッフ旅行のお話から始めることにいたしましょう。
前回の宮古島から約2年ぶりとなったスタッフ旅行は、師父のお勧めで、箱根の仙石原にある「箱根ハイランドホテル」に行くことになりました。

このホテルは箱根の自然の中にあって、もと三井グループ総帥の男爵・団琢磨の別荘を生かして造られた、フランス料理の美味しい、静かに寛げる宿として、「極上のホテル」という本をはじめ、様々なところで紹介されている、なかなか人気の高いホテルです。
ここは、太極武藝館からクルマで2時間もかからない所にある天然温泉付きリゾートホテルとあって、師父もご多忙の中、寸暇を見つけては時おり利用されることもあるといいます。
今回は、師父と玄花后嗣のご案内で、内山事務局長以下スタッフ6名が同行し、総勢8名という大所帯での訪問となりました。
箱根ハイランドホテルは、ヨーロッパ調の客室に加えて、野鳥が飛び交う1万5千坪の敷地を誇る庭園の林の中に、ゆったりとした間取りの北欧風ウッディ・コテージが点在しています。
スタッフは皆、このコテージを予約していましたが、広々としたテラスもあって、それが他のコテージからは見えない造りになっているので、本当にゆったりと寛ぐことができ、庭園ではペットを連れて来たお客さんが散歩していたりもしています。
荷解きの後は、さっそく大部屋に集まり、師父が持参されたよく冷えたシャンパンで乾杯!!
師父は、予めシャンパングラスをホテルに頼んでおかれた上、オツマミまで用意してくださっており、いつもながら、スタッフに対する細やかな心遣いを感じます。
2ベッドルームの4人部屋のロッジは、8人全員が集まっても充分な広さのリビングやテラスがあり、すっかり気に入ってしまいました。
このホテルの自慢は、何といっても客室の蛇口からそのまま頂ける「天然水」でしょうか。
近くの金時山の良質な天然の伏流水が敷地内からこんこんと湧き出るという利点を活かして、料理はもちろんのこと、客室の水道、風呂上がりのラウンジまで、全てがそのままゴクゴク飲める美味しい水なのです。金時山とは、つまり坂田のキントキ、あの足柄山のキンタローさんの居たところなのですね。
また、もうひとつの自慢は、フランスが誇るミシュランの三つ星レストラン「トロワグロ」で修行を重ねた、料理長・山上シェフが創る「フレンチ・ジャポネ」のお料理です。
箱根で生まれ育ったという山上シェフならではの、地元の旬の素材を使った中々のお味だということで、私たちは何週間も前からそれを楽しみにしていました。
食前のシャンパンですっかり身も心も寛ぎ、部屋でディナーに相応しい服装に着替えて、
『イザ! 思う存分食べるぞー! オーッ!』・・・と、意気を揚げ、秋風の吹く庭園を通り抜けて、ホテル内のレストラン「ラ・フォーレ」へ向かいます。
師父は、パリから400キロ離れたロアンヌにある、トロワグロの本店にも何度か行かれたことがあり、料理の味わいや、食に対する考え方にも深く共感されたと言います。
そのトロワグロで修行された料理長の創作とはどのようなものだろうか・・・そう考えるだけでも胸が高まってきます。
下の写真はその日のメニューですが、私たちが予約したのは「シェフスペシャル」という、
シェフお勧めの特別コースでした。


魚や肉の料理は、レストランからも見える特製の薪火(まきび)の竈(かまど)で、ナラやクヌギの木を使って焼かれるので、素材の良さがきちんと味わえる、とても香ばしいものでした。
私たちの席はレストランの中央に設けられた8人用のテーブルでしたが、そこからも、注文した料理を薪の火で焼いているのがガラス越しに見えます。
魚は地元沼津の朝市から仕入れてきたもの。お肉も冨士高原の牛肉・・
進んで地元の食材を使おうというシェフの意気込みが感じられて、食べる側の心を捉えます。

ウチの師父がリピーターになるくらいなのだから、このホテルにはワインの品揃えは充分なはずだ、と誰もが思っていました。(笑)
レストラン「ラ・フォーレ(La forêt)」では、フランスの名だたるワインはもちろん、その日の料理の素材によっては、わざわざ山梨や北海道の名醸ワインまで取りそろえてくれる計らいがあることも、その魅力でしょうか。
因みに、「アルブランカ・ビニャール・イセハラ」という、山梨県の伊勢原にある単一畑で収穫された甲州種のみを原料に醸造された貴重なワインなどもストックされていました。
私たちの注文した肉料理は各々が違って、ワイン選びは難しかったのですが、師父はソムリエさんと共にワインリストを眺めながら、ああだ、こうだと、楽しそうにワインを選ばれ、
『それじゃあ、これなんかどうでしょうかね・・』
『はい、お目が高いですね、それで結構かと思います』
・・などと、自分たちだけで来たらまるでチンプンカンプンのところを、本当に美味しいワインを何種類も選んでいただき、料理とマッチしたその味わいを充分に堪能することが出来ました。
デザートの一番人気は「クレープのオレンジ・ソース・フランベ」でした。
これは、ワゴンサービスで運ばれてきたオレンジの皮を、その場で長〜く剥いて・・

・・リキュールをかけて火を点け、滴り落ちたジュースをソースにして、フライパンのクレープに掛け、そのまま温めて供されるものです。
ギャルソンの方が気を利かせて照明を少し落としてくれたので、炎がより美しく見えました。

・・今回のような、ちょっとした休日の食事には、とても嬉しい演出です。
健啖な師父は、いつもなら、さらに食事の後に甘いワインとチーズを賞味されるのですが、
私たちは、久々のフルコースで、もうお腹が一杯・・♪ 幸せ一杯、腹一杯、っと・・・
もう、存分にハイランドホテルのディナーを堪能することができました。
ごちそうさま〜!!
* * *
・・・さてさて、せっかく箱根に来たのですから、ぜひとも「温泉」を堪能しなければ!!
食後のお風呂は、これまた、気持ちが良い!・・の、ひと言でした。
・・と、簡単に書きましたが、色々な意味で、本当に気持ちがよいお風呂というのは、
実際には、旅先ではなかなか巡り合えないものなのです。

ここのお風呂は、箱根の山で湧いている天然温泉を引いたものですが、まずまず泉質も良く、広々とした内風呂には小さなジャグジーやサウナも付き、外には露天風呂も設けられていて、
気持ち良く寛げます。
それに、当日は満室だったのに、入浴している人はチラホラで、お風呂が空いています。
混んでいるお風呂は、寛ぎたいときにはとても嫌なものですが、師父も、このホテルに何度泊まっても、そんなに遅い時間でもないのに、いつもお風呂が空いていると仰っていました。
同じ箱根にある「冨士屋ホテル」のように、部屋の浴室にも温泉が出る、というわけではないので、込んでいても不思議ではないのですが・・・何かの偶然でしょうか。
しかし、特筆すべきは、その「洗い場」です。
ふつう、温泉の洗い場というのは、隣の人のお湯がはねたり、先に使った人のシャンプーで足もとがヌルヌルしていたり、下手をするとシャンプーの宣伝文句や、売店での販売価格が書かれたプレートがズラリと並んでいたりすることさえあるのですが、ここは、そもそも洗い場自体が一人分ずつ独立していて、高めの壁で囲われているのです。これはグッド・アイディーア。
これなら、お互いに隣の人を気にせずに存分に洗え、ハダカで他人と一緒に風呂に入る習慣の無い外国人も寛げることでしょう。
椅子も高めのものが置かれているので、お年寄りでも立ったり座ったりが楽でしょうし、シャワーの向きもマルチに動くので髪が洗いやすく、もちろん余分な宣伝も注意書きもなく、至ってシンプルな設計になっていました。
それにしても、係の方がよほどこまめに洗い場をチェックしているのでしょうか、いつ入っても清潔で気持ち良く使えるその「洗い場」には、本当に感心しました。
私たちは比較的遅くお風呂に行ったので、ふつうは汚れているはずなのですが・・?
こんな所にこそ、そのホテルの「本音」が出るのでしょうね。
客の立場に立った、細やかな心遣いを大切にしていることが感じられます。
さて、箱根ハイランドホテルは、ほとんどすべてに於いて、シンプルながらも満ち足りた時間を与えてくれる、暢びりと寛げるホテルでしたが、決して宣伝料を頂いているわけではありませんので(笑)、賞めてばかりではなく、敢えてアラを探し、重箱の隅をつついて苦言を差し上げるとすれば・・・
ひとつには、私たちの車が玄関前に到着した時に「出迎え」が無かったということです。
・・しかし、まあ、これはノンビリとした山のホテルで、食事だけに来る人も多い所なのだから、と思い直せばそれほど気にもなりませんが、あるレベル以上のサービスに慣れている人にとっては、ちょいと拍子抜けするような感があるかもしれません。
そう言えば、同じような日光の山の中にある名宿「中禅寺・金谷ホテル」では、見かけは寂しいほどひっそりとしているのに、到着と同時にスタッフが飛んで来てくれましたし、帰るときなどはわざわざ副支配人が出てきて、師父のクルマに荷物を運んで下さったほどです。
日本の旅館でも、まともな所では到着時に従業員が駆けつけてきますね。
宿泊する側としては、さて到着はしたものの、この荷物をどうしようか、部屋毎に分けなくてはいけないな・・いや、チェックインが先なのかな?・・などとアレコレ考えているので、早い時期からの対応が欲しいところです。
宿泊客が一度フロントに行って到着を告げ、もう一度クルマに戻って荷物を出す、というのは客にとって二度手間であり、ましてや玄関先にクルマを停めていれば、他の到着客への迷惑なども気になります。後から従業員がカートに荷物を乗せて部屋に案内してくれるのですから、どうせなら早い時期に対応を始めて頂ければ、もっと気持ちが良いと思います。
もうひとつは、お風呂上がりに寛げるラウンジです。
金時山の名水も頂ける、広々とした素敵なラウンジがあるのはとても結構なことなのですが、夜にそこへ行くと、お風呂上がりの身体に、そのままホテル備え付けの薄手のパジャマやローブをまとった若い女性が、その恰好で気持ちよさそうに寝そべっていたりします。
これは、もちろん客の側の問題であり、欧米では考えられないようなマナー違反で、日本人としても恥ずかしいことです。
もしそんな恰好を外国から来た旅行者が見たら・・・目のやり処が無くなってしまうだけではなく、二度とこのホテルには来ないと思います。少なくとも旧男爵邸から始まったハイランドホテルには相応しくない事なので、何とかしなくてはなりません。
部屋ごとに置かれているホテルの案内書には、きちんと「パジャマやローブではお風呂に行かないで下さい」と書かれているのですが、お風呂と直結している宿泊棟からは、夜であれば、つい気軽にその恰好で行きたくなる不心得な若い人も居るのでしょう。
例えば、部屋にマナーとしての厳重注意事項として書いておく、エレベーターやお風呂へのアプローチにも立て看板で注意書きを書く、ラウンジにはできるだけ従業員を配置する・・等々、それを徹底して解決する工夫をして頂けると、とても嬉しく思います。
また、些細なことではありますが、ついでにもうひとつ・・・
男性用の露天風呂への出入り口が、風も無いのにヒューヒューとうるさく鳴り続けています。
露天風呂は小さいながらも心地よく、浴槽への階段もよく配慮されたものですが、気持ち良く浸かっていると、その出入り口の風の音が耳に付いて、とてもうるさく感じられます。
因みに、内風呂に入っている限りでは、それはあまり気になりませんでした。扉がきちんと閉まらないのか、隙間が微妙に空いているのかは分かりませんが、あの音が無くなれば、リゾートホテルの循環式の温泉としては満点を付けられるレベルであると思います。
さて、このホテルにまた行きたくなるか、と問われれば・・・
参加したスタッフ全員が、「またいつか必ず訪れたい」と答えました。
四季折々の表情が豊かな箱根で、気軽に美味しいフレンチとワインを堪能し、良質の温泉で身体を癒し、森の中のロッジで野鳥の声に目覚め、木漏れ陽の差し込む広々としたテラスで、新鮮な山の空気を吸いながら、朝の珈琲をいただく・・・
長期滞在客は、シェフに日々のメニューを相談することもでき、同じ食事に飽きない、美味しい日々を過ごせる工夫もされているそうです。これなら何日でも泊まっていられますね。
先のささやかな苦言を考慮に入れても、このホテルを訪問する価値は充分にあると思います。
(了)

前回の宮古島から約2年ぶりとなったスタッフ旅行は、師父のお勧めで、箱根の仙石原にある「箱根ハイランドホテル」に行くことになりました。

このホテルは箱根の自然の中にあって、もと三井グループ総帥の男爵・団琢磨の別荘を生かして造られた、フランス料理の美味しい、静かに寛げる宿として、「極上のホテル」という本をはじめ、様々なところで紹介されている、なかなか人気の高いホテルです。
ここは、太極武藝館からクルマで2時間もかからない所にある天然温泉付きリゾートホテルとあって、師父もご多忙の中、寸暇を見つけては時おり利用されることもあるといいます。
今回は、師父と玄花后嗣のご案内で、内山事務局長以下スタッフ6名が同行し、総勢8名という大所帯での訪問となりました。
箱根ハイランドホテルは、ヨーロッパ調の客室に加えて、野鳥が飛び交う1万5千坪の敷地を誇る庭園の林の中に、ゆったりとした間取りの北欧風ウッディ・コテージが点在しています。
スタッフは皆、このコテージを予約していましたが、広々としたテラスもあって、それが他のコテージからは見えない造りになっているので、本当にゆったりと寛ぐことができ、庭園ではペットを連れて来たお客さんが散歩していたりもしています。
荷解きの後は、さっそく大部屋に集まり、師父が持参されたよく冷えたシャンパンで乾杯!!
師父は、予めシャンパングラスをホテルに頼んでおかれた上、オツマミまで用意してくださっており、いつもながら、スタッフに対する細やかな心遣いを感じます。
2ベッドルームの4人部屋のロッジは、8人全員が集まっても充分な広さのリビングやテラスがあり、すっかり気に入ってしまいました。
このホテルの自慢は、何といっても客室の蛇口からそのまま頂ける「天然水」でしょうか。
近くの金時山の良質な天然の伏流水が敷地内からこんこんと湧き出るという利点を活かして、料理はもちろんのこと、客室の水道、風呂上がりのラウンジまで、全てがそのままゴクゴク飲める美味しい水なのです。金時山とは、つまり坂田のキントキ、あの足柄山のキンタローさんの居たところなのですね。
また、もうひとつの自慢は、フランスが誇るミシュランの三つ星レストラン「トロワグロ」で修行を重ねた、料理長・山上シェフが創る「フレンチ・ジャポネ」のお料理です。
箱根で生まれ育ったという山上シェフならではの、地元の旬の素材を使った中々のお味だということで、私たちは何週間も前からそれを楽しみにしていました。
食前のシャンパンですっかり身も心も寛ぎ、部屋でディナーに相応しい服装に着替えて、
『イザ! 思う存分食べるぞー! オーッ!』・・・と、意気を揚げ、秋風の吹く庭園を通り抜けて、ホテル内のレストラン「ラ・フォーレ」へ向かいます。
師父は、パリから400キロ離れたロアンヌにある、トロワグロの本店にも何度か行かれたことがあり、料理の味わいや、食に対する考え方にも深く共感されたと言います。
そのトロワグロで修行された料理長の創作とはどのようなものだろうか・・・そう考えるだけでも胸が高まってきます。
下の写真はその日のメニューですが、私たちが予約したのは「シェフスペシャル」という、
シェフお勧めの特別コースでした。


魚や肉の料理は、レストランからも見える特製の薪火(まきび)の竈(かまど)で、ナラやクヌギの木を使って焼かれるので、素材の良さがきちんと味わえる、とても香ばしいものでした。
私たちの席はレストランの中央に設けられた8人用のテーブルでしたが、そこからも、注文した料理を薪の火で焼いているのがガラス越しに見えます。
魚は地元沼津の朝市から仕入れてきたもの。お肉も冨士高原の牛肉・・
進んで地元の食材を使おうというシェフの意気込みが感じられて、食べる側の心を捉えます。

ウチの師父がリピーターになるくらいなのだから、このホテルにはワインの品揃えは充分なはずだ、と誰もが思っていました。(笑)
レストラン「ラ・フォーレ(La forêt)」では、フランスの名だたるワインはもちろん、その日の料理の素材によっては、わざわざ山梨や北海道の名醸ワインまで取りそろえてくれる計らいがあることも、その魅力でしょうか。
因みに、「アルブランカ・ビニャール・イセハラ」という、山梨県の伊勢原にある単一畑で収穫された甲州種のみを原料に醸造された貴重なワインなどもストックされていました。
私たちの注文した肉料理は各々が違って、ワイン選びは難しかったのですが、師父はソムリエさんと共にワインリストを眺めながら、ああだ、こうだと、楽しそうにワインを選ばれ、
『それじゃあ、これなんかどうでしょうかね・・』
『はい、お目が高いですね、それで結構かと思います』
・・などと、自分たちだけで来たらまるでチンプンカンプンのところを、本当に美味しいワインを何種類も選んでいただき、料理とマッチしたその味わいを充分に堪能することが出来ました。
デザートの一番人気は「クレープのオレンジ・ソース・フランベ」でした。
これは、ワゴンサービスで運ばれてきたオレンジの皮を、その場で長〜く剥いて・・

・・リキュールをかけて火を点け、滴り落ちたジュースをソースにして、フライパンのクレープに掛け、そのまま温めて供されるものです。
ギャルソンの方が気を利かせて照明を少し落としてくれたので、炎がより美しく見えました。

・・今回のような、ちょっとした休日の食事には、とても嬉しい演出です。
健啖な師父は、いつもなら、さらに食事の後に甘いワインとチーズを賞味されるのですが、
私たちは、久々のフルコースで、もうお腹が一杯・・♪ 幸せ一杯、腹一杯、っと・・・
もう、存分にハイランドホテルのディナーを堪能することができました。
ごちそうさま〜!!
* * *
・・・さてさて、せっかく箱根に来たのですから、ぜひとも「温泉」を堪能しなければ!!
食後のお風呂は、これまた、気持ちが良い!・・の、ひと言でした。
・・と、簡単に書きましたが、色々な意味で、本当に気持ちがよいお風呂というのは、
実際には、旅先ではなかなか巡り合えないものなのです。

ここのお風呂は、箱根の山で湧いている天然温泉を引いたものですが、まずまず泉質も良く、広々とした内風呂には小さなジャグジーやサウナも付き、外には露天風呂も設けられていて、
気持ち良く寛げます。
それに、当日は満室だったのに、入浴している人はチラホラで、お風呂が空いています。
混んでいるお風呂は、寛ぎたいときにはとても嫌なものですが、師父も、このホテルに何度泊まっても、そんなに遅い時間でもないのに、いつもお風呂が空いていると仰っていました。
同じ箱根にある「冨士屋ホテル」のように、部屋の浴室にも温泉が出る、というわけではないので、込んでいても不思議ではないのですが・・・何かの偶然でしょうか。
しかし、特筆すべきは、その「洗い場」です。
ふつう、温泉の洗い場というのは、隣の人のお湯がはねたり、先に使った人のシャンプーで足もとがヌルヌルしていたり、下手をするとシャンプーの宣伝文句や、売店での販売価格が書かれたプレートがズラリと並んでいたりすることさえあるのですが、ここは、そもそも洗い場自体が一人分ずつ独立していて、高めの壁で囲われているのです。これはグッド・アイディーア。
これなら、お互いに隣の人を気にせずに存分に洗え、ハダカで他人と一緒に風呂に入る習慣の無い外国人も寛げることでしょう。
椅子も高めのものが置かれているので、お年寄りでも立ったり座ったりが楽でしょうし、シャワーの向きもマルチに動くので髪が洗いやすく、もちろん余分な宣伝も注意書きもなく、至ってシンプルな設計になっていました。
それにしても、係の方がよほどこまめに洗い場をチェックしているのでしょうか、いつ入っても清潔で気持ち良く使えるその「洗い場」には、本当に感心しました。
私たちは比較的遅くお風呂に行ったので、ふつうは汚れているはずなのですが・・?
こんな所にこそ、そのホテルの「本音」が出るのでしょうね。
客の立場に立った、細やかな心遣いを大切にしていることが感じられます。
さて、箱根ハイランドホテルは、ほとんどすべてに於いて、シンプルながらも満ち足りた時間を与えてくれる、暢びりと寛げるホテルでしたが、決して宣伝料を頂いているわけではありませんので(笑)、賞めてばかりではなく、敢えてアラを探し、重箱の隅をつついて苦言を差し上げるとすれば・・・
ひとつには、私たちの車が玄関前に到着した時に「出迎え」が無かったということです。
・・しかし、まあ、これはノンビリとした山のホテルで、食事だけに来る人も多い所なのだから、と思い直せばそれほど気にもなりませんが、あるレベル以上のサービスに慣れている人にとっては、ちょいと拍子抜けするような感があるかもしれません。
そう言えば、同じような日光の山の中にある名宿「中禅寺・金谷ホテル」では、見かけは寂しいほどひっそりとしているのに、到着と同時にスタッフが飛んで来てくれましたし、帰るときなどはわざわざ副支配人が出てきて、師父のクルマに荷物を運んで下さったほどです。
日本の旅館でも、まともな所では到着時に従業員が駆けつけてきますね。
宿泊する側としては、さて到着はしたものの、この荷物をどうしようか、部屋毎に分けなくてはいけないな・・いや、チェックインが先なのかな?・・などとアレコレ考えているので、早い時期からの対応が欲しいところです。
宿泊客が一度フロントに行って到着を告げ、もう一度クルマに戻って荷物を出す、というのは客にとって二度手間であり、ましてや玄関先にクルマを停めていれば、他の到着客への迷惑なども気になります。後から従業員がカートに荷物を乗せて部屋に案内してくれるのですから、どうせなら早い時期に対応を始めて頂ければ、もっと気持ちが良いと思います。
もうひとつは、お風呂上がりに寛げるラウンジです。
金時山の名水も頂ける、広々とした素敵なラウンジがあるのはとても結構なことなのですが、夜にそこへ行くと、お風呂上がりの身体に、そのままホテル備え付けの薄手のパジャマやローブをまとった若い女性が、その恰好で気持ちよさそうに寝そべっていたりします。
これは、もちろん客の側の問題であり、欧米では考えられないようなマナー違反で、日本人としても恥ずかしいことです。
もしそんな恰好を外国から来た旅行者が見たら・・・目のやり処が無くなってしまうだけではなく、二度とこのホテルには来ないと思います。少なくとも旧男爵邸から始まったハイランドホテルには相応しくない事なので、何とかしなくてはなりません。
部屋ごとに置かれているホテルの案内書には、きちんと「パジャマやローブではお風呂に行かないで下さい」と書かれているのですが、お風呂と直結している宿泊棟からは、夜であれば、つい気軽にその恰好で行きたくなる不心得な若い人も居るのでしょう。
例えば、部屋にマナーとしての厳重注意事項として書いておく、エレベーターやお風呂へのアプローチにも立て看板で注意書きを書く、ラウンジにはできるだけ従業員を配置する・・等々、それを徹底して解決する工夫をして頂けると、とても嬉しく思います。
また、些細なことではありますが、ついでにもうひとつ・・・
男性用の露天風呂への出入り口が、風も無いのにヒューヒューとうるさく鳴り続けています。
露天風呂は小さいながらも心地よく、浴槽への階段もよく配慮されたものですが、気持ち良く浸かっていると、その出入り口の風の音が耳に付いて、とてもうるさく感じられます。
因みに、内風呂に入っている限りでは、それはあまり気になりませんでした。扉がきちんと閉まらないのか、隙間が微妙に空いているのかは分かりませんが、あの音が無くなれば、リゾートホテルの循環式の温泉としては満点を付けられるレベルであると思います。
さて、このホテルにまた行きたくなるか、と問われれば・・・
参加したスタッフ全員が、「またいつか必ず訪れたい」と答えました。
四季折々の表情が豊かな箱根で、気軽に美味しいフレンチとワインを堪能し、良質の温泉で身体を癒し、森の中のロッジで野鳥の声に目覚め、木漏れ陽の差し込む広々としたテラスで、新鮮な山の空気を吸いながら、朝の珈琲をいただく・・・
長期滞在客は、シェフに日々のメニューを相談することもでき、同じ食事に飽きない、美味しい日々を過ごせる工夫もされているそうです。これなら何日でも泊まっていられますね。
先のささやかな苦言を考慮に入れても、このホテルを訪問する価値は充分にあると思います。
(了)

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