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  太極武藝館のブログ、「Blog Tai-ji(ブログタイジィ)」へようこそ。
  このブログは、太極武藝館の創立15周年を記念して平成21年1月より
  開設されたものです。

  Blog Tai-ji では、普段の稽古の様子はもとより、どのような人がここで学び、
  どのように稽古し、太極拳の学習がどのように日常生活と関わっているのか・・・
  それらを中心に、新鮮で盛り沢山な内容を掲載していきたいと思っています。

  私共にとって初めての試みでもあり、至らぬ点は数多いと思いますが、
  お気づきの点などがございましたら、当方までお知らせいただければ幸いです。

  なお、コメントの書き込みにつきましては、現在のところ、小館門人および
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            太極武藝館オフィシャルブログ「Blog Tai-ji」編集室



2016年08月15日

連載小説「龍の道」 第183回




第183回  P L O T (3)



「もちろん証拠は山ほどあるわ。実際にそれを公言して憚らない政治家さえ居るのよ」

「どんな人が、何と言っているんだ?」

「例えば、イリノイ州の元共和党議員、ポール・フィンドレーは、Washington Report on Middle East Affairs 誌(中東情勢ワシントン報告書。中東と米国の政策に関するニュースとその分析について年8回発行)で、こんな指摘をしているわ」

『イスラエルは決してケネディ一族に親しみを持たなかった。ケネディの父親ジョセフ・P・ケネディは、イギリス大使時代に度々ナチスドイツを賞賛し、ヒトラーの熱烈な支持者とさえ考えられていた。
 また、ケネディが大統領選を戦っている間、ニューヨークの有力ユダヤ系グループが中東政策への影響力を手にする事と引換えに選挙資金を提供すると密かに申し出たが、ケネディは同意しなかった。さらに大統領になるとイスラエルには部分的な支援しかしなくなった。
 一方、ジョンソンはケネディとは反対にイスラエルへの強い支持を表明していた。つまりイスラエル政府にとっては、ジョンソンが大統領になった方がよほど都合が良いという十分な理由があったのである。
 そしてそれは現実となった。ケネディの死後、アメリカ合衆国は歴史上初めてイスラエルに対して大量の武器の供与を開始した。また、モサドが地球上のどのような場所に於いても暗殺を実行できるだけの人材と資金を持っていることについては、もはや誰も疑いようのない事実である─────』

「それじゃ、パーミンデクス・コネクション(Permindex Connection)というのは?」

「パーミンデクスは東欧系ユダヤ人ジョージ・マンデルが設立したCMC(Centro Mondiale Commerciale=ニューオリンズ世界貿易センター/映画JFKでトミー・リー・ジョンズ扮するクレイ・ショウが運営)の子会社。それはケネディ暗殺のみならず、フランスのアルジェリア占領を維持するためにドゴール大統領を暗殺する陰謀に深く関与していたモサドの海外秘密工作の拠点と見られているのよ。
 パーミンデクスを中心に絵を描くと、モサド、北京、フランスOAS(アルジェリア独立反対の反ドゴール極右秘密軍事組織)、SDECE(フランス秘密諜報機関)、ランスキー・シンジケート(ユダヤ系ロシア人、マイヤー・ランスキーのマフィア・シンジケート。ジャック・ルビーのボス)、そしてCIAを加えた六芒星が見事にできあがるわ」

「なるほど・・・」

「そして、アメリカのメディアを支配する強大な親イスラエル勢力、つまりユダヤ系国際金融資本家たちの勢力が、ケネディ暗殺の隠蔽工作に大きな役割を果たしていたのも事実ね。多くの団体や人間が関わったケネディ大統領の暗殺事件は、メディアの協力が無ければ決して成功しなかったでしょうしね─────この暗殺陰謀に関わるすべての謎は ”イスラエル” という、たったひとつのキーワードで見事に解けてゆく。そして実際に、ケネディ大統領が暗殺された事によって、イスラエルは大国となる道を切り開くことができたワケよね」

「うーむ、何ということだ。しかし、ジョンソンが大統領になってくれた方がイスラエルにとって都合が良いという理由は、いったい何なんだろう?」

「まず、ケネディ大統領は、中東和平への道を切り開くことに大きな関心を持っていた。
特に1948年にイスラエルに土地を追われたパレスチナ難民の ”安住の地” を探すつもりだと明言していたのよ」

「ケネディはイスラエルよりも ”親アラブ派” だったわけだね」

「けれども、実はケネディ自身はユダヤ系アメリカ人の支援に大きく依存することで、辛うじて選挙を勝ち取り、大統領になった人なのよ」

「・・ん?、何か矛盾するな。それじゃイスラエルからの期待は大きかったわけだね」

「そうね、そしてケネディは上院議員時代から強力にアルジェリア独立を支持していた」

「アルジェリア?─────イスラエルと何の関係があるの?」

「大ありよ!、アルジェリア問題を知らないの?」

「常識程度には知ってるけど・・フランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争だよね。
フランスからの独立を求めて、アルジェリアの民族解放戦線(FNL)が、首都アルジェを拠点にゲリラ闘争をしていた─────そのFNLを掃討するために派遣されたフランス外人部隊の兵士と、パリからカスバの酒場に売られた女性の悲恋を歌った『カスバの女』という歌が日本じゃ大ヒットしたしね。 ♫ ここは地の果てアルジェリア、どうせカスバの夜に咲く、酒場の女の薄情け・・ってやつ」

「やれやれ、こんな時にエンカなんか歌ってどうするんだか──────」

「カスバの女は演歌じゃないけど、そのアルジェリアがイスラエルと何の繋がりがあるのか分からないな」

「フランスの植民地となったアルジェリアのイスラム社会が民族解放のために対フランス独立運動を始めた。アルジェリアには100万人ほどのフランス人が居て、その中にはかなりの数のユダヤ人が含まれていた。ドゴールはアルジェリアを独立させる方向で動き、ケネディも上院議員時代からそれを支持してきたのよ」

「なるほど、そのために現地アルジェリアのフランス軍と植民地フランス人の中にドゴール政権を打倒する考えが生まれ、ドゴール暗殺の陰謀が企てられたんだな」

「そのとおり。そしてフランス国内のユダヤ人勢力を通じて、イスラエル政府とその情報機関であるモサドが動き出した─────」

「そのあたりが、今ひとつピンと来ないけど・・・」

「無理もないわ、もう少し説明が必要ね。それは1948年のイスラエル建国と密接な関係があることなのよ」

「・・と、いうと?」

「イルミナティにとって、第二次世界大戦における主な仕事は、世界の共産主義国を拡大成長させて西側の資本主義と拮抗する超大国を造りあげることだった。そして─────」

「お・・おいおい、ちょっと待てよ・・イルミナティだって?」

「それがどうかした?」

「それって、それこそ ”陰謀論” の代表選手なんじゃないの?」

「やれやれ、何をとぼけたコト言ってるんだか。玄洋會の期待の星とも思えない発言よね。
イルミナティは単なる陰謀論なんかじゃなく、とんでもない歴史を持つ実在の秘密結社だってコト、知ってる?」

「まあ、それはそうだけどさ・・・」

「実際に、かつてフランクフルトのイルミナティ本部からは、現在でも疫病のように世界を蝕み続けている ”ふたつの悪” を誕生させているのよ」

「世界を蝕む、ふたつの悪?・・それも何だか陰謀論クサいなぁ」

「ふたつの悪でワルければ、”シオンの呪い” と言い換えてもいいわ」

「シオンの呪い?・・ははは、ますます陰謀論っぽいね、何なんだ、それは?」

「共産主義と、シオニズムよ─────まずは共産主義インターナショナル。レーニンが設立したコミンテルンとも呼ばれる共産主義政党による国際組織のことだけど、1922年には日本共産党も支部として承認されている。
 それは当初、英国ロスチャイルド商会のライオネルと詩人のハインリッヒ・ハイネ、そしてカール・マルクスという、たったの三人の構成員で作られたのよ。イルミナティの創設者ワイス・ハウプトはとっくにこの世を去っていたけれど、その後を継いだのがイタリア人の革命指導者ジュゼッペ・マッツィーニ。この人物の指揮のもとで、イルミナティの方針は『世界中で革命を勃発させ、政権の転覆を起こすこと』へと転換された。共産主義インターナショナルはその計画の第一歩だったのよ」

「ええっ・・?!」

「これは現実の歴史よ。ちっとは陰謀論から目が醒めるでしょ。まあ、だからこそ私が話を聴かせるお役目としてココに来ているんだけどね」

「むむ・・・」

「この共産主義インターナショナルは、当初はイルミナティの一部門である “正義者同盟” というものだったけれど、これこそが1847年にカール・マルクスに、あの『共産党宣言』の執筆をさせた張本人なのよ」

「な・・な・・なんだって!!」

「あら、驚いた?、そして翌1848年にこの本が出版されると、世界各地にあるフリーメイソンの支部によって、たちまち世界中に流布され広がって行った。”事実は共産党宣言より奇なり”、ってところかしらね」

「むむむぅ・・”共産党宣言” は、実は奴らの仕業だったということか!」

「そして、世界中に ”革命” のムーブメントをを引き起こしたのは、イルミナティのもうひとつの柱である ”シオニズム” だった。シオニズムの目的は世界中のユダヤ人の力をひとつの運動に結集して、世界を支配するための権力中枢としてのイスラエル国家を建設することにあった。ソロモン神殿を再建し、世界中の富を我が物として蓄えることは元々フリーメイソンの目的でもあったから、シオニズムの源流はフリーメイソンだと言えるわね」

「話の腰を折ってしまったけど、第二次世界大戦における、そのイルミナティの主な仕事、というのは?」

「ずばり、共産主義を飛躍的に拡大させ、西側の資本主義と拮抗するもうひとつの勢力に仕上げることよ。そしてその計画と展開に反抗したアメリカの数々の政治家や軍部指導者が次々に排除され、暗殺されていった」

「そんなことが、実際に起こっていたのか・・」

「紛れもない事実よ。米国民と米軍人に最も人気のある、パットン戦車でお馴染みのジョージ・パットン陸軍大将は任地ドイツを離れる直前に暗殺され、他にもマーフィー最高裁判事、ステティニアス国務長官、フォレスタル初代国防長官、マッカーシー上院議員など、イルミナティの長期計画に反抗するアメリカの要人が次々と暗殺されていったわ」

「それじゃ、第二次世界大戦の後は?」

「暗殺されたのはケネディだけじゃない、あのフランクリン・ルーズベルトもそう」

「ルーズベルト?、あの第32代大統領のことか?」

「そうよ。アメリカ史上先例のない四選を果たした途端に脳卒中で亡くなり、副大統領のトルーマンが昇格就任した、そのルーズベルトも彼らに暗殺された」

「やれやれ、もう何を聞いてもあまり驚かなくなってきたよ」

「そして大戦後は、シオニスト・イスラエル、つまりユダヤとイスラムの全面対決が ”演出” されることになった、というワケ─────」

「むむぅ・・”演出” か、難しいなぁ・・」

「やがて近い将来、ユダヤとイスラムの間にもっと大きな事が起こるはずよ───────
 そして兎も角、イルミナティの世界戦略にとって、ケネディは巨大な邪魔者として存在した、ということは紛れもない事実だった」

「実際に、どこがどう邪魔だったの?」

「そうね、そこはとても肝心なところなのだけれど・・」

「なんだよ、やけに勿体ぶるじゃないか」

「それじゃハッキリ言いましょうか─────実はイスラエル政府は核武装計画を進めていた。そしてケネディは徹底的にそれを阻止しようとした。つまりイスラエル政府とケネディ政権は、事実上の戦争状態だったのよ!」

「ええ・・ま、まさか・・そんなことが・・・本当に?!」

「本当よ。そしてそれこそが国民に知らされていない、世界中の一般市民が全く知らない、政治の最も深い部分ということになるわね」

「こうなるともう、何をどう考えていいのか、分からなくなる」

「まだあるのよ─────ケネディ大統領はイスラエルの核武装だけでなく、毛沢東の中国共産党独裁政権の核武装も、武力で全面的に阻止する覚悟だったの」

「ええっ!・・そんなことは宗少尉にも聞いたことがない。それも驚きだな。日本の隣の国だから、イスラエルよりもっと身近にショックに思えてしまう」

「ケネディは暗殺に先立つ数ヶ月間、中国共産党政権の核施設を軍事攻撃する計画を着々と推し進めていた。けれどケネディ暗殺の一ヶ月後には、ジョンソンがその計画を中止して闇に葬り去り、おかげで中国は難なく核兵器を手にすることが出来た。
 イスラエルのモサドと中国の情報機関は、共同で核兵器の開発に携わっていた。チャイナ・コネクションとイスラエル・コネクションは、お互いを指し示す道標となっていたのよ」

「うーん・・ボクたちは本当に何も知らずに、何も知らされずに、ただ単にどこかの国家という土地の上で、ありきたりな日常生活の、ごく目先にある喜怒哀楽に左右されながら生きているだけなんだな・・本当は、この世界では、もっと大変なことが起こっている・・・」

「そのとおりね」

「それを知ることが幸せなのか、知らない方が幸せなのか───────
 実際にこの現実を目の前に見せられたときに、普通の人たちはきっと、マゼランがティエラ・デル・フエゴに上陸したときの、五隻の大きなガレオン船が全く見えなかった土人のようになるか、それとも大海原の果てには巨大な滝があるという常識を全面的に疑って、勇気をもって航海に出る人となるか、そのふたつに別れるんだろうな・・」

「ヒロタカは、その時にどうするの?」

「ぼくは真実を知りたい、本当のことをこの目で見たい、だから航海に出る───────
 もっとたくさんの事を学んで、真実を知ることで、人類がもっと進化して、より良い高度な社会を築けることを信じたいんだ」

「それじゃ、もっと勉強を続けましょう。ここまでは、まだほんのイントロダクションよ。知識を増やすのではなく、考える力、知性を高めていく必要があるのよ」

「仏教ではそれを ”智慧”─────物事を有りのままに把握し、真理を見極める認識力、というけれど、つまりは、それもインテリジェンスだね」



 ケネディ大統領の暗殺がオズワルドの単独犯行であると結論付けたウォーレン委員会は、その22人のスタッフのうち9人がユダヤ人、1人はユダヤ人を妻に持つ者であり、残りの12人はイスラエル系の団体と密接に結びついている人間であった。
 1964年11月22日のワシントン・ポスト誌にはウォーレン委員会の調査結果報告書を賞賛するイェール大学ロー・スクール校長のユージン・ロストウの記事が掲載された。
 ロストウは後にジョンソン政権の国務次官に任命されたが、彼はケネディ暗殺事件の真相を隠蔽するための中心的な役割を担っていたと考えられている。

 そして、後にニクソンが大統領に就任して反イスラエルの路線を明らかにすると、ユダヤ・シオニストの陣営は「ウォーターゲート事件」によってニクソンの追放を謀り、同時にケネディ暗殺の首謀者がニクソンであるというニセの情報を世界中に流した。
 ニクソンの追放劇は、田中角栄が金脈追求の果てにロッキード事件で受託収賄罪等に問われて逮捕収監された事件と様々な共通項が多く、ほぼ同時代的に進行しているが、それもそのはず、この二つの事件は、実はある意図を以てそれを企てた組織が存在している。
 その組織の名は Trilateral Commission(日米欧三極委員会)─────決して闇の組織ではないが、1972年にロックフェラー邸で秘密裏に創立が準備され、翌年に正式発足した。
この最初の準備会議に日本から招かれたのは、田中角栄が嫌った宮沢喜一であった。

 「世界金融マフィア」とも称されるデイヴィッド・ロックフェラーを総帥とする三極委員会の初期の任務は二つあった。ひとつは米国民にニクソンの人格を不信にさせ、ホワイトハウスを完全に牛耳れるようにすること。もうひとつは日本の田中角栄の政治生命を終わらせ、彼らに絶対的な忠誠を誓う者たちを日本の政治権力に据えることである。
 実際に世界を動かす力を握る者たちは、この「三極委員会」に「ビルダーバーグ会議」と「ダヴォス会議」を加えた三つの会合を日米欧のいずれかの都市のホテルや避暑地で繰り返して行い、世界を如何に運営するかブレインストーミングを行ってきた。それが1945年から2000年位までの世界情勢を実質的に決定してきたことは、知る人ぞ知る事実である。
 日本ではその会合がホテルオークラの別館地下で度々行われてきたが、なぜか日本のメディアがそれを大きく取り上げることは無い。


 オズワルドが射殺された僅か2時間後、ダラスからホワイトハウスに戻る大統領専用機、ケネディの遺体を載せたエアフォース・ワンの機中で、ジャクリーン夫人の隣にジョンソン副大統領が立つという異例の大統領就任式が行われたが、その際もジャクリーン夫人はケネディの血に染まったピンクのスーツを決して着替えようとはしなかった。
 その機上就任式で、ジョンソンに向かって笑顔でウィンクする男の写真がある。その奇妙な写真は、以後多くの研究者たちの注目を集めることになった。ウィンクをする男は34年間ジョンソンの顧問弁護士を務めたエドワード・クラークであり、その後ジョンソン大統領から年間400万ドル(現在の14〜15億円に相当)もの大金を受け取っていたことが明らかになっている。

 大統領となったジョンソンは、米軍を2年以内にベトナムから撤退させると表明したケネディとは正反対に、軍事介入を拡大して新たに55万人の兵士を投入、ベトナム戦争は泥沼の様相を呈し、国内に激しい反戦運動と世論の分裂を引き起こしたが、その結果、軍需産業は大儲けをし、ケネディによって解体されかけていたCIAは再び息を吹き返した。ケネディがベトナムからの米軍撤退を表明したのは、暗殺されるわずか22日前のことであった。

 アメリカ政界の保守派が「ケネディ王朝」とまで言われた、人気の高いケネディファミリーの政界君臨を非常に怖れていたことは紛れもない事実である。ジョン・F・ケネディが二期を務めた後からは弟のロバートが二期、さらにその後には末弟のエドワードが続いて二期を務める事になっていたのである。しかし、実際にそうなっていた方がアメリカにとっては良かったに違いないということは、未だに多くのアメリカ国民が認めるところでもある。
 それは、ケネディの暗殺が行われた後に、米国がジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュといった大統領を連続して持つことになり、彼らの国家政策の路線が限りなく国際金融資本家と同調したイスラエル寄りのものになったことを見ても明らかであり、この暗殺事件はもはや、単にケネディ個人に対する暗殺を意味するものではなく、自由と民主主義を標榜するアメリカという国家に対する「暗殺」であったと言えるかも知れない。

 ケネディがパレードで狙撃された後、ジャクリーン夫人は病院に到着してもケネディを抱きしめたまま離れようとしなかった。ケネディの死後、彼女の最も大きな不安となったのは子供たちの安全であり、弟ロバート・ケネディが暗殺されたことで、その不安は頂点に達したに違いない。
 ジャクリーンは子供たちの安全を考え、海運王アリストテレス・オナシスと再婚しギリシャに移り住むことを決意したが、それまでと変わらずケネディ家との繋がりを保った。
 オナシスとの結婚は決して心の通い合うものではなく、夫婦が顔を合わせることも滅多になかったと言う。事実オナシスがパリで死去した際も、ジャクリーンは遠く離れたニューヨークに居たままであった。
 アメリカに戻ったジャクリーンはリンパ腫を患って64歳でこの世を去ったが、長男のジョンが最期を看取り、その亡骸はオナシスではなく、ジョン・F・ケネディの墓の隣に葬られた。
すぐ傍には、かつて死産と病気で亡くした二人の子供たちも一緒に眠っている。



                    ( Stay tuned, to the next episode !! )






  *次回、連載小説「龍の道」 第184回の掲載は、9月1日(木)の予定です

2016年08月01日

連載小説「龍の道」 第182回




第182回  P L O T (2)



「ケネディは誰に暗殺されても不思議のない、理想主義の政治家だったと言えるわね・・」

 真犯人は誰だ─────と問いかける宏隆に、ヘレンが答えた。
 ここまで話が進んでくると、どうしても真犯人を曝かなければ気が済まなくなってくる。

「暗殺されたダラスはテキサス州、つまり南北戦争リンカーン以来の ”敵” である南部の牙城で、副大統領ジョンソンの出身地。ケネディは北部出身で歴代唯一のカトリックの大統領。他の大統領は全てプロテスタント。アメリカ国民はカトリック25%、プロテスタント50%、つまりアメリカはプロテスタントがつくった国だと言えるわね。戦後はテキサス州出身の大統領が最多で、南部と西部が多くなる。ケネディは南部保守派との対立が大きかったのも事実ね。
 ケネディ暗殺のニュースに触れた当時の南部人は、ダラスで暗殺が起こったことについて ”やはり” とか ”ついに” と思ったに違いないわ。当時の南部では黒人に対する暴力は日常茶飯事で、しかも多くの場合は犯人が追及されることはなかった。南部の人種差別論者にとってケネディは、 ”ニグロびいきのお坊ちゃま大統領” だったのよ」

「ケネディ大統領はCIAを解体しようとしていた、というけれど?」

「ケネディはCIA長官だったアレン・ダレスと、副長官チャールズ・カベルを解任し、さらにCIAの組織そのものの解体を目指していた。暗殺されるわずか2年前のことよ。
 因みに、ケネディに解任された元長官ダレスは、なぜか事件を解明するために設置されたウォーレン委員会の一人として名を連ねているわね」

「むぅ・・そもそもCIAは、アメリカにとって非常に重要な大統領直属の情報機関であり、米国政府の最高国防会議であるNSC(国家安全保障会議)に必要な情報を提供する事がその本来の目的なわけだよね。ケネディは何故それを解体する必要があったんだろうか?」

「CIAとの確執ができたのは、ピッグス湾事件(Bay of Pigs Invasion)からね」

「ピッグス湾事件というのは、キューバのソビエトへの接近を憂慮したアイゼンハワー大統領とCIAが、カストロ新政権を打倒するために、反カストロの亡命キューバ人部隊をキューバに上陸侵攻させて、内紛と見せかけて新政権を潰滅させようとした作戦だね。
 ケネディが大統領になる以前に、すでにアイゼンハワーがカストロ政権転覆の計画を立てていたというわけだ。米軍を当初から投入するのではなく、CIAが資金提供して、母国を脱出してきた1500人の亡命者をグアテマラの秘密基地で訓練してゲリラ軍に仕立て、キューバに上陸急襲させるというものだった。上陸が成功すればキューバ国内の反カストロ軍が飛行場を爆破し、革命委員会が亡命政府樹立を宣言する。万一の場合は山に逃げ込んでゲリラ戦を展開する─────退任間近だったアイゼンハワーは、この計画をニクソン副大統領やアレン・ダレスCIA長官に委ねたわけだ」

「あら、さすがにその辺りはよく勉強してるわね!」

「しかし、兵隊の数と物資の量で圧倒的に不利な反カストロ軍がキューバ政府軍に勝つためには、アメリカ正規軍の介入がどうしても必要だった。そして丁度その頃にケネディが大統領に就任(註:1961.1.20)した─────ということだよね」

「C'est bien!(セ・ビヤン=よくできました)」

「お、めずらしくフランス語で来たね」

「ケネディはこの作戦に米軍が介入することに対して非常に慎重だったと言うわ。
 当時はベルリンが危機の状況にあり、キューバ侵攻を口実にフルシチョフが軍事行動を起こすかもしれなかったから。しかしCIAのダレス長官はアメリカ正規軍を介入させないと説明し、ケネディは作戦を承認した。
 だけど、なぜかCIAは、ケネディ大統領に作戦のリスクを過小評価して報告していたし、キューバ軍の一部が寝返るという根拠の無い報告をしていた。しかも実際には、ダレス長官は反カストロ軍に米軍が介入する約束までしていたのよ」

「ふぅむ・・やっぱり、なんだか臭うな・・」

「ケネディは米軍の関与が露見しないよう、空襲での爆撃機の数を減らし、上陸地点をピッグス湾にするよう変更を命じた」

「そして、いよいよ上陸作戦が決行されたが─────」

「そう、最初の空爆でキューバ軍の基地を潰滅するはずが、何と、時差を計算せずに爆撃機が向かったために制空権を奪えず逆に空爆をされ、上陸地点のピッグス湾が珊瑚礁であることもCIAが確認しておらず、カストロ政府軍に海の補給経路を絶たれ、状況が絶望的になった。CIAはケネディにアメリカ空軍の支援を要請したが、ケネディは断固としてその要請を拒否した。その結果、作戦は完全に失敗し、上陸した反カストロ軍114名が戦死、1189名が捕虜となった、というワケね」

「ケネディは、この作戦は何かがおかしい、どこかが怪しいと思ったんじゃないのかな?、コトの全体を整理して行くと、このボクでもそう思えてくるからね」

「ケネディは事件後に記者会見を開き、失敗の責任は計画実行を命じた自分にあるとしながらも、CIAに対して責任を追及し、アレン・ダレス長官とチャールズ・カベル副長官を更迭した。ケネディはこの事件から軍部とCIAを全く信用しなくなったと言われているわ」

「アメリカ軍が正式に軍事攻撃をしたと知れたら、ソビエトが黙っていなかったろうね」

「そうでしょうね。でも結果としてカストロ首相は、この事件から後に、キューバ独立を守るために軍備増強と社会主義と共産政権の東側諸国との友好関係の確立を益々図ることになった。ケネディも自ら本格的にカストロの打倒を計画して、キューバのクーデターを支援したり暗殺工作を続けて行き、その結果、いよいよアメリカに危機を感じたカストロが、ソビエトに軍事支援を求めてミサイル基地の建設と核ミサイルの搬入に踏みきり、ついに1962年の ”キューバ危機” を招くことになったのは誰もが知るとおりよ」

「CIAのやっていることは、アメリカ合衆国の国益と言うよりは、何か違う目的で動いているような気がする。そこには例の ”国際金融資本家” の影が見え隠れするような・・」

「どこかの映画に、こんなセリフがあったわね─────── ”なぜCIAに ”The” が付かないかって?・・神に ”The” を付けるヤツなんか居ないからさ !! ” 」

「ほう、”神” ときたか!・・・そう言えば国際金融資本家たちも、自分たちのことを神と言って憚らないんだったっけ」

「ケネディ大統領が、CIAから恨まれていたのも事実よ。暗殺事件後に弟のロバート・ケネディ司法長官がCIA長官を自宅に呼び出し、兄を殺したのはCIAか? と詰問したのは有名な話だし。ピッグス湾事件の失態で捕虜になった亡命キューバ人ゲリラ部隊の隊員たちも、後に無事アメリカに引き渡されたけれど、皆ケネディを恨んでいたと言うわ」

「確かに、気持ちは分かるが─────後のキューバ危機でケネディは、軍事侵攻は最終手段であって最初の手段ではない、という姿勢を貫き通していたね」

「そのキューバ危機でも、不思議というか、選りに選ってこんな時に、と思える事件がたくさん起こっている。キューバ上空を偵察飛行中の偵察機が地対空ミサイルで撃墜されたり、アラスカでは偵察機が航行上の困難に遭ってソ連領空を侵犯する事態が生じたり、海上封鎖中のカリブ海では、米海軍がソ連の潜水艦に爆雷を投下したり・・」

「何だか、そのあたりも怪しいな。平和や安全を確保すると言うよりは、むしろ戦争勃発を望んでいると思えるような事件が多発しているわけだ。恐らく、政界や軍部に対して彼らを操れるだけの巨大な力を持つ、戦争を望む人間が居ることだけは確かだろうね」

「実際のケネディ大統領の暗殺にしても、パレードのコース変更から、スナイパーの配置、それを警察当局が怪しまないようにするための措置、シークレットサービスや白バイ隊への通達・・それらを見るだけでも、CIAの暗躍なしには成功するわけがないと思えるわ」

「それじゃヘレンは、犯人はCIAだと思うのかい?」

「間違いなく、CIAはこの陰謀に絡んでいるでしょうね。パレードのコース変更にしても、ルーズヴェルト以来、ダラスでの大統領パレードはメインストリートを直進するコースだったのに、ケネディのパレードだけ直前にコースが変更され、教科書ビル前へと迂回させたためにリムジンが時速20マイル(32km)から5マイル(8km)まで減速した。犯人はとても狙撃しやすかったはずよ。
 通常、大統領のパレードにあたっては、全コースに沿って両側のビル内部の見取り図を検討し、全ての居住者を調査しなければならないので、シークレットサービスがコース変更を許すわけがない。このパレードのコース変更を決定したのは、ダラス市長アール・カベル。
彼はケネディに更迭された CIA副長官チャールズ・カベルの実弟よ!」

「・・なんと、そうだったのか!!」

「それに、シークレットサービス自体の行動も不審。メインストリートから教科書ビル前の通りに出るには、リムジンの90度と110度の急な旋回が含まれている。これも従来のシークレットサービスのマニュアルには無くて、普通ではまったく有り得ないことだわ。
 彼らはパレードの際にはリムジンの後部デッキ左右に二人が立ち、車が時速20マイル(32km)以下の時にはリムジンの左右に付き添って走ることが義務になっているのよ。狙撃時には時速8マイル(13km)で、両側で走りながらガードすべきなのに一人も居なかった。
 また、ダラス市警の白バイ伴走がなぜか四台に削減され、白バイ隊はリムジンの後輪からは前に出ないように指示されていた。パレードのコースにあるビルの多くは窓が開け放たれており、オズワルドが居たとされる教科書ビルには何故か全く警備陣が入っていなかった。道路のマンホールの蓋も通常は溶接で塞がれるはずなのに、そのままにされていた。
 暗殺の瞬間を記録したザプルーダーフィルムを見ると、シークレットサービスは銃声がしても動こうとしていない。さらに驚くべきことに、大統領狙撃後に病院に到着するとすぐにシークレットサービスがリムジンをスポンジと水で血痕を洗い始めた。
 フロントガラスには銃弾の跡が幾つかあり、警官がその穴に鉛筆を通しているのを複数の民間人が目撃している。これは狙撃が前方からも行われたと言うことを示しているのに、ウォーレン委員会では完全に無視された。そのリムジンはケネディ国葬の日にそそくさとフォードモーター社に送られ、解体され溶かされて完全に造り替えられてしまった。貴重な証拠が多く残された大統領の暗殺現場であるリムジンは、こうして闇に葬られてしまったというワケね」

「シークレットサービスまでグルだったら、大統領は絶対に身を守れないな・・・
 だが、お父さんのヴィルヌーブ中佐なら、実際の狙撃犯が誰だったのかということまで、大体の見当が付いているんじゃないのか?」

「誰にも言えない極秘事項だけど、ヒロタカには話しておきましょうか───────
 一人はダラスの保安官代理ハリー・ウェザーフォード、次にジャック・ルビーと親密だった空軍のベテラン狙撃手ジャック・ローレンス、三人目はフロリダ州のリトルハバナに彫像まで建てられている反カストロ派キューバ人、通称 ”トニー” と呼ばれる、ネスター・イズキエルド、四人目はCIAと繋がりのあるダラス警察のロスコ・ホワイト、五人目はキューバ人亡命者で構成されるCIA主宰の防諜グループ ”Operation 40” のメンバーで、マフィアとも深い親交のあるフランク・スタージス、六人目はCIAの名高い暗殺者の一人であるルシアン・コーネン・・・」

「暗殺を実行したスナイパーが、そんなにたくさん?─────」

「実行犯と思える人間を挙げるだけならもっと居るわ。だけど確かな証拠が無いし、事件後に何人か死亡しているからどうにもならないけど・・・
 例えばケネディの後に大統領となったジョンソンには、専属の殺し屋マック・ウォレスが居た。マックは1952年にプロゴルファーを殺害して有罪判決を受けた。被害者は何とジョンソンの妹の恋人よ。マックはわずか5年の執行猶予付きの判決を受け、'53年から'68年まで Ling Temco Vought という大手軍需産業に入社していた。'61年にはテキサスで資金流用の操作をしていたマーシャル捜査官の殺害をジョンソンが依頼したという証言が法廷で証拠として採用された─────そのマックの指紋が、教科書ビルに残されていたのよ」

「うーん、本当にオドロオドロして、イヤになるような暗殺事件だな」

「けれど、それらはあくまでも未だ目先の現象に過ぎないわ。実際の物事はもっと複雑よ」

「と、言うと────────?」

「JFK(ケネディ大統領)暗殺事件を研究する人たちの、誰もが見逃してしまい、取り上げなかった、思いもよらないコトがあるのよ」

「えっ・・そ、それは・・?!」

「東西冷戦、核軍拡競争、核実験禁止、核拡散防止条約、ベルリン危機、キューバミサイル危機、コンゴ動乱、ベトナム戦争の泥沼化といった世界的な問題の陰に隠れてしまったように、ケネディ大統領の暗殺に全くと言っていいほど取り上げられていない事、と言えば?」

「もしかして─────それは中東問題のことか?!」

「C'est vrai!(セ・ブレ=そのとおり)。大統領暗殺の研究者たちは、暗殺そのものに関しては様々な角度から推理検証を試みてきたけれど、それらは所詮、ジグソーパズルのひとつひとつのピースのようなものだった、というワケ」

「それぞれのピースとは、つまり、犯人とされたオズワルドをはじめ、それを翌日射殺したユダヤ人のジャック・ルビー、そのジャック・ルビーはニクソン大統領の下院議員時代にもひと働きしたそうだね。そしてジョンソン副大統領、ピッグス湾で危機に陥った反カストロキューバ人組織と、キューバでの商売がフイになって大損をしたユダヤ系大物マフィアであるマイヤー・ランスキーのシンジケート、オズワルドを取り巻く人物であるデヴィッド・フェリー、私立探偵のガイ・バニスターやジャック・マーチン、そしてCIAにFBI、政界の保守派勢力、石油企業、軍事産業と、キリが無いけど・・・」

「あら、事件にまつわる重要人物を、たくさん知ってるわね」

「まあね。JFK暗殺には興味があったから、いろんな本を読んだんだよ」

「なら話が早いわ。そして、それらの人たちは皆、何らかの線で繫がって絡み合っているところが、この事件の奥の深いところよ」

「真犯人を追う研究者たちは、それぞれのピースをつなぎ合わせた時に出来る全体の絵が見えていなかったということかな?」

「いいえ、本当に検証しなくてはいけなかったのは、その完成したジグソーパズルの絵をひっくり返したときに裏側に現れてくる、大きな一枚の絵よ」

「つまり、まさにそれらを陰で操っていた者の正体、か・・?」

「そういうこと」

「ズバリ言って、そのパズルの裏側に現れる絵というのは、いったい何だったんだ?」

「パーミンデクス・コネクション──────────」

「なんだ、それは?・・聞いたこともないな」

「イスラエルの情報機関、法的には存在しないことになっているイスラエル諜報特務庁・・
ISIS(Israel Secret Intelligence Service)、通称 ”モサド” が、秘密工作活動のために経営していた、国際ダミー企業の名前よ」

「なっ、なんだって!・・あのモサドが、ケネディ暗殺に関わっていると?!」

「そのとおり──────イスラエルはケネディを大統領の座から排除することを画策し、後継者としてリンドン・ジョンソンにホワイトハウスを任せる事についても、明確な動機を持っていたのよ」

「そ、その確かな証拠がある、というのか・・?!」



                    ( Stay tuned, to the next episode !! )





  *次回、連載小説「龍の道」 第183回の掲載は、8月15日(月)の予定です

2016年07月28日

練拳Diary #71「武術的な強さとは その15」

               by 玄門太極后嗣・範士   円 山 玄 花



 太極拳は、不思議な武術である──────────とは、近ごろ私がよく想うところなのですが、何が不思議かと言えば、「力」に対する考え方とアプローチの仕方です。

 「力」は武術の象徴であり、特に男性は古い時代から“力比べ”を好んで行い、その方法は腕相撲や大きな石を持ち上げることなど様々でした。
 最近は人同士では飽き足らないのか、動物や自動車との力比べまで行われているようで、人間の力に対する思いの強さが感じられます。

 力が強い方が勝つ。
 力は大きい方が良い。

 私たちは小さい頃から誰もがそのように感じて、育ってきました。
 だからこそ、学校でテコの原理や滑車の法則を勉強したときには、驚いたものです。
 自分の力では動かせなかった大きなものを、それらの道具を用いることで容易に動かせるようになるからです。
 けれどもそれは、やはり道具を使った場合に限定されるため、自分が戦いで勝つためには自分自身が強くなり、大きな力を手に入れる必要があります。

 ところで、人々の戦いでは、力の用い方がどのように変化してきたのでしょうか。
 非常に大雑把な見方をすれば、恐らくは子どものケンカに見られるような単純な力のぶつかり合いから始まり、テコの原理を使って投げ飛ばしたり、足元を軽くして鋭い拳打を繰り出すなど、力を効率的に出し、伝えることへと変わってきたはずです。
 そしてさらに、その順序は定かではありませんが、より相手との関係性を重視し、表面的な力ではなく相手の軸を捉えることや、相手の思考・意識にまで関わることが見出されてきたのではないかと思います。

 そのような中で、太極拳は先ず力を否定します。
 正確に言うと、これまでに自分が用いてきた“力の使い方”を否定します。

 そもそも、太極拳の要訣を正しく守って立つと、力むことができません。
 そうかと言って、しなしなのモヤシのような状態でも戦えるのかと言えば、それは不可能です。太極拳の練功が「站椿」と「歩法」に集約されているように、最低限自分の身体をきちんと動かせるだけの筋力と体力は必要です。
 面白いことに、太極拳の練功を二十年近く積んできた五十代、六十代の人は、まだ在籍年数が少ない若者が息を切らして汗をかくような筋力トレーニングを行ってみても、軽々とこなしてしまいます。

 太極拳が力みを否定していることは、残されている「用意不用力」「四両撥千斤」などの言葉を見ても分かります。
 師父は、それらの口訣を太極拳学と照らし合わせて考えられ、科学的に立証できるように長い年月を費やして学習体系を整えてこられました。
 その結果、私たちは21世紀の現代にあって、まさに僅か数十グラム程度の軽い力で、体重が90kgを超える大きな相手が軽々と吹っ飛ぶことを目の当たりにすることができるようになったのです。
 さらには、対峙した相手が武器を手に向かって行っても、相手は真っ直ぐ歩くことができずに、意図しない方向へと足を出さされたり、向けた刃物の切っ先が師父から数十センチも離れたところへ崩されてしまうことなどは、その力が力みではないことの証明であると言えます。
 そのような力をこそ、昔の人は一般的な力と区別して「勁力」と呼んだのでしょう。

 時折、初めてその光景を目にした人が、「初対面の人を相手にしても、それだけ吹っ飛ばすことができるのですか?」という質問をされることがあります。
 この質問自体は、発勁が相手を吹っ飛ばす単純な技法と捉え、それが太極拳の精緻な技術体系の一部であるとの認識がないことに起因するものですが、実際には、初対面であるかどうかは全く関係ありません。
 実際に門人の中にも、初めて見学に来た時に師父に挑んだものの、直後に吹っ飛ばされたり、地面に叩きつけられた人が居ますし(勿論、本人も同意の上です)、筋トレやボディビルで重く固く鍛えてきた人が入門早々から吹っ飛ばされたり、容易に崩されたりして、立っていることができなくなりました。
 つまり、稽古で身につくのは相手を激しく吹っ飛ばす技法ではなく、筋力や体格の大小に関係なく戦える “戦い方” そのものだということです。それが、勁力のシステムを学ぶことで可能になるわけです。

 さてそれでは、どうすればそのシステムを学び、身につけることができるのでしょうか。

 道場では、毎回そのことについて言及されていますが、それは「守ること」です。
 指導されていることをそのまま受け取り、自分を挟まずにやってみること。
 そのために必要なことを、守ること。ただそれだけです。

 学習内容を理解するために必要なこと。それは守られるべきルールとして存在します。
 身体の要求としては、虚領頂勁や二目平視などの無極の要訣を守ることが挙げられます。
 動くことの要求として第一に指摘されることは、架式が守られているかということです。
 架式を守ることには、胯(クワ)が外にブレないこと、身体が捻れないことなどが含まれています。そして、動作を分けずに一動作で動くことや、初めから終わりまで等速等力で動くことなどが求められます。

 ここに挙げた要求は、実際の要求のほんの一部に過ぎませんが、これだけでも、「立つ」「動く」「相手と関わる」ことの中で、自分の好きなようにできることはひとつも無いことが分かると思います。
 けれども、それは太極拳に限られたことではありません。
 世界に星の数ほどある武術には、必ず「基本となる姿勢」が存在します。
 有名なところを挙げれば、空手の三戦立ち、形意拳の三体式、合気道の半身などでしょうか。
 それらの構えは、その武術の基本となる立ち方であるはずですが、どれも自分なりの考えで出来てしまう簡単なものにはとても見えません。
 その姿勢を正しく取るには意識的に注意深く整える必要があると思いますし、だからこそ 武術としての力を発揮することが可能になるはずです。
 そうでなければ、なぜそのような形を今日まで受け継いでいるというのでしょうか。

 その基本となる姿勢を意識的に整える過程に於いて、自己統御の力が養われ、自分ひとりの練功でも、相手のいる対人訓練でも、「守ること」の重要性が身に染みて理解できてくるわけです。
 ところが、そのルールがなかなか守れないのです。
 先ほど述べたように、内容はそれほど難しいことではありません。
 基本的な「立ち方」と「動き方」で、それを整えなければ勁力は分からないし、敵を倒すことも理解できないと言われているのにも関わらず、それが守れないのはなぜでしょうか。

 師父は、『それは、自分を甘やかすためのルールを、自分で作ってしまっているからだ』と、仰います。

 自分を甘やかすためのルール。
 それはたとえば、次のようなものでしょうか。

 ・相手が攻めてきているから、足を止めていた方が大きな力を出せる。
 ・不安定な恰好でも、踏ん張っていればやられない。
 ・もうあと少しで相手は倒れるから、多少身体を捻っても仕方が無い。
 ・相手よりも少し速く動けば、攻撃を楽に避けることができる。
 ・まだ自分には教えられた動きが出来ないから、取り敢えず今動ける範囲で動いてみる。

 などなど、挙げていくとキリがありませんが、要するに、ルールを守って何か大事なことを理解するよりも、その場で自分にとって都合の良い、慣れ親しんだ考え方と動きで対処しようとしていることが一目瞭然です。

 師父はこうも仰います。
 『いざとなったら自分にとって都合の良い方を選ぶというなら、いったい何のために高度な武術を学びに来ているのか』と。

 確かに、それなら最初から自分のやり方を更に磨いて、好きなだけ工夫をすれば良さそうなものです。けれども、太極拳は学びたいし、そこには何か素晴らしい叡智が在るように感じる。
 改めて文字にして書いてみると、とんでもない考え方であることが分かりますが、はたして、それを自分に当てはめて静観することができるかどうかです。

 そのルールを守れなかったときに、ほんのささやかでも自分を正当化するための言い訳を持っていると、なかなか本当の自分を観ることができません。私もそこで躓き、悩んだ時期がありました。
 反対に、そこで言い訳をせずにルールを守れなかった自分を認めることで、次にそのルールを守るための力となります。そこでようやく、自分に立ち向かうことができるわけです。

 人間は脆く、弱いものですが、その脆くて弱い自分と面と向かい、それを乗り越えてさらなる高みを目指していける、素晴らしい可能性を持った生命だと思います。
 武術を学んでいるからには、弱い自分を越えて強くなりたいという思いがあったからに違いありません。だとしたら、言い訳をしたくなるその瞬間こそ歯を食いしばらなければ、本当の「強さ」は手に入るはずがないのです。


                               (つづく)



2016年07月15日

連載小説「龍の道」 第181回




第181回  P L O T (1)



 入院中の宏隆にヘレンが語って聞かせる話は、南北戦争からリンカーンの暗殺、連邦準備銀行、日露戦争、ロシア革命、アンネの日記、旧約聖書、キリストの受難、そしてケネディ大統領の暗殺へと、留まるところを知らない。

「─────それじゃやっぱり、ケネディ暗殺もリンカーンと同じように、ユダヤ国際金融資本家たちの陰謀なんだね?」

「いや、そう考えてしまうのは、ちょっと早計ね」

「え、てっきりそうかと思ったけど・・」

「ケネディ暗殺には、陰謀説が驚くほどたくさんあるのは、ヒロタカも知ってるでしょ?」

「ああ、いろんな説があるみたいだね。大統領と仲が悪かったCIA、選挙で敗れたニクソンや副大統領のジョンソン、ケネディのせいで大損をした軍需産業、et cetera・・」

「そうね、そして世界の多くの人たちが、真犯人はオズワルド個人ではないと信じている」

「だけど真犯人はいまだに分からない─────謎に包まれたまんまだよね」

「そうそう、日本人もその調査に関与していたのを知ってる?」

「日本人が?・・それは初耳だな」

「内閣安全保障室* の、佐々淳行(さっさ あつゆき)。戦国武将の佐々成政の末裔とかで、危機管理のプロフェッショナル。公安外事警察の仕事も多く、よど号事件('70)、浅間山荘事件('72)でも活躍した人。アメリカのスパイ小説にも実名で登場しているわ」
(編註*:内閣安全保障室は国家の安全、国民の生命、財産に関わる重大被害、およびその怖れがある緊急事態への対処を目的とする。佐々淳行は'86~'89の内閣安全保障室長)

「それは同じ日本人として迂闊だったな。スパイ小説にまで登場って?」

「ド・ゴール大統領暗殺を題材にした映画、”ジャッカルの日” の原作者が、他の小説に佐々さんを登場させているのよ」

「へえ、その人がなぜ、わざわざケネディ暗殺の調査に来たの?」

「実際に多くの国の諜報機関が訪米して調査を行っているけれど、日本の場合は内閣安全保証室の方針でしょうね。主には暗殺の研究やアメリカの情報機関が大統領暗殺にどのように対処しているかを視察する、というところかしら。ただし、彼の見解はオズワルド単独犯ということらしいけれど」

「まあ、公的な立場での発言と、個人の本音とは違うだろうけどね。それじゃひとつ僕も、シャーロックホームズみたいにケネディ暗殺事件の謎解きをしてみるかな」

「ホームズよりジェームス・ボンドの方が似合うんじゃない?、それともド・ゴール暗殺のジャッカルってタイプかな?」

「おいおい、人をアサシン(重要人物の暗殺者)みたいに言うなよ」

「あはは・・だって、この世界じゃ有名な秘密結社の、優秀な新人スパイなんだから!!」

「ぼくはスパイじゃないって言ってるでしょ、もう──────ところで、ヘレンのお父さん、ヴィルヌーヴ中佐の見解はどうなのかな?、きっとケネディ暗殺に関しても多くの情報を持っているんじゃないかと思うんだけど」

「まあね、もちろん父は職業柄、普通では知り得ない情報をたくさん持っているわ」

「訊きたいことが山ほどある。君が中佐から聞いた情報があれば説明してほしい」

「いいわよ、何でも訊いてちょうだい」

「まず、ケネディの暗殺がオズワルドの単独犯行だと断定したのは、例の ”ウォーレン委員会(Warren Commission)” だったよね」

「ウォーレン委員会は、ケネディの死後に格上げで大統領になったジョンソンが、事件を検証するために設置した調査委員会。連邦最高裁長官であるアール・ウォーレン委員長の名前からきた通称で、正式には『ケネディ大統領暗殺に関する大統領特命調査委員会』と言うんだけれど。ところがその調査過程や結果には、疑問点や疑惑が山ほど見られるのよ」

「正式な調査の為に設置された委員会にまで疑惑があるのか、やっぱりこの事件はミステリアスで奥が深いな。その疑惑の主なものは?」

「まず第一に検死写真ね。司法解剖時に撮影されたケネディの検死写真が、ウォーレン委員会のスタッフにさえ公開されなかったという事実には、この暗殺事件の複雑さを感じざるを得ないわ。暗殺の証拠を集める調査スタッフがどれほど検死写真を見たいと言っても、委員長のアール・ウォーレンは最後まで許可を出さなかった。実弟のロバート・ケネディが公開を希望しなかったとされているけれど、どうかしらね・・」

「それはおかしいな。検死写真を見れば銃弾がどこから飛んできたかを特定できるはずだ。それに調査委員会が検証する事は一般公開とはワケが違う。検死写真抜きで調査を進める暗殺事件なんか、どこの世界にも無いだろうし」

「ヒロタカはその写真を見たことがある?」

「もちろん無いさ、何せウォーレン委員会のスタッフさえ見たことがないんだから」

「よかったら見てみる?」

「え・・そこに持っているの?」

「そうね、どういうわけか─────」

「やれやれ、とんだレディだね、キミは・・・」

 ヘレンはゼロハリバートンの片隅から白いファイルを取り出すと、その中から四枚のモノクロームの写真を出して見せた。

「うわぁ、これはひどいな・・・」

 まぎれもなく─────まだ眼を見開いたままのケネディ大統領が、すっかり血の気の引いた顔で検死台に横たわり、後頭部が大きく破損して脳が後ろに流れ出している。一般人が見れば気分が悪くなりそうな写真だ。

「頭部にライフルを被弾すると、こうなるわね。顔は綺麗なままなので、余計にこの事件の陰惨さが際だってくるわ」

「ウォーレン委員会の報告では、オズワルドが撃った銃弾は三発、いずれも教科書ビル6階の角の部屋から発射されたものだと断定していたね」

「そうよ」

「教科書ビルの6階から狙撃したなら弾道は後方上からのはずだが、この検死写真を見ると明らかに右前方から撃たれているじゃないか!、後ろの上から撃たれたら、顔が吹っ飛んでいるはずだ」

【編註:後に一般に少し出回ったケネディの検死写真は、まるで後頭部から撃ち抜かれたように顔面の半分が欠落しており、明らかにこの当初の検死写真とは異なっている】

「そう、銃弾の傷は入口が小さく出口では広がる。致命的な一発が後方からの射撃ではないことが誰の目にも明らかなので、この写真はひた隠しにされているのでしょうね。そして、検死自体にも不審なことばかりあるのよ──────」

「ケネディは、どの病院に運ばれたんだっけ?」

「ダラス市の北西部にあるパークランド病院。合衆国の法律では殺人事件の被害者の司法解剖や検死の責任は発生場所の所轄組織にあるので、この事件の検死義務はパークランド病院にある。この病院には検死の専門官も在籍しているので、何の問題もないはずよ」

「つまり、図らずもそこは事件の事実解明には適した病院だったわけだ」

「ところが・・・・」

「また何か、怪しいことがあったんだな?」

「これもあまり知られていない事だけれど───────
 撃たれたケネディがパークランド病院に到着したときには、緊急召集ですでに12名の救急医が持ち場に就こうとしていた。
 最初に大統領の状態を診た医師の名はチャールズ・カリコ。彼は少し遅れてきた外科医師のマルコム・ベリーと共に、ケネディの呼吸を助けるために喉仏(のどぼとけ)の下にあった傷口を切開して開き、そこに気管チューブを挿入した。つまり事件後最初にノドの傷を見た人はこの二人だけだということね。
 二人の医師はその傷口が被弾によるものだとすぐに分かった。ドクター・カリコはウォーレン委員会で、『5ミリと8ミリの小さな傷でした。甲状軟骨(ノド仏)の下から三椎目のところにありました。この傷はかなり丸く、傷はギザギザになっていなかった。また火薬の燃え滓も付着していませんでした』と証言しているのよ」

「それはつまり、前方から撃たれた銃弾で出来た傷だと言っているワケだね」

「そういうこと。日本と違ってテキサスの病院では、銃撃の傷など日常的に医師が目にしているので、見間違えるはずがないのよ。そして医師たちは、ケネディの頭部右半球が髪の生え際から右耳の後ろまでそっくり無くなっていることも確認している。召集を受けて続々と到着した医師たちは懸命に蘇生術を繰り返したけれど、外科部長のケンプ・クラークが午後1時に死亡を確認した」

「それから、いよいよ検死する事になったんだね?」

「いいえ、死亡が確認された大統領の遺体は、検死解剖のためシークレットサービスによってメリーランド州にあるアメリカ海軍病院ベセスダ衛生研究室に移送されてしまうのよ」

「ええっ?、遙々とワシントンD.C.の側まで運んで検死解剖を?・・なぜその場でやらないの?」

「当然、パークランドの医師団は猛烈に抗議したのだけれど、聞き入れては貰えなかった。そして彼らは強引に遺体を移送したの。ダラスからベセスダまでは直線距離でも1,900kmもあるのよ」

「それで、移送先での検死は?」

「検死よりも、もっと不思議なことがそこで起こったのよ」

「・・と、いうと?」

「ダラスのパークランド病院で、大統領の遺体を棺に入れる作業を行った救急隊員のオーバラー・ライクは、『私は大統領の遺体からまだ相当な血液が流れていたので、それが棺の中に広がるのを怖れ、遺体をゴムのシートで丁重に包み、立派な青銅製の棺に入れました』と証言しているわ」

「ふむ、それで?」

「ところが、搬送先のベセスタ海軍病院で検死解剖に立ち合った海軍士官デニス・デイビッドと海軍医療技官ポール・オコナーは、『解剖室に入って来た大統領の棺は質素なグレーの搬送用の棺で、遺体は戦場で死んだ兵士を入れる粗末な死体袋に入っていた』と証言しているのよ」

「なんだって────────?」

「さらにデイビッドは、こんな事を語っている。『遺体は黒の霊柩車で病院に到着しましたが、ジャクリーン夫人を始め、遺族の一行が柩と共に病院に到着したとき、私が居た霊安室のベッドには、すでに大統領の遺体が安置されていました。私は窓から彼らの到着を眺めていて、極めて奇異な感覚にとらわれました』」

「ええっ・・?」

「レントゲン技師のジェラルド・カスターも、こう言っているわ。『大統領の遺体がある霊安室で、私は撮影の準備をしていました。30分くらい経ってから霊柩車と共に到着したジャクリーン夫人が病院に入ってくるのを見ました。夫人が終始、夫を守るように付き添っていたあの柩は、いったい何だったのでしょうか?』」

「それは一体、どういうことなんだ?」

「考えられることは、ひとつ─────パークランド病院からベセスタ病院までの遺体搬送の過程で、柩がすり替えられたと言うことね」

「実際に、そんなことが有り得るのか?」

「テレビ中継された時の大統領の柩は青銅製で、霊柩車はグレー色だったわ。これは今でも確認できるはずよ」

「それじゃ、何のために・・・」

「大統領の遺体に細工をするためでしょうね。オズワルドが単独犯で、三発の銃弾を教科書ビルの6階から発射したように見せかけるための小細工をしたのよ」

「何ということだ・・これはもう間違いなく、念入りに仕組まれた陰謀だね」

「それに、実際に発射された銃弾は三発ではないし」

「と、いうと?」

「暗殺の現場を、偶然に8ミリフィルムで撮影していた民間人が居るの。その貴重な証拠となるフィルムは、撮影者のアブラハム・ザプルーダー氏の名を取ってザプルーダーフィルム(The Zapruder Film)と呼ばれているけれど、偶然暗殺の瞬間が撮影されたそのフィルムは、FBIとウォーレン委員会によって事件からずっと封印され続けてきた。ようやく去年、つまり1974年にそのフィルムが国立公文書館に移され、公開されたばかりよ」

「一般市民が撮ったフィルムでさえ、11年間も封印されていたと言うこと?」

「そう。だけどそのフィルムさえ、どんな手を加えられているかも知れないし・・」

「ヘレン、失礼かもしれないけど、もしかすると君のお父さん、CIAにも自由に出入りできるヴィルヌーヴ中佐は、ケネディ暗殺事件にも興味を持って独自に調査をしていたんじゃないのかい?」

「いい勘をしてるわね、そのとおりよ。ケネディを尊敬していた父は、あの事件が不審なことだらけなことに気付いて独自に調査をしていたのよ。そのためにイギリスやポーランド、キューバにまで行って、証拠を集めていたの」

「やっぱり・・・で、その成果は?」

「私がヒロタカを見舞いに行くと言ったら、ケネディの話もしてあげなさいと言って、この検死写真や他の資料を見せる許可を出してくれたのよ。だから私の知っていることなら何でも教えられるわ」

「それじゃ、検死写真の次の疑惑は何だろう?」

「さっきヒロタカが言ったこと。ケネディは前方から狙撃されたと証言した人が居るのよ。
 ユニオン・ターミナル鉄道の管理職、スターリング・M・ホーランドは、ちょうどその時に仕事で大統領の車の前方、フリーウエイの陸橋の上で信号の点検を行っていたの。
 発砲の音が聞こえた直後に、彼は左側の木立の下から立ち上る一筋の煙を見た。そして驚いてその辺りに向かって走ると、そこには12〜15人ほどの警官と私服警官らしき者が地面に向いてカラの薬莢(やっきょう)を探しているのが見えたというのよ」

「ウォーレン委員会も当然、その証言者の話を聴いたはずだね。それなのに、教科書ビルから三発撃ったオズワルドの単独犯とするとは─────」

「そのような証言は全て無視されたわ。それどころか証言者の多くは、その後事故や自殺でみんな死亡している」

「むむ・・・・」

「大勢の警官と私服警官らしき者が空薬莢を探していたというのも不審よね。大統領を警護する立場であれば、薬莢を探すヒマがあったら真っ先に犯人を捜して逮捕するべきでしょ」

「本当にそうだね、いったい何のためにそんな事をやっていたんだろうか?」

「彼らにしてみれば、大統領が撃たれたという目前の事実よりも、それを撃った犯人が残したライフルの薬莢の始末の方が遥かに大事だ、ということになるわね」

「やはりグルだったと言うことか、ダラス警察も、CIAも、FBIも・・!!」

「それを具体的に示す数々の情報を、父は探してきた。例えば、警備に当たったダラス警察の、警察官から当日の様子を詳細に聴いて回ったの」

「それで──────?」

「それによると、まず白バイ隊員は当日の朝、『今日のパレードはCIAが取り仕切っているから警察は出しゃばることが出来ない、そのつもりでいてほしい』と警備隊長から指示されている。また、『何かあった場合はパークランド病院に行くように』という指示までされていて、隊員たちは皆とても不思議に思ったというのよ」

「確かに、それではまるで、パレード中に何かが起こると予告しているようなものだね」

「さらに事件後には真相を調査するためとして、シークレットサービスが白バイ隊を集めて銘々に質問したが、全員が見たとおりのことを答えると、実際に見た事ではなく『このように見えた』と証言するように強要されている。しかしその内容については、どの隊員も決して口を開かない。これは何年経っても変わらないので、よほど強く脅されて口を封じられているということよね」

「うーむ、何ということだ・・・」

「ウォーレン委員会では3発の銃弾が発射されたと断定したけれど、父がやっと入手した白バイ隊の無線交信記録テープ** には、白バイ隊員のヘルメットに付いているマイクがキャッチした銃声が5発聞こえるのよ。しかも、最後の2発はほとんど同時に発射されている。
 オズワルドが使ったと言われている、当時20ドルで通販で買えるようなイタリア製の払い下げライフルでは、たとえ熟練のスナイパーでもその間隔での連射は有り得ないわね」
(編註**:このテープは事件後16年間、誰にも検証できないように封印されていた)

「5発の銃弾が発射されている、というのは?」

「父の調査で分かったことよ。これを見てほしいのだけれど────────」

 ヘレンはケネディ大統領の暗殺現場である、メインストリートの354号線からわざわざ教科書ビルのある交差点に向かって入り、その交差点を急角度で曲がってエルムストリートに入るパレードのルートを示した地図を宏隆に見せた。

「ふーむ、なるほど・・・」

 宏隆は、しばらくの間その地図をまじまじと見ていたが、やがて

「これは、暗殺には最も適した場所と思えるね」

 そう言って、ヘレンのボールペンを取り上げ、そこに何本かの線を引いた。

「最初から教科書ビルばかりが注目されているけど、その隣にあるビルからでも、ほぼ同じ弾道で狙撃が可能だな。いや、却ってその方が撃ちやすいかも知れない。それに、進行方向右手にある丘の茂みは身を隠しながら撃つ絶好のポイントだし、道の前方にある陸橋からも容易に狙える」

「この道は、教科書ビルを通過すると、だんだん下り坂になっていくのよ」

「なら、なおさらのことだ。陸橋からはほぼ正面、撃ち下ろしの状態になるので弾道のドロップ(沈下)を気に掛ける必要もない。ただし、シークレットサービスや警備の警官からは丸見えだから、そこから堂々と撃つことは有り得ないはず。反対に警護のフリをして撃つなら、これほど簡単なことは無いけどね」

「ウォーレン委員会の結論は、5.7秒の間に3発の銃弾が教科書ビル6階に居たオズワルドのライフルから発射され、一発目は大統領の首を貫通、二発目は大統領の頭部に命中、三発目は外れて通行人の頬を掠ったとされているわね」

「ウォーレン委員会の、有名な Magic Bullet(魔法の銃弾)というのは?」

「大統領の背中から首を貫通した弾丸が空中で120度近く方向転換し、前席のコナリー知事の右の背中に再突入してわき腹から飛び出し、さらに再び空中で方向転換して、今度は右腕に入って骨を砕き、手首当たりから飛び出して、またしても方向を変えて知事の左足太腿に入ってようやく止まった、と結論付けたけれど─────誰も信じないわ」

「ははは、そんなバカなことは有り得ないな。銃の所持を認める国で、それを信じる国民なんか一人もいないと思うよ。ところで、ヴィルヌーヴ中佐の見解は?」

「約十秒の間に五発の弾丸が発射され、一発目は教科書ビルから。ただし6階よりも低い階から発射され、ケネディ大統領の背中から首へ撃ち抜かれた。二発目は恐らく右手のグラシィーノール(Grassy Knoll)の丘の茂みから発射、標識の看板を貫いてコナリー知事の手首と足に当たる。三発目は教科書ビルからの狙撃。銃弾はコナリー知事の背中に当たった。四発目はパレード進行方向である前方の陸橋(距離約43m)からの狙撃で、ケネディの右頭部を撃ち抜いた。五発目は教科書ビルの2階から撃たれ、外れて見物人の右顔面を掠った」

「ということは、狙撃犯は複数存在した、というわけだね」

「狙撃犯は少なくとも三人居たことになるわね。三種類の銃で、三人が狙撃した────────これが父が調査した結論よ」

「すごいね、狙撃した銃が三種類だったことまで分かるの?」

「三発目だけが、教科書ビルで発見されたものと同じ、イタリア製 Carcano(カルカノ)ライフル。教科書ビルに遺されたものは日本製の四倍率スコープが付けられていたけれど、本当に凶器として使用された物かどうかは分からないわ。他の四発の銃弾は別の性能の良い軍用ライフルと思われるわね。銃声を科学分析することは今日はそれほど難しくはないのよ。当時とは比べものにならないほど技術が上がっているからね」

「オズワルドが狙撃に使ったというカルカノは、どんなライフルなの?」

「カルカノM91/38はボルトアクション式のライフルで、一発撃つたびに毎回ボルトレバーを上げ、手前に引いて排莢(はいきょう=薬莢の排出)し、再びボルトを前方に押すことで次の弾丸を弾倉から薬室へ送り、ボルトを倒す事で射撃準備が完了、再び照準を見て狙う、という作業を繰り返す、というワケ」

「それは時間が掛かりそうだ。連射に向かない手間のかかるライフルをわざわざ暗殺に使うバカも居ないと思うが・・」

「このライフルは、たぶんヒロタカなら十秒間に三発は撃てるわ。でも毎回照準で狙いを定め直して動く標的を撃つには二発が限度。まして5.7秒に三発は絶対に不可能ね」

「個人的な恨みならともかく、政治的な意図の暗殺は、単独で行われることは有り得ない。狙撃手・観測手・通信手の3名、あるいは狙撃手と観測手兼通信手の、最低でも2名のユニットで構成され、失敗に備えてそれが複数配置されているはずだ。
 ケネディ暗殺事件では、わずか10秒の間に五発の弾丸が発射されている。それは完全にチームプレイを意味している。現地に指揮官がいて、大統領のパレードの様子を逐一観察し、無線で全員に報告しながら、狙撃手との距離を正確に出しつつ、複数ポイントに潜んだ狙撃手に、狙え、撃て、と命じていたはずだ。それに、この時代には小型高性能の無線システムなど無いので、比較的大きなトランシーバーを持った人間たちが現場のフィルムに多く映っているはずだよ」

「まず、”アンブレラマン”、と呼ばれている不思議な人物の存在。当日のダラスは快晴だったのに、黒い傘をさして立っている怪しげな男の姿が映っているわ。
 目撃者によると、その男は大統領の車が近付いてきたときに、傘を開いて頭上に高く掲げて時計回りに回し、ちょうどその時にリムジンが少し速度を落として大統領が狙撃された。すると彼は傘をたたみ、何事もなかったように落ちついてその場を離れて行ったというの。
 さらにアンブレラマンの前方にも一人の男が居て、まるで何かの合図をするように、じっと手を挙げていた・・・」

「すぐ目の前で大統領が撃たれても平然としているのは、それが犯人側の人間だからだね。
いずれにしても、これだけのチームプレイを成功させるには、シークレットサービスや警察にも数多くの協力者が居なければ無理だろうな」

「シークレットサービスは普通、リムジンの後ろに彼らが護衛に立つ台があって、大統領が狙撃されないようにそこに立つわけだけれど、この時そこには誰も居ず、リムジンの横にも誰も居なかった。それどころか、当日大統領警護を命じられたシークレットサービスのメンバーが前夜遅くまで酒を飲んでいたことが発覚し、FBI長官が激怒したと言うわね」

「さて、真犯人は、だれだ──────────?」


                    ( Stay tuned, to the next episode !! )




  *次回、連載小説「龍の道」 第182回の掲載は、8月1日(月)の予定です

2016年07月01日

連載小説「龍の道」 第180回




第180回  SURVIVAL (12)



「イエス・キリストを磔刑(たくけい)にしたのは、ユダヤの律法学者たちだったのか!、ポンシオ・ピラトが十字架に架けた、と単純に考えていたよ」

「そのあたりは聖書をじっくり読まないと分からないわね。イエスはユダヤ教の律法学者であるパリサイ人(びと)を ”忌まわしいもの” とし、パリサイ人はイエスを ”律法を破る者” であると断じて敵対していた。
 イエスはこう言っている。 ”お前たちに災いあれ、律法学者たち、パリサイの人たちよ、お前たちは不幸だ、人々に天の国を閉ざしてしまうからだ、自分たちがそこに入ろうとしないばかりか、入ろうとする者の邪魔をして入らせないからだ” 」

「なるほど────────」

「パリサイ人(Pharisee)というのは古代ユダヤ教の一派で、ユダヤ戦争によるエルサレム神殿の崩壊後にはユダヤ教の主流派となって、律法の解釈こそが絶対とされる教義を創っていった。
 パリサイとは ”分離した者” という意味で、ユダヤ律法を守らぬ人たちから自分を分離するという思想から来ているのよ。現代のユダヤ教は殆どこのパリサイ派に由来しているので、パリサイは即ちユダヤの考え方そのものだと言えるわ。今ではそのパリサイ派という呼称は消えて、”ユダヤ教正統派” と呼ばれているけどね。
 そして、イエスとパリサイ人のそんな関係が嵩じて、ユダヤのシオン長老団や律法学者に巧みに煽動された群衆の声に負けてしまった総督のピラトが、イエスを磔(はりつけ)にする判決を下すに到ったのよ」

「ポンシオ・ピラトは、ローマ帝国がユダヤ州を統治していたときの総督だったね。かつてのカナンの地であるユダヤ州はすでにローマの属州だったから、ユダヤ教徒が勝手にイエスを逮捕したり刑罰を与えることが出来ず、総督のピラトに訴える口実を見つけて裁判へと仕向けた、というわけだね?」

「そうだと思えるわ。でもルカによる福音書によると、ピラト(Pontius Pilatus=ポンティウス・ピィラトゥス)は ”私はこの男に何の罪も見出せない” と語り、他の福音書にも、ピラトが群衆の要求に応えてやむを得ずイエスの処刑に踏み切ったという記述がある。ピラトは過越(すぎこし)の祭りにイエスに恩赦を与えて解放するつもりだったというのよ」

「ユダヤ教とイエスが説くものとの違いは大きいね。イエスの逸話の中には、姦通の罪を犯した女性を赦し、もう罪を犯さないようにしなさいと助言をしたばかりか、パリサイの処刑人の手から逃してやったというのがあった。ユダヤ律法で雁字搦めのパリサイ人は、罪を犯せばモーセの律法に従って石打ちの死刑だけれど、イエスは犯した罪よりも、その罪を悔い改めることの方が大切であるとした・・」

「よく知ってるわね。そのとおり、ユダヤ律法は『〜せねばならない』という項目が248、『〜してはならない』というのが365個もあって、その法を守らなければ天国には行けず、自分がそれを守るためなら他人を見捨てることも厭わないという考え方なのよ」

「他人を見捨てる、って?」

「例えばモーセの十戒には、『安息日を心に留めて聖く別けなさい。主の安息日には如何なる仕事もしてはならない』とあるけど、ユダヤ教では安息日に料理をするのも灯りを灯すことも労働とされてしまうので、これを守ると食事もできなくなってしまう。だから金持ちは貧乏人を雇って労働や料理をさせ、自分たちは何もせずに安息日を守った」

「・・な、なんという浅ましい屁理屈なんだ!」

「そんな具合に金持ちは財力で律法を守り、神殿に多くの供物を捧げることで正しい行いをする人、天国に行ける人とされ、貧乏人は生活のために律法に背かざるを得ないので、正しくない人、天国に行けない人とされた。反対にイエスは罪人でも家に招き、安息日であっても病人を癒やし続けた」

「そんなイエスを、パリサイ人が放っておくわけはないね───────」

「そういうこと。心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、隣人を自分のように愛することは、どのような捧げ物や生贄(いけにえ)よりも尊いと言って憚らず、人々の心を捉えていったイエス・キリストは、パリサイ人の律法をことごとく否定し、律法を破ったために、人々を惑わし神を冒涜したとして総督のピラトに訴えられ、終には処刑された、というワケね」

「しかし、元々イエスはユダヤ人だったと主張する人が居たり、”ユダヤ・キリスト教文化” という言葉まであるけれど・・?」

「イエス・キリストは金髪で碧眼のガリラヤの住人として、ヨセフとマリアから産まれた。イエスの言語はヘブライ語ではなく、ガリラヤ訛りのアラム語だった。ガリラヤに住んでいたユダヤ人は極くわずかな人数だったし、ガリラヤの人々はヘレニズム(ギリシャ文化)に好意的で、野蛮で粗野なユダヤ人に反発していたという事実があるわ。
 つまりイエスがユダヤ人であるなど、とんでもないでっち上げでしょうし、本来キリスト教の学者たちは誰よりもその事実をよく知っているはずよ」

「それじゃ、ことさらそう主張したがる人間というのは・・」

「もちろんユダヤ人たちでしょ。キリスト教と敵対を続けるよりは、イエスをユダヤ人にしてしまった方が手っ取り早いということよ。ところが、イエスはユダヤの神殿に行って、彼らが黄金の仔牛像の前で、今で言う証券取引のようなことをやっているのを見て、その祭壇をひっくり返したでしょ。さらには律法学者とパリサイ人に対して説教まで行った。同じユダヤ人なら決してそんな事をするワケがないわ。
 彼らはそんなイエスの勇気と度胸に心底驚いたけれど、シオンの長老団はもはやイエスの存在に耐えられず、最重要危険人物として、密かに計略を巡らし、ピラト総督に訴え出て、群集心理を利用してイエスを処刑させようと企んだ、と言うのが真相よ」

「そのやり方は、リンカーンの暗殺とオーバーラップするね。自分の手は汚さないが、相手はきちんと抹殺し、その後には自分たちの都合の良い世界が残る」

「同じ手口ね。ヒトラーを世界一の極悪人に仕立て上げたのも、ケネディを暗殺したのも、すべて同じやり方、同じ考え方よ」

「ケネディ暗殺────────?」

「ああ、まだ話ををしていなかったわね。ケネディ大統領は、リンカーン暗殺から約百年後の、1963年11月22日の金曜日、現地時間(CST)12時30分に、テキサス州ダラスでオープンカーでパレード中に暗殺されている」

「事件を特集した報道フィルムを観たけれど、発射された銃弾の数、飛んで来た方向、犯人と言われるオズワルドが逮捕されて2日後に射殺され、その射殺犯も不自然死を遂げた。
 政府の公式見解の報告書も矛盾だらけで、事件後から三年の間に真相を追うジャーナリストや目撃者、証言者など20人もの人たちが死亡したという。六人が射殺、三人が交通事故、二人が自殺、一人は喉を搔ききられ、もう一人は首を折られて死亡している。あまりにも疑惑が多すぎるね」

「よく知ってるわね。ついでに言うと、暗殺後1967年2月までにこれらの目撃者が死亡する確率は1兆の10万倍分の1であると、英国のロンドンサンデータイムス紙が結論づけた。
 また、ジム・マース著のクロスファイアーという本には、ケネディ暗殺以後に死亡した、明らかに事件に関係のある人々のリストがあり、それによると、1963年11月の事件直後から1976年7月までの間に、計77人の関係者が死亡しているというわ。
 1977年に米国下院がこの事件を調査したけど、その年にも15人の関係者が他殺や自殺、事故死などで死亡しているのよ」

「そのケネディ暗殺も、リンカーンと関係があるのかい?」

「大いに関係があるわ。それを解けば病めるアメリカの根元が理解できるかも」

「ユダヤの話ばかりで食傷気味だから、ちょっとケネディの話をしてよ」

「ケネディ暗殺の真相ね──────それについては本当に様々なことが言われているけれど、誰もそれを ”金融の視点” から観ていないのが特徴よね」

「と言うと、ケネディもリンカーンと同じことをやった、ってコト?」

「ちょっと前に話した、リンカーンが政府の通貨を発給したことに対して、イギリスのタイムズが書いたことを覚えているかしら?」

「覚えてるよ─────新しい紙幣を発行することで、アメリカ政府はコストを掛けずに通貨を供給でき、その結果アメリカは債務を完済して債務の無い政府となる。アメリカは商業活動に必要なすべての通貨を持つことになり、史上類の無い繁栄をし、すべての国の人材や富がアメリカに移動する。アメリカは打倒されるべきだ。そうしなければやがてアメリカは地上のすべての国家を破壊するだろう・・・そんな事だったかな」

「先ずはその辺りから説明するわ。タイムズが『アメリカ政府は打倒されるべきだ』と書いたことはとても重要なポイント。リンカーンが政府の紙幣を発行したことによって、国際金融資本家が作り上げてきたマネーシステムが崩壊してしまうわけだから、これは彼らにとっては一大事だった」

「ふむ。通貨発給権を握っていさえすれば、いくらでも市場を操作できるワケだど、政府が紙幣を発給するシステムになると、所詮は彼らは民間銀行なので、政府の紙幣を預金して貰って、それを元に貸し出して利子を取ることしかできない。それでは通常の銀行業務と何も変わりがないので、自分たちが国家の ”中央銀行” を手中にしている場合とは儲けのケタが幾つも違ってくる、というワケだな」

「そのとおりよ。そしてリンカーンに限らず、アメリカの歴代大統領で暗殺の対象となった人たちの多くは、中央銀行設立に反対をした人や、中央銀行の機能を無力化する政策を採った人たちだった。第16代エイブラハム・リンカーン、第20代ジェームス・ガーフィールド、第25代ウィリアム・マッキンリー、第35代ジョン・ケネディの四人は暗殺されたし、第7代アンドリュー・ジャクソン、第40代ロナルド・レーガンの二人は暗殺未遂が起こった」

「ケネディは、いったい何をしたんだろう。当時はすでに連邦準備銀行制度があったはずだけれど」

「そうそう、FRB連邦準備銀行の話も、まだ中途だったわね。モルガンが所有するジキル島クラブでの秘密会議が開かれ、FRB設立が討議されて・・・」

「そこまでは聞いたよ。国家の中央銀行を作るのに、なぜ秘密会議が必要なのか、という疑問が残るよね」

「それは国家のための中央銀行ではなかったということよね。リンカーンを暗殺して法定通貨を粉砕し、何度も大恐慌を起こしてアメリカの経済支配を強めていった国際金融資本家たちは、彼らの最終目的である ”通貨発給権” を手中に収めるための最後の仕上げとして、いよいよ中央銀行設立を目前としていたのよ」

「たしか、ドイツ系ユダヤ人でクーン・ローブ商会の経営者、ポール・ウォーバーグがその秘密会議の中心的存在だったと・・」

「そう、そしてウォーバーグの背後にはロスチャイルドが居る。つまりこの会議は、揃いも揃って、ロスチャイルド、モルガン、ロックフェラーのユダヤ国際金融家によって為されたというわけね」

「それで、この秘密会合で決定されたことは?」

「それが FRS(Federal Reserve System=連邦準備制度)という、誰が耳にしても何のことだかピンと来ない、不思議な名前のシステムについてよ」

「確かに、何のことだかサッパリ分からないな─────どうしてそんな名前を?」

「それが彼らの狙いね。”通貨発給権を奪う” という自分たちの真の目的を隠すために、一見ワケの分からない暗号のような名前を付け、中央銀行を連想させるような呼び方を避けた。そして彼らがまとめた ”連邦準備法案” は、いよいよ議会に提出されることになった」

「如何わしいものなら、議会が承知しなければ良いだけの話じゃないの?、アメリカは民主主義国家なんだから」

「ところが、その法案を議会で可決させるために様々な裏工作が行われた挙げ句、1913年のクリスマスイブの前日である12月23日に、ほとんどの議員たちがクリスマス休暇で不在というドサクサを狙って、ロクに審議されることもなく可決され、時の大統領ウィルソンが署名をして、あっけなく連邦準備法案が成立してしまった。こうして、アメリカ政府がただの一株も所有できない仕組みの、民間の中央銀行が出来上がったというワケ」

「それはちょっと、ほとんど詐欺みたいなものだな」

「合衆国憲法では、通貨発行は議会の専権事項とされているのに、それを民間が保有する中央銀行が行うのは問題よね。しかも株主は民間銀行のみで、政府は一株も所有できないの」

「それは完全に憲法違反だな」

「それに、FRB議長の選任は、大統領が上院の同意を得て任命する事になっているけれど、大統領も議会も、事実上FRBの理事会が推薦した人物を承認するだけ。実質的な人事権は政府にも議会にも無い、という不思議なシステムになっている」

「邪魔をされないように、システムが工夫されているんだね」

「米ドルを発行したFRBはそれを財務省に貸し付ける。そしてFRBは貸し付けた額と同じ米国債を財務省から受け取る。すると黙っていても国債の利子が自動的にFRBの株主に支払われる。その額はアメリカ国民から得た税収の20%にも相当するのよ。さらに、FRBは民間の企業でありながら法人税は免除されており、国債の利子は100%彼らのものになる。
 国債の金利が上がれば彼らは笑いが止まらず、アメリカ政府と国民は何も知らないまま涙を流すことになる」


 実際に、1913年に連邦準備制度が創設された時、それを ”信用詐欺” だと指摘したロンドンの有名な銀行家がいる。彼はこのように語っている。
 『連邦準備制度を理解する少数の人間たちは、利益を得ようとするか、その恩恵に依存しているため、彼らから反対の声は上がらないだろう。しかし大衆のはとんどは、この制度自体を理解する能力がないので、この制度が自分たちの利益に反するとは疑いもせず、誰も文句も言わずに、いつの間にか重荷を背負うことになる』

 また、アメリカ人の発明家であるトーマス・エジソンも、こう語っている。
 『わが国が、債券は発行できるが通貨は発行できないというのは馬鹿げている。債券も通貨も、支払いをするという約束なので、この点では同じだろう。しかし、一方は高利貸しに有利なもので、もう一方は人々を支えるものなのだ』─────

 大西洋単独無着陸飛行で名高いチャールズ・リンドバーグ下院議員も、連邦準備法が可決された際に次のように述べている。
 『連邦準備法は世界で最も巨大な信用を規定するものだ。ウィルソン大統領がこの法案にサインすれば金融権力という見えない政府が合法化されることになる。この銀行制度と通貨に関する法案によって、世紀の重大犯罪が準備されることになるのだ』

 そして、そのウィルソン大統領は後年、彼がその人生を終える間際になったときに、
 『私は一番不幸な人間だ。知らず知らずのうちに自分の国を破壊してしまった』
 と、その法案にサインをしたことを後悔する言葉を残している。



「ちょっと具体的にそのシステムを説明してくれないかな?」

「いいわよ。例えば、アメリカ政府に1億ドルが必要になったとするわね」

「ふむふむ・・・」

「すると先ず始めに、政府はそれをFRBに伝える。FRBはそれを受けて証明書類を作り、政府の口座に1億ドルの数字を打ち込む」

「それで?」

「That's all. それでオシマイ!、これで1億ドルの通貨が発行されたことになる。実際的に紙幣が必要になったら、財務省が印刷して紙幣を流通させるワケ」

「うーん、なんだかキツネに抓まれたような・・・」

「これは形式的には政府が1億ドルの債券を発行して、FRBがそれを引き受けたというカタチになっている。さっきも言ったようにこれは借金なので、政府がFRBにその利子を払う必要があるワケ」

「─────ってコトは、政府がドルを発行するたびにFRBの株主、国際金融家にその利子が転がり込むってことじゃないか」

「そのとおりね」

「でも、そこで支払われる利子は、アメリカ国民の税金から出ている・・」

「そういうこと。米ドルを発行しているのは無国籍の国際銀行家、インターナショナル・バンカーと呼ばれる人間たち。彼らの胸三寸でアメリカ経済をインフレにする事も出来れば、ドルの供給を減らして大恐慌にすることも出来るのよ」

「そんなバカな話が・・・たかが一介の民間企業に、国家経済を牛耳る権限があるなんて、全くもっておかしな話じゃないか、アメリカ国民は無国籍の国際銀行家に、自分たちの生殺与奪の権限を与えてしまったと言うことだ!!」

「しかもそれは、1913年から何も変わらず、未だにずっと続いている」

「これはある意味、現代の ”錬金術” だな」

「ウマいことを言うわね。そう、彼らが知恵を出し合って考えに考えた上、現代版の完全な錬金術を作り上げたのよ。書類を作って数字をコンピュータに打ち込むだけで巨万の富が転がり込んでくる。まさに濡れ手に粟、こんなボロい商売はないわね。そして最もその被害を受けているのはアメリカの一般国民であるという哀しい事実が・・」

「ちょ、ちょっと待てよ・・そうだ、他人事じゃないぞ、日本はどうなっているんだ?」

「日本は政府がニチギン(日本銀行)に55%を出資しているので、アメリカのような100%民間出資の中央銀行とは、少しシステムが違っているわね」

「ああ、よかった────────」

「でも、あまりホッとしても居られないわよ」

「な、なんだ、脅かすなよ・・」

「彼ら国際銀行家たちは、すでに日本に対しても強力にグローバル化を求め始めているし、その為にありとあらゆる方法で様々な圧力を掛けようとしているわ。アメリカ人よりも勤勉で繊細な日本人に、その錬金術を適用しない手はない、というのはユダヤじゃなくても思いつくコトよね」

「具体的には、どんなことを始めているんだろうか・・何かその兆候は?」

「すでに日本では、日銀の独立性や完全自立を主張する人たちが存在している。二度と戦争を起こさないようにする為だとか何とか、尤もらしい理由を付けて、政府と完全に分離した日銀の独立性を確保するべきだ、と言っているのよ」

「それは逆だろう、無国籍の、グローバリズムを推進するような国際銀行家が日銀を牛耳るようになったら、イザ敵国が侵略を始めたら、その途端に戦費を自国で調達できない、ってことになってしまう!、リンカーンも政府自身が紙幣を刷ることで南北戦争を乗り切ることができたんだから」

「日本が侵略国にさえ立ち向かえなくなること、それが狙いでしょうね。日本人はもう少しそういう事に敏感になるべきね。中央銀行の独立性を確保するには日銀を完全に ”民営化” するしかない、というような意見が出てきたら要注意・・・そもそも、日銀を独立させるのに民営化する必要などなく、政府が100%出資して財務省から独立した国営の中央銀行を作れば良いだけのことでしょ。ナンでもカンでも民営化にしましょう、と言う人たちは怪しいと思わないとイケないわね!!」


 ここでヘレンが語るアメリカ連邦準備銀行設立の経緯は全て事実に基づいているが、日本にも深く関係するアメリカ中央銀行カルテルの欺瞞については、ユースタス・マリンズ著の『民間が所有する中央銀行(秀麗社/1995年刊)』に詳しい。アメリカ最大のタブーで、今なお秘密にされ続けている「連邦準備制度」の内幕に挑んだ労作で、日本語で読める貴重な本である。
 因みに、本書の出版に際しては米国内の19の出版社が何かを怖れるように嫌がって断り、ドイツでは訳本が駐留米軍によって焚書にされた。焚書を命じたのはハーバード大学の総長にもなった科学者で、敗戦国ドイツの高等弁務官であったジェームス・コナントであるが、彼はトルーマンが日本への原爆使用を決めかねていた際にそれを執拗に勧め、遂にはそれを説得し得た人間としてもよく知られている。
 著者のマリンズは国際金融資本家の研究に40年の歳月を費やし、多方面からの迫害と非難中傷を浴びつつ、32年間にわたってFBIの監視下に置かれ続けた。連邦議会図書館を解雇された唯一の職員であり、1945年以降の西欧で著書が焚書処分にされた唯一の研究者としても知られている。



「話を戻すけど、ケネディは、なぜ暗殺されたんだろうか─────?」

「ケネディは、”財務省証券” という、政府の紙幣を新たに発行したのよ」

「リンカーンのグリーンバックスみたいに?」

「そうね。ケネディは、FRB連邦準備銀行が民間の企業でありながらアメリカ経済を手中にしていることを違法行為であると懸念し、恐らくはそれを修正するために財務省証券という紙幣の発行に踏み切ったのだと思われるわ」

「実際にケネディは、彼らを名指しで、何かを言ったことがあるのかい?」

「名指しではないけれど、秘密結社(Secret societies)がマスコミや政治をコントロールしている脅威について演説をしたことがあるわ。
 ”秘密主義” というものが自由で開かれた社会にとって非常に不快なもので、アメリカは歴史的にも、秘密結社の ”秘密の誓い” や ”秘密の議事録” に反対してきた民族だと言って、そのようなものに対して断固として立ち向かう姿勢を示したの。
 ケネディは、FRBを私有する国際銀行家たちが、ユダヤの秘密結社にも深く係わる人間たちだということをよく知っていたはずだから、それを排除するために政府紙幣を発行したことは間違いないでしょうね」

「財務省証券、というのは?」

「1963年6月4日付、大統領行政命令/第11110号。『財務省に影響のある一定の機能の履行に関する修正』というのがそれに当たるわね。政府紙幣はFRB発行の銀行券とほぼ同じデザインで、FRBのマークがなく、その代わりに United States Note(政府発行券)と記されていた」

「政府紙幣の発行がFRBを無視した行為だという事は分かるけど、それがケネディ大統領の暗殺につながる根拠というのは?」

「簡単なことよ。ケネディ暗殺後の動きを見れば分かるわ。ケネディの暗殺後、次の大統領に就任したジョンソンが真っ先に手を付けた事は、ケネディが発行した総額42億ドルの紙幣の回収だった。アメリカの流通をすべて止めて、全てに優先してその紙幣の回収を急いだ。ジョンソンはケネディの遺志を受け継ぐどころか、何の躊躇もなくそれを行ったの」

「なるほどなぁ・・どんな事件にも因果関係がある。そこで誰が得をするか、損をするか、それを追って行けば、バックに誰が居たか、何の目的でそれが行われたかが自ずと明らかになってくる、というわけか─────」

「そして政府紙幣を発行したその同じ年、わずか半年後に、ケネディは暗殺された」



                    ( Stay tuned, to the next episode !! )






  *次回、連載小説「龍の道」 第181回の掲載は、7月15日(金)の予定です



 北朝鮮の拉致を許すな!


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